ヨセフとポティファルの妻_(ムリーリョ)とは？わかりやすく解説

『ヨセフとポティファルの妻』
	ドイツ語: Joseph und die Frau des Potiphar; 英語: Joseph and Potiphar's Wife
作者	バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
製作年	1640–1645年
種類	キャンバス上に油彩
寸法	197 cm × 254 cm (78 in × 100 in)
所蔵	カッセル古典絵画館（英語版）、カッセル

『ヨセフとポティファルの妻』（ヨセフとポティファルのつま、独: Joseph und die Frau des Potiphar、英: Joseph and Potiphar's Wife）は、17世紀スペイン・バロック期の巨匠バルトロメ・エステバン・ムリーリョが1640–1645年にキャンバス上に油彩で制作した絵画である。1775年以前にフリードリヒ2世 (ヘッセン＝カッセル方伯) に購入され^[1]、現在、カッセル古典絵画館（英語版）に所蔵されている^[1]^[2]^[3]。なお、ムリーリョが1660年代に制作した別のヴァージョン^[1]^[3]が個人蔵となっている。

作品

『旧約聖書』中の「創世記」 (13章1-23) によれば、嫉妬深い兄弟たちに売られたヨセフがファラオの侍従長ポティファルに買われた物語が叙述されている。ポティファルに仕えたヨセフ (ヤコブの子) はポティファルの信頼を得るも、彼の妻はヨセフが気に入り、彼を誘惑しようと試みた^[2]^[3]。

本作に描かれているのは、ヨセフがポティファルの妻に誘惑されて拒む場面である^[1]。ムリーリョの描写は演劇の場面を想起させ、2人は暗い背景の中、照明を浴びているかのようである^[2]。ポティファルの妻は豪華に装飾されたベッドからから半裸で跳び上がり、左の方へ逃げ出そうとするヨセフを止めようとしている。彼女は、前に伸ばした腕でヨセフの黄色い衣服を掴んでいる^[1]。ヨセフは逃げのびるが、彼の衣服を手中にした彼女は夫のポティファルにヨセフに誘惑されたと告発し、怒ったポティファルはヨセフを投獄してしまう^[2]。

スペインの絵画で、この主題は稀にしか描かれなかった^[1]。しかし、ムリーリョの時代のセビーリャは例外であったようで、セビーリャで大きな美術コレクションを所有していたフランドルの商人たちは、このエロチックな主題に特別な関心を抱いていた。ムリーリョの最も重要な庇護者の1人であったニコラス・オマスール (Nicolás Omazur) は、本作の複製を所有していた。また、目録によれば、フアン・バウティスタ・クラルブー (Juan Bautista Clarebout) は、ムリーリョのオリジナル作品を所有していた。おそらく、そのオリジナル作品とは1660年代に制作された本作の別ヴァージョンで、2004年にサザビーズの競売で売却されたものである^[1]。この別ヴァージョンに登場するヨセフは、本作と同じく若く美しく描かれている。その一方で、ポティファルの妻は三段腹になりそうな熟女として表現されている^[3]。

脚注

^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g “Joseph und die Frau des Potiphar”. アルテ・マイスター絵画館公式サイト (ドイツ語の英訳). 2025年8月8日閲覧。
^ ^a ^b ^c ^d “Joseph and Potiphar's Wife”. Web Gallery of Artサイト (英語). 2025年8月8日閲覧。
^ ^a ^b ^c ^d 大島力　2013年、48-49頁。

参考文献

大島力『名画で読み解く「聖書」』、世界文化社、2013年刊行　ISBN 978-4-418-13223-2

外部リンク

[AK-1] ^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g “Joseph und die Frau des Potiphar”. アルテ・マイスター絵画館公式サイト (ドイツ語の英訳). 2025年8月8日閲覧。

[WG-2] “Joseph and Potiphar's Wife”. Web Gallery of Artサイト (英語). 2025年8月8日閲覧。

[OT-3] 大島力　2013年、48-49頁。

[1]

[2]

[3]

表話編歴バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
宗教画	『ヨセフとポティファルの妻』 (1640-1645年) 『天使たちの厨房』（1646年）『エジプトへの逃避』（1647-1650年頃）『小鳥のいる聖家族』（1650年頃）『ロザリオの聖母』（1650-1655年頃）『聖母の聖ベルナルドゥスへの顕現』（1655年頃）『善き羊飼い』（1660年頃）『受胎告知』（1660年頃）『リベカとエリエゼル』（1660年頃）『聖母の誕生』（1661年）『エル・エスコリアルの無原罪の御宿り』（1660-1665年）『幼い洗礼者聖ヨハネと子羊』（1660-1665年）『古代ローマ貴族の夢』（1662-1665年頃）『エジプトへの逃避途上の休息』（1665年頃）『聖ペテロの解放』（1665-1667年）『ヤコブを祝福するイサク』（1665-1670年）『放蕩息子の帰還』（1667-1670年頃）『ベトザタの池で足萎えを治すキリスト』（1667-1670年頃）『貝殻の子供たち』（1670年頃）『聖母子』（1670-1672年頃）『病人を治療するハンガリーの聖エリザベト』（1672年）『パンと魚の奇蹟』（1669-1674年頃）『アブラハムと三人の天使』（1670-1674年頃）『アランフエスの無原罪の御宿り』（1675年頃）『ベネラブレスの無原罪の御宿り』（1678年頃）『聖パウロの改宗』（1675-1680年頃）『天上と地上の三位一体』（1675-1682年）『聖アンデレの殉教』（1675-1682年）
風俗画	『乞食の少年』（1645-1650年頃）『ブドウとメロンを食べる子供たち』（1645-1650年）『犬を連れた少年』（1655-1660年）『窓辺の二人の女性』（1655-1660年頃）『小さな果物売り』（1670-1675年）『窓枠に身を乗り出した農民の少年』（1675-1680年）『パイを食べる子供たち』（1675-1682年）
肖像画	『自画像』（1670年頃）『ニコラス・オマスールの肖像』（1672年）

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