気体の不完全性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/23 09:09 UTC 版)
蒸発熱の実測値は、トルートンの規則からの予測値と大きく異なることがある。例えば、ギ酸の沸点 101 ℃ は水の沸点とほとんど同じであるが、ギ酸の蒸発熱 22.7 kJ/mol は水の蒸発熱の約半分である。酢酸の蒸発熱も同様で、予想される値の半分程度である。これは、これらのカルボン酸分子が気体中で水素結合により二量体を形成しているためである。また、水 H2O やアンモニア NH3 と同じように液体中の分子間に水素結合が働いているはずの、フッ化水素 HF(沸点 20 ℃)の蒸発熱は異常に小さく、7.5 kJ/mol である。これも HF 分子が気体中で多量体 (HF)n を形成していると考えれば説明できる。これらの例ほど顕著ではなくても、蒸発熱の実測値は一般に、気体の不完全性の影響を受ける。そのため、液体中で分子間に働く分子間力を蒸発熱に基づいて議論するには、気体の不完全さの補正が必要である。
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