思想的典拠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/23 16:20 UTC 版)
セネカは主としてストア派の思想に依っていた。ジャニン・フィヨン=ライーユによれば、『怒りについて』の第1巻は、ストア派の哲学者クリュシッポス(前3世紀)の著作、『感情について(英語版)』(古希:Περὶ παθῶν; Peri Pathôn)を元にしている。一方、第2巻と第3巻は、クリュシッポスよりも後代の、同じくストア派の哲学者ポセイドニオス(前1世紀)が著した感情についての著作である。ただし、ポセイドニオスの議論はクリュシッポスのものよりも、魂の不合理な面についてより比重を置いている。しかしながら、最近の研究では、ポセイドニウスがクリュシッポスを批判したという見方はガレノスが行った(彼ら2人の著作の大半は散逸している)彼らの思想に対して行った体系的な歪曲によってもたらされたものに過ぎず、ポシドニウスの感情論はクリシッポスのそれと実質的に変わらないことが明らかになった。したがって、セネカはおそらくクリュシッポス・ポセイドニオス両方の論文を参照したものの、主な影響元はクリュシッポスの方だったようだ。 セネカはまた、第一巻において紀元前4世紀に活躍した逍遙学派(ペリパトス学派)の哲学者、テオプラストスに対して反駁をおこなっていることから、彼の著作も読んでいたと考えられる。さらに、エピクロス派のガダラのピロデモス(英語版)が著した『怒りについて』との類似がフィヨン=ライ―ユらによって指摘されている。
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