現像方法による分類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 03:48 UTC 版)
浸透探傷試験はきずを観察するために、きず内部にしみ込んだ浸透液をきず表面に表出させ、かつ知覚可能な指示模様として形成させる。この方法は現像処理と呼ばれるが、この方法も4種類に分類される。 速乾性現像法 主にエアゾール製品によるスプレー法で、試験面に現像剤を吹き付ける現像法である。適用された現像剤はすばやく乾燥し、微粉末塗膜を形成するという特徴を持つ。白色微粉末を揮発性の有機溶剤に懸濁させ、試験面に吹き付けて使用する。速乾性であるため乾燥処理は行わない。特別な装置を必要とせず、持ち運びに便利なため、溶剤除去性浸透探傷試験と組み合わせて広く利用されている。 湿式現像法 現像剤として、白色微粉末を水に懸濁させたものを用いて現像法である。水溶性現像剤と水懸濁性現像剤の2種類があるが、一般的には水懸濁性現像剤が使用されている。漬積法、スプレー法、注ぎかけ法などがあるが、主に開放型容器を用いた浸漬法が利用されている。試験体への適用後、水分を蒸発させて現像剤塗膜を形成させる必要があるため、乾燥処理を伴う。一般には水洗性蛍光探傷試験と組み合わせて行われる。 乾式現像法 きわめて比重の小さい白色微粉末をそのまま適用する現像法である。現像剤中に埋没させる浸漬法や、噴霧状にして空気中で適用させる方法などがある。この現像法を適用するには試験体が乾燥した状態である必要があるため、水洗性浸透探傷試験や後乳化性浸透探傷試験でこの現像法を適用する場合は、現像前に乾燥処理を行う必要がある。この方法は現像剤がきず部にだけ付着し、試験体表面から余分な現像剤を除けば、きず指示模様の拡大やにじみが発生しないため、比較的実際のきずの姿に忠実な指示模様が得られるという特徴がある。ただし白色のバックグラウンドが得られないため、蛍光浸透探傷試験にのみ適用される。 無現像法 正しくは「無現像剤法」であり、その名の通り現像剤を使用しないできず指示模様を形成させる現像法である。主に、加熱処理を施してきず内部の浸透液や空気を膨張させる方法、浸透液の自己拡大、きず部に圧縮応力が加えられて体積が減少し浸透液が外部にあふれ出る現象などを利用して、きず内部の浸透液を外部ににじみ出させてきず指示模様を形成させる。このため指示模様の形成に使われる浸透液は現像剤を用いた場合に比べて極端に少なくなり、拡大の少ない指示模様しか得られないためきず検出能力はほかの現像法より劣る。現像剤を用いないため、白色微粉末によるバックグラウンドは形成されない。このため蛍光浸透探傷試験にのみ適用され、染色浸透探傷試験には適用されない。 浸透探傷試験はこれら3種類の分類からそれぞれ1つずつを選択し、組み合わせて行われる 。基本的には溶剤除去性、水洗性、後乳化性の3つの試験法をベースに、染色浸透液か蛍光浸透液を選択し、最後に4つの現像法から選択する。
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