物価と失業率のトレードオフ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 09:15 UTC 版)
「金融政策」の記事における「物価と失業率のトレードオフ」の解説
「フィリップス曲線」も参照 一般には物価上昇と失業率の改善はトレードオフの関係がある。それは一時的な短期のトレードオフであり、予想外のインフレ率の上昇によりもたらされる。短期トレードオフによる失業率の回復が充分かごくわずかか、その水準にかかわらず、インフレ率は以前より高くなるが、長期的に失業率は自然失業率へと落ち着く。つまり、非自発的失業がある状態では失業率とトレードオフの関係は成り立つが、非自発的失業がない状態では失業率とトレードオフの関はが成り立たない。 物価と雇用のトレード・オフとは、適切な雇用水準を維持しようとすると、ある程度のインフレを許容せざるを得ず、逆に物価の安定を維持しようとすると、適切な雇用水準をあきらめなければならない関係を意味する。 経済学者のスティーヴン・ランズバーグは、ロバート・ルーカスの理論を挙げ「マネー・サプライのランダムな変動はインフレ率と雇用率の双方をともに上昇させる。そして、ランダムな変動ではなく、政府の政策の一環として生じた場合、インフレ率は上昇するが雇用は変動しない」と指摘している。 経済学者の池尾和人は「経済学的には、物価の安定を通じて雇用の最大化を図るか、物価の安定を犠牲にして一時的に雇用の最大化を図るかしかできない。二重目的を課すのは良くない」と述べている。 原田泰は「金融政策に意味があるのは物価を上げるからではなく、生産・雇用を拡大させるからである」と指摘している。 野口旭、田中秀臣は「ケインズ後の時代を生きる人々にとって、雇用・物価の変動は受け入れなければならない『運命』ではない。政府・中央銀行がマクロ経済政策によって総需要を適切に管理すれば、適正な失業率・物価上昇を維持することは可能だからである」と指摘している。 野口、田中は「高コストの問題は名目賃金ではなく『実質賃金』の上昇であり、実質賃金が上昇すれば、企業は雇用を縮小させるしかない。つまり、完全雇用をマクロ経済的に実現させるためには、実質賃金を低下させるしかない。そのためには、名目賃金を低下させるか、物価水準を上昇させるかのどちらかが必要となる」と指摘している。
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