柿本多映とは? わかりやすく解説

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柿本多映

柿本多映の俳句

こつあげやほとにほねなきすずしさよ
この世から水かげろふに加はりぬ
この村に気配の見えぬ祭かな
てふてふやほとけが山を降りてくる
ひるすぎの背中に藤の余りたる
まがふことなき闇ありき闇に水
また春や免れがたく菫咲き
ゆふぐれの吾を離るる白桔梗
ゆふべから耳成山へ吹く穂絮
下町に月下美人の騒ぎあり
人体に蝶のあつまる涅槃かな
他郷にて影の溺るる洗濯場
仮初めの世とな思ひそ冬の桃
僧跳んであらはになりし梅雨穴
八月の山に沈みて漆の木
冬蝶よ草木もいそぎ始めたり
冬野ゆく真昼がみゆるところまで
叛きたる天心のあり麦ぼこり
吾に賜ふ冬青空のあり愛し
夏の昼しばらく口を開けてゐる
大文字山よりカナカナと鳴きぬ
大鏡火事をうつして崩れけり
寂しからむと隣の桃の木を縛る
寺妻に触れし揚羽の寒からむ
屈葬の記憶を春の軋みとす
揚羽蝶遠忌の柱叩くかな
日の射して蓬の原に見送らる
日の蝕や髪はいつより吹かれけむ
旦暮の蜩の木を?み立つ
春うれひ骨の触れあふ舞踏かな
春のくれ液軆として沈むなり
春のくれ液體として沈むなり
春昼をひらりと巫女の曲りけり
晴れきって氷の下の魚と思ふ
暗がりをよろこぶ魂や魂祭
月明の陵なれば素通りす
木に凭ればたゆたひはじむ桃林
杉戸引きてより一面の菊の景
桃の水甘し酸っぱし石河原
桜の木抱きて腕冷ゆるかな
次の世へ蠅取蜘蛛を連れてゆこ
母と来て何もうつさぬ潦
深秋の猫をあつめて病んでゐる
溺愛のやうにふらここゆすれゆすれ
玄島に入りて影濃き日傘かな
生国の昼へ蹴り出す煙茸
留守の家鶏頭の赤倒れたり
白昼の柱が耽るさくらかな
着飾りて水陽炎の中にゐる
秋風に人は走りてゐたりけり
 

柿本多映

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/01 01:49 UTC 版)

柿本 多映(かきもと たえ、1928年2月10日[1] - )は、日本の俳人。本名は妙子。

経歴

滋賀県大津市に生まれる[2]。実家は天台宗総本山園城寺(三井寺)[3]。1947年、京都女子専門学校(現・京都女子大学)卒業[3]。当初は短歌に携わるが、1951年の結婚を機に作歌から遠ざかる。1976年、西武百貨店大津俳句教室にて句作を開始。1977年、赤尾兜子の「渦」入会。1981年に兜子が没してのちは橋閒石桂信子に師事[2]。「草苑」「白燕」「犀」同人を経て、現在は無所属[4]。渦賞、滋賀県出版文化賞、現代俳句協会賞(1988年)、草苑賞、桂信子賞(2013年)、詩歌文学館賞(2014年)、現代俳句大賞(2017年)、蛇笏賞(2020年)、第65回毎日芸術賞などを受賞[2][3][5]。句集に『夢谷』『蝶日』『花石』『仮生』など7冊。エッセイ集に『時の襞から』『季の時空へ』がある。現代俳句協会会員、日本ペンクラブ会員[2]日本現代詩歌文学館評議員[2]

著書

  • 『蝶日』富士見書房 1989
  • 『柿本多映句集』ふらんす堂 現代俳句文庫 1993
  • 『花石』深夜叢書社 1995
  • 『白體』花神社 花神俳人選 1998
  • 『時の襞から』深夜叢書社 2000
  • 『肅祭』思潮社 2004
  • 『季の時空へ エッセイ』文學の森 2011
  • 『ステップ・アップ 柿本多映の俳句入門』文學の森 2011
  • 『仮生』現代俳句協会 現代俳句コレクション 2013
  • 『夢谷 第一句集』東京四季出版 俳句四季文庫 2013
  • 『柿本多映俳句集成』深夜叢書社 2019

参考文献

  • 金子兜太編 『現代の俳人101』 新書館、2004年、160-161頁。

脚注

  1. ^ 『現代日本人名録』2002年
  2. ^ a b c d e 『柿本多映俳句集成』(深夜叢書社刊) | 第54回(2020年) | 顕彰事業 | 公益財団法人 角川文化振興財団”. 公益財団法人 角川文化振興財団. 2022年6月25日閲覧。
  3. ^ a b c [ほっとインタビュー]古刹で育ち、蛇笏賞を受賞した俳人 柿本多映さん:中外日報” (jp). 中外日報社. 2022年6月25日閲覧。
  4. ^ 軽やかに生命を詠む 91歳『俳句集成』を刊行 柿本多映さん (俳人):東京新聞 TOKYO Web”. 東京新聞 TOKYO Web. 2022年6月25日閲覧。
  5. ^ “第65回毎日芸術賞 受賞者5人の業績”. 毎日新聞. (2024年1月1日). https://mainichi.jp/articles/20240101/ddm/010/040/004000c 2024年1月1日閲覧。 

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