巡回行列とは? わかりやすく解説

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巡回行列

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/09 01:57 UTC 版)

巡回行列(じゅんかいぎょうれつ)または循環行列(じゅんかんぎょうれつ、: Circulant matrix)は、テプリッツ行列の特殊なものであり、各行ベクトルが1つ前の行ベクトルの要素を1つずらして配置した形になっているものである。数値解析において、巡回行列は離散フーリエ変換によって対角化されるため、それを含む線型方程式系高速フーリエ変換で高速に解くことができる。

定義

n次正方行列 C で次の形のものを巡回行列と呼ぶ。

巡回行列は1つのベクトル c で完全に表すことができる。そのベクトルは C の最初の列で表されている。他の列はそれを回転させたものになっている。C の最後の行は c を逆の順序にしたものであり、他の行はそれを回転させたものになっている。

性質

固有ベクトルと固有値

巡回行列の規格化された固有ベクトルは

で与えられ、これらは正規直交系を成す。ここで1のn 乗根で、虚数単位である。

対応する固有値は

で与えられる(以上の事実は実際に Cvj を計算してみればわかる)。

その他の性質

n次の巡回行列の集合は、n次元ベクトル空間を形成する。

任意の2つの巡回行列 A, B について、A + BAB も巡回行列となり、AB = BA が成り立つ。従って、巡回行列は可換代数を形成する。

与えられたサイズの巡回行列の固有ベクトルは、同じサイズの離散フーリエ変換行列の列である。その結果、巡回行列の固有値高速フーリエ変換 (FFT) で簡単に計算できる。

巡回行列の最初の行のFFTを行った場合、その巡回行列の行列式はスペクトル値の積となる。

(固有分解による)

ここで

最後の項 は、スペクトル値の積と同じである。

巡回行列を使った線型方程式系の解法

線型方程式系を行列で次のように表す。

ここで、 が大きさ の巡回行列であれば、循環畳み込みとして次のように方程式を表せる。

ここで、 の最初の列であり、ベクトル は双方向に循環的に拡張される。畳み込み定理を使うと、離散フーリエ変換を使って循環畳み込みを次のような形式にできる。

従って、次のようになる。

このアルゴリズムは通常のガウスの消去法よりも高速であり、特に高速フーリエ変換を使えば高速になる。

グラフ理論における応用

グラフ理論において、隣接行列が巡回行列になっているグラフをcirculant graph(循環グラフ、巡回グラフ)と呼ぶ。グラフが circulant であるとは、その自己同型群 (automorphism group) に全長サイクル (full-length cycle) が含まれる場合を指す。circulant graph の例としてメビウスの梯子がある。

外部リンク


巡回行列

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/11 04:02 UTC 版)

ムーア・ペンローズ逆行列」の記事における「巡回行列」の解説

C {\displaystyle C} が巡回行列の場合フーリエ変換特異値分解ができる。つまり、特異値フーリエ係数となる。 F {\displaystyle {\mathcal {F}}} を離散フーリエ変換DFT行列とすると、 C = F ⋅ Σ ⋅ F ∗ C + = F ⋅ Σ + ⋅ F ∗ {\displaystyle {\begin{aligned}C&={\mathcal {F}}\cdot \Sigma \cdot {\mathcal {F}}^{*}\\C^{+}&={\mathcal {F}}\cdot \Sigma ^{+}\cdot {\mathcal {F}}^{*}\end{aligned}}}

※この「巡回行列」の解説は、「ムーア・ペンローズ逆行列」の解説の一部です。
「巡回行列」を含む「ムーア・ペンローズ逆行列」の記事については、「ムーア・ペンローズ逆行列」の概要を参照ください。

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