羊飼いの礼拝 (ムリーリョ、サンクトペテルブルク)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/07 02:25 UTC 版)
| ロシア語: Поклонение пастухов 英語: Adoration of the Shepherds |
|
| 作者 | バルトロメ・エステバン・ムリーリョ |
|---|---|
| 製作年 | 1646-1650年ごろ |
| 種類 | キャンバス上に油彩 |
| 寸法 | 197 cm × 147 cm (78 in × 58 in) |
| 所蔵 | エルミタージュ美術館、サンクトペテルブルク |
『羊飼いの礼拝』(ひつじかいのれいはい、露: Поклонение пастухов, 英: Adoration of the Shepherds)は、スペインのバロック絵画の巨匠バルトロメ・エステバン・ムリーリョが1646-1650年ごろ、キャンバス上に油彩で制作した絵画である。ホートン・ホールのロバート・ウォルポールのコレクションにあったが、1779年に購入されて以来、サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館に所蔵されている[1][2]。なお、マドリードのプラド美術館[3]、ロンドンのウォレス・コレクション[4]にもムリーリョの同主題作が所蔵されている。
主題
『新約聖書』中の「ルカによる福音書」 (2章8-21) によれば、イエス・キリストが生まれた直後、ベツレヘムの地方で羊飼いたちが夜間に野宿をしながら羊の番をしていたところ、主の御使いである天使が現れ、彼らにイエス・キリストの誕生を伝えた[5]。光と天使の導きによりイエスのもとにやってきた[6]羊飼いたちはやがて、言われたとおり「幼子が布にくるまって飼葉桶の中に寝かしてあるのを」見たという[5]。
ムリーリョはこの主題を描くにあたり、画家にして理論家であったフランシスコ・パチェーコの『絵画術』 (初版1649年) を参照した[1]。この書には、聖母マリアが真夜中に家畜小屋で使われていた洞窟でイエスを出産する様子、天使たちがこの出来事を羊飼いに伝え、羊飼いたちがイエスを礼拝しにやってくる様子が記述されている[1]。
作品
パチェーコの記述に従い、本作の場面は夜に設定されており、飼い葉桶の中のイエスの周りにマリアと聖ヨセフ、3人の羊飼い、老女 (「ヤコブ原福音書」にはヨセフが産婆をマリアに遣わした、という記述がある) がいる。画面左には牡牛とロバが見え、前景には羊飼いたちが捧げものとして連れてきた羊がいる[1]。光り輝くキリストの体が与える印象は強烈であるが、「ヤコブ原福音書」には、「一筋の強い光が洞窟の中に現れ、私たちの眼はそれに耐えることができないほどだった。すると光は少しずつ引いて行き、幼児キリストの姿が見えるほどまでになった」 (第19章2節) とあり、その記述が本作の描写を触発したのかもしれない[1]。
この絵画には、光と影の鮮明なコントラストが見て取れる。それは、ムリーリョの生地セビーリャで有名であったホセ・デ・リベーラから多大な影響を受けていた初期のムリーリョ作品の特徴である。リベーラからの影響は光の表現のみにとどまらず、構図全体のモニュメンタルな特質にまで及んでいる[1]。
ギャラリー
脚注
- ^ a b c d e f 『大エルミタージュ美術館展 オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち』、2017年、201頁。
- ^ “Adoration of the Shepherds”. エルミタージュ美術館公式サイト (英語). 2025年11月5日閲覧。
- ^ “Adoración de los pastores”. プラド美術館公式サイト (スペイン語の英訳). 2025年9月3日閲覧。
- ^ “Adoration of the Shepherds”. ウォレス・コレクション公式サイト (英語). 2025年9月4日閲覧。
- ^ a b 辻邦生・高階秀爾・木村三郎、1984年、89頁。
- ^ 大島力 2013年、110-111頁。
参考文献
- 『大エルミタージュ美術館展 オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち』、エルミタージュ美術館、日本テレビ放送網、読売新聞社、BS日テレ、森アーツセンター、2017年刊行
- 辻邦生・高階秀爾・木村三郎『カンヴァス世界の大画家 14 プッサン』、中央公論社、1984年刊行 ISBN 4-12-401904-1
- 岡田温司監修『「聖書」と「神話」の象徴図鑑』、ナツメ社、2011年刊行 ISBN 978-4-8163-5133-4
外部リンク
- 羊飼いの礼拝 (ムリーリョ、サンクトペテルブルク)のページへのリンク