胎盤の発生
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/20 10:07 UTC 版)
シンシチン-1を介した栄養膜(英語版)(栄養芽層、trophoblast)の融合は、正常な胎盤の発生に必要不可欠である。初期の胎盤関門は、細胞性栄養膜(英語版)(細胞栄養芽層、cytotrophoblast)と合胞体性栄養膜(合胞栄養芽層、syncytiotrophoblast)と呼ばれる2つの胎盤特異的細胞層によって構成されている。細胞性栄養膜細胞は継続的に分裂を行う未分化細胞であり、合胞体性栄養膜細胞は完全に分化した、分裂を行わない融合細胞からなる合胞体である。細胞性栄養膜細胞と合胞体性栄養膜細胞の表面でのシンシチン-1の発現は細胞融合を媒介する。合胞体性栄養膜は発生中の胎児と母体の血液供給との接触面であり、下層の基底膜、胎児の内皮とともに胎盤関門を形成している。胎盤関門は栄養素と老廃物の交換を可能にする一方で、母体の免疫細胞やその他の細胞、粒子や分子が胎児の血液循環へ通過するのを阻止している。細胞性栄養膜細胞は合胞体性栄養膜細胞へと融合することにより、細胞老化を強制される。そのため、合胞体性栄養膜の成長と維持には細胞性栄養膜細胞の増殖が必要である。細胞性栄養膜細胞でのシンシチン-1の発現はG1/S期の移行と増殖を促進し、細胞性栄養膜細胞のプールの継続的な補充を保証している。「シンシチン」という名称は、多核化した原形質である合胞体(シンシチウム、syncytium)の形成に関与していることに由来する。胎盤で発現する内在性レトロウイルス(ERV)エンベロープタンパク質には、他のERVファミリー(HERV-FRD)のシンシチン-2がある。
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