受胎告知_(ムリーリョ)とは？わかりやすく解説

『受胎告知』
	ロシア語: Благовещение; 英語: Annunciation
作者	バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
製作年	1660年ごろ
種類	キャンバス上に油彩
寸法	142 cm × 107.5 cm (56 in × 42.3 in)
所蔵	エルミタージュ美術館、サンクトペテルブルク

『受胎告知』
	スペイン語: La Anunciación; 英語: Annunciation
作者	バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
製作年	1660年ごろ
種類	キャンバス上に油彩
寸法	125 cm × 103 cm (49 in × 41 in)
所蔵	プラド美術館、マドリード

『受胎告知』（じゅたいこくち、西: La Anunciación, 露: Благовещение, 英: Annunciation）は、スペインのバロック絵画の巨匠バルトロメ・エステバン・ムリーリョが1660年ごろ、キャンバス上に油彩で制作した絵画である。大きさはやや異なるものの、同じ構図の2点のヴァージョンがマドリードのプラド美術館^[1]とサンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館^[2]^[3]に所蔵されている。プラド美術館の作品はフェリペ5世の2番目の王妃エリザベッタ・ファルネーゼが1729年に購入したもので、スペインの王室コレクションに由来する^[1]。一方、エルミタージュ美術館の作品は、1814年にアムステルダムのW・コースフェルト (W. Coesvelt) から購入されたものである^[3]。

作品

『新約聖書』中の「ルカによる福音書」 (1章26-38) によれば^[2]^[4]、ある日、大天使ガブリエルが聖母マリアのもとに現れ、「おめでとう、恵まれた方。あなたは神の恵みにより、男の子を産みます。その子をイエスと名付けなさい」と彼女が神の子を授かることを告げる^[4]。マリアは驚きながらもイエス・キリストの母としての役割を受け入れ、「わたしは主のはしためです。お言葉どおりこの身に成りますように」と答える^[4]。

ムリーリョなど17世紀セビーリャの画家たちの図像は、フランシスコ・パチェーコの著作『絵画芸術』 (1649年初版) にある詳細な指示にもとづいていた^[2]。同書には神学の多岐にわたるテキストを集めた資料編がつけられていたが、受胎告知に関して、パチェーコは以下のごとく記している。

日課を終えたある夕べ、マリアが縫い物を折りたたみ、聖書を読もうとそれに向かったときに、天上から大天使ガブリエルがマリアの下に降りてきた。天使とのしばしのやりとりの後、マリアは神の子を産むことを受け入れた^[2]。

ムリーリョの『受胎告知』には、そのほかにもパチェーコが特筆した細部が描かれている。1冊の本と純潔の象徴としてのユリの花を挿した花瓶のある机、画面中央の、周りに大勢の天使を伴い、光を放射する白いハトの姿をした聖霊である^[2]。本作の前景は写実的に表現されており、光と影の描写によってボリューム感が生み出され、布や物の手触りが確かめられそうなほどである。対照的に光景は、あたかも雲の中から現れ出た幻視のように見える^[2]。

この絵画が当時のセビーリャの人々にどのような意味を持っていたのかを理解するためには、セビーリャが1649年の疫病流行以降、人口が減少し、経済的に衰退した一大危機を経験していたことを想起する必要がある。この甘美に見える場面は幸福な状況を反映したものではなく、祈りによる救済と慰安への希求を表現したものなのである^[1]。

脚注

^ ^a ^b ^c “Rebeca y Eliezer”. プラド美術館公式サイト (スペイン語の英訳). 2025年7月30日閲覧。
^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f 『大エルミタージュ美術館展　オールドマスター　西洋絵画の巨匠たち』、2017年、201頁。
^ ^a ^b “Annunciation”. エルミタージュ美術館公式サイト (英語). 2025年7月30日閲覧。
^ ^a ^b ^c 大島力　2013年、104頁。

参考文献

『大エルミタージュ美術館展オールドマスター西洋絵画の巨匠たち』、エルミタージュ美術館、日本テレビ放送網、読売新聞社、BS日テレ、森アーツセンター、2017年刊行
大島力『名画で読み解く「聖書」』、世界文化社、2013年刊行 ISBN 978-4-418-13223-2

外部リンク

プラド美術館公式サイト、ムリーリョ『受胎告知』（スペイン語）
エルミタージュ美術館公式サイト、ムリーリョ『受胎告知』（英語）

[MP-1] “Rebeca y Eliezer”. プラド美術館公式サイト (スペイン語の英訳). 2025年7月30日閲覧。

[DE-2] ^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f 『大エルミタージュ美術館展　オールドマスター　西洋絵画の巨匠たち』、2017年、201頁。

[ReferenceHM-3] “Annunciation”. エルミタージュ美術館公式サイト (英語). 2025年7月30日閲覧。

[OT-4] 大島力　2013年、104頁。

[1]

[2]

[3]

[4]

表話編歴バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
宗教画	『ヨセフとポティファルの妻』 (1640-1645年) 『天使たちの厨房』（1646年）『エジプトへの逃避』（1647-1650年頃）『羊飼いの礼拝 (プラド美術館)』 (1650年頃）『小鳥のいる聖家族』（1650年頃）『ロザリオの聖母』（1650-1655年頃）『聖母の聖ベルナルドゥスへの顕現』（1655年頃）『善き羊飼い』（1660年頃）『受胎告知』（1660年頃）『リベカとエリエゼル』（1660年頃）『聖母の誕生』（1661年）『エル・エスコリアルの無原罪の御宿り』（1660-1665年）『幼い洗礼者聖ヨハネと子羊』（1660-1665年）『6人の人物の前に現れる無原罪の聖母』（1662-1665年）『古代ローマ貴族の夢』（1662-1665年頃）『エジプトへの逃避途上の休息』（1665年頃）『聖ペテロの解放』（1665-1667年）『羊飼いの礼拝 (ウォレス・コレクション)』（1668年頃）『十字架上のキリストを抱きしめる聖フランチェスコ』（1668-1669年）『ヤコブを祝福するイサク』（1665-1670年）『聖家族』（1665-1670年）『放蕩息子の帰還』（1667-1670年頃）『ベトザタの池で足萎えを治すキリスト』（1667-1670年頃）『貝殻の子供たち』（1670年頃）『聖母子 (メトロポリタン美術館)』（1670-1672年頃）『病人を治療するハンガリーの聖エリザベト』（1672年）『パンと魚の奇蹟』（1669-1674年頃）『アブラハムと三人の天使』（1670-1674年頃）『アランフエスの無原罪の御宿り』（1675年頃）『ベネラブレスの無原罪の御宿り』（1678年頃）『聖母子 (アルテ・マイスター絵画館)』（1670-1680年頃）『聖パウロの改宗』（1675-1680年頃）『天上と地上の三位一体』（1675-1682年）『聖アンデレの殉教』（1675-1682年）
風俗画	『乞食の少年』（1645-1650年頃）『ブドウとメロンを食べる子供たち』（1645-1650年）『犬を連れた少年』（1655-1660年）『窓辺の二人の女性』（1655-1660年頃）『花売り娘』（1665-1670年）『小さな果物売り』（1670-1675年）『窓枠に身を乗り出した農民の少年』（1675-1680年）『パイを食べる子供たち』（1675-1682年）
肖像画	『自画像』（1670年頃）『ニコラス・オマスールの肖像』（1672年）

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