朝食 (ブーシェの絵画)とは? わかりやすく解説

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朝食 (ブーシェの絵画)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/28 16:43 UTC 版)

『朝食』
フランス語: Le déjeuner
英語: Breakfast
作者 フランソワ・ブーシェ
製作年 1739年
種類 キャンバス上に油彩
寸法 81.5 cm × 65.5 cm (32.1 in × 25.8 in)
所蔵 ルーヴル美術館パリ

朝食』(ちょうしょく、: Le déjeuner: Breakfast)は、18世紀フランスロココ期の巨匠フランソワ・ブーシェが1739年にキャンバス上に油彩で制作した風俗画である。ブーシェとしては珍しい家庭内の情景を主題としており[1]、彼が風俗画家としても才能を持っていたことがわかる[2]。作品は1895年にアシル・マレコ (Achille Malécot) 博士から遺贈されて以来[3]パリルーヴル美術館に所蔵されている[1][2][3]

作品

ブーシェは、牧歌的な場面や保守的な人々の怒りを買った官能性に満ちた神話主題の場面を描くことが多かった。しかし、この作品ではブルジョワ階級の平穏な家庭の場面を取り上げている[1][4]。この絵画は、ブーシェ自身の家族を描いたのではないかとも考えられている[1][2]。中流階級でも上のほうに位置するこの家庭の優雅な生活は、絵画が制作された1739年ごろのブーシェの生活でもあったはずである。当時、登場したばかりのコーヒーあるいはココア磁器で味わう優雅な暮らしは、ブーシェの生活を反映したものであろう[2]

朝の光がロココ風のきらびやかな室内[2]を照らす中、人物たちは日常的な営みをしている。右側の赤いモーニングコート纏った女性はおそらく一家の母で、朝食の作法を忘れ、車輪付きの馬の玩具と人形で遊んでいる少女を見守っている。左側には、別の女性がもう1人の少女に食事を与えている。背景の暖炉の前にいる召使は、手に持つ、淹れ立ての暖かいコーヒーあるいはココアの入った容器[1]よりも玩具の少女の方に目を向けているようである。少女たちは穏やかに見え、3人の大人たちは若々しい容貌をしている。画面では黄土色と金色が支配的で、鏡と大きな窓が明るさと平穏な感覚を増している。室内の洒落た装飾品の中で、召使の背後の時計の下に見える陶磁器仏像は衝撃的である。ロココの時代に流行となったものには、異国趣味的な珍しい中国の品々があった。

本作の場面は平凡で、重要なものではないように見えるかもしれないが、親子の関係に関する新しい考え方を示している。この時代以前には、子供たちは「小さな大人」としてみられ、家庭内の動物のように彼らの低い知性は厳しく伸ばされ、育まれなければならないものであった。上流階級の家では、子供たちは大きくなるにつれ、乳母、教師、家庭教師に委ねられ、往々にして両親との感情的つながりは薄く、偽善的な形式以上のものではなかった。それは、幼児死亡率が高かった時代に起こりうる心理的苦痛を避けるための、多少なりとも意識的な防御の役目を果たしたと考える研究者もいる。しかし、18世紀の啓蒙された哲学者たちはこの成長の時期の重要性に気づき、子供たちが全うで幸福な人物になるように愛情をもって接し、愛情をもって教育することを勧めたのである。この新しい考えに沿って、画中には子供たちが登場し[2]、彼らに注意深く接する親たちといっしょにいる[5]

絵画はまた、食事における重要な変革も表している。早い時間の、主に温かい飲み物とパンからなる朝食は、ルイ15世が始めたものである。18世紀の飲み物の人気順は、ココア、ミルクコーヒーまたは紅茶であった。それ以前、朝食はほとんど午前の半ばごろに食され、往々にして前日の夕食の残り物が出されていた。王の習慣はすぐにパリの上流階級の人々に模倣され、フランス全土、ヨーロッパ、アメリカ、そして植民地化グローバリゼーションによって世界的な習慣となったのである。

脚注

  1. ^ a b c d e 『NHKルーブル美術館VI フランス芸術の華』、1986年、104頁。
  2. ^ a b c d e f 『ルーヴル美術館 収蔵絵画のすべて』、2011年、569頁。
  3. ^ a b Le déjeuner”. ルーヴル美術館公式サイト (フランス語). 2025年10月26日閲覧。
  4. ^ Ministère de la Culture et de la Communication, París (1986). François Boucher 1703-1770. Éditions de la Réunion des Musées Nationaux 
  5. ^ Phillip Ariès (1960). L'enfant et la vie familiale sous l'Ancien Régime. Plon, París 

参考文献

外部リンク




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