弥三郎婆
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/17 20:33 UTC 版)
弥三郎婆(やさぶろうばば)は、新潟県弥彦山を始め、山形県、福島県、静岡県に伝わる説話。中でも、以下の弥彦山の伝説が知られている。 弥彦山の麓に、弥三郎という男が老いた母親と共に暮していた。ある日、弥三郎は山の中でオオカミの群れに出くわしてしまい、大木に登って難を逃れようとした。 するとオオカミたちは梯子状に肩車を組んで男に近付いてきたが、あと少しのところで高さが足りない。一番上のオオカミが「弥三郎の婆を呼べ」と吠えたてた。すると空に暗雲が垂れ込め、その中から毛むくじゃらの腕が現れて弥三郎を掴んだ。弥三郎は必死に刀でその腕を斬りつけると、雲もオオカミも消えてしまった。 弥三郎は、オオカミたちはなぜ自分の母を呼んだのだろうと不思議に思いつつ、斬り落とした腕を持って帰宅した。家では母が布団を被って妙な声で呻いていた。弥三郎が事情を話して件の腕を見せると、母は「これは俺の腕だ!」と叫び、肩口から血を滴らせつつ逃げ去った。この母の正体は鬼婆であり、本物の母は既に鬼婆に食べられてしまった後だったという。 なおこの説話には、弥三郎婆は鬼ではなくオオカミたちを率いる老いたネコだった、鬼婆が後に改心して妙多羅天という神になったなどの多くの異説がある。 妙多羅天の名の祠は山形県東置賜郡高畠町にもあり、羽前国(現・山形県)の伝説では渡会弥三郎という者が母の変化した鬼女に襲われ、その腕を斬り落としたとされ、前述のような弥三郎婆の説話は、この弥三郎の話に上述の「小池婆」のようなネコやオオカミの怪異が混ざって生まれたという説もある。
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