糞生菌の遷移
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/20 04:30 UTC 版)
動物の糞は、様々な菌群が観察できることが(菌類学徒の間では)よく知られている。糞以外からも出現する菌もあれば、ほとんど糞からのみ出現するものもある。その出現の順番には、ほぼ一定の型があり、糞生菌の遷移と言われる。 通常、最初に出現するのは、接合菌門のケカビ類である。ケカビ、ミズタマカビなどは特に頻繁に出現する。後者は、ほぼ糞からのみ出現する種である。接合菌類の出現は2〜3日目から、1週間くらい続く。ほぼ同じか、少し遅れて小型の不完全菌類が出現する。不完全菌はかなり遅い時期まで出続ける。 1週間目くらいから、1mm以下程度の小型の子実体を作る子嚢菌門の菌が姿を現す。さらに、2〜3週間目くらいにヒトヨタケなど担子菌門(キノコ類)が出現すると、これ以後は次第に糞生菌から通常の土壌菌の群集へと移ってゆく。 この遷移の原因は、以下のようなものだと考えられている。 排出されたばかりの糞には、タンパク質・脂質・糖類などの分解しやすい栄養が多いため、成長が早いがあまり高度の分解能力を持たない接合菌がそれらを摂取して素早く成長し、それらを食べ尽くすと姿を消す。他方、子嚢菌・担子菌はセルロース分解など、高度の分解能力があるので、その後も成長が続く。 接合菌・不完全菌は菌糸の成長後すぐに胞子形成を始めるが、子嚢菌・担子菌は子実体を形成するので、ある程度菌糸体が成長しなければ子実体が作れない。つまり、胞子形成にかかる時間の差が、糞の上に出現する時間の差として目に触れるのだと言うのである。
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