小林信夫 (イラストレーター)
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小林 信夫(こばやし のぶお、生年月日不明[注 1] - 2023年6月20日)は、日本のイラストレーター、モデラー。鉄道模型メーカーの商品の箱絵を手がけ、鉄道模型雑誌に製作記事を連載していた。
来歴・人物
武蔵野美術大学卒業し、トミー工業(現・タカラトミー、ホビー事業部は現・トミーテック)に入社。トミーナインスケールを担当し、「K.S.K.タイプCタンク機関車[2]」を開発[注 2]したのち、鉄道模型ブランドTOMIX立ち上げにも関わった[4]。このほか、彩色済みプラモデル「おさかな図鑑シリーズ」や戦闘機プラモデル「1/32 スケール&アクションキット」[5]、トミカ用ストラクチャー「トミカラマ」[6]などの箱絵や解説書も手掛けた[7]。
グリーンマックス
- 1976年頃、巣鴨の模型店「DB(デェーベェー)」でグリーンマックス関係者と接点を持ち、同店が翌1977年にグリーンマックス巣鴨店として再出発する際には店内用レイアウト(ジオラマ)の製作に携わった[8]。なお、巣鴨店は1984年に田端店のオープンに伴って閉店した。
- 1980年代にはグリーンマックスの鉄道模型製品の箱絵や解説書、カタログのイラストを手がけた[9]。特にカタログにおいては乗り物マニアや建物マニアの本領を生かし、鉄道に留まらない広範な鉄道模型のストラクチャーの製作方法を提示し、近似スケール(1/144スケールなど)の船や飛行機の模型を使うといった提案をした。自ら企画した漁船キットには1/200スケールの海外製キットの漁船を日本仕様にするためのデカールまで付属していた。また、いすゞ・キュービックや三菱ふそう・エアロクィーンを製品化し、バスモデルのジャンルを開拓した[10]。このほか、1/700の艦船キット「スカイウェーブシリーズ」(のちにピットロードに移管)の箱絵や解説書も担当した。
- 小林による企画のストラクチャーは、「レイアウト向けの日本の木造建築」として「町屋 (商家)・農家・大型の建物・非住居[注 3]」の四本柱で行われ、各地の取材をもとに製品化された[11]。なお、空港の格納庫や劇場、地方銀行、ガソリンスタンドなど[12]はカタログに掲載されたものの未発売[注 4]となったが、このようなものは後々他社が製品化した。
鉄道模型趣味誌
- 『鉄道模型趣味』1990年6月号の誌面に登場[4]して以降、死去する2023年まで数々の製作記事を寄せていた。
- 1/72スケールのミリタリーモデルの軍用車両を民間仕様に改造してHOゲージに転用したり、各種食玩モデルのストラクチャーへの転用を薦める記事が多く、ペーパーモデルによる車体やストラクチャーの自作も得意としていた。近年[いつ?]では、フリーマーケットや100円ショップで販売されている安価な玩具の改造や色付きの紙、廃材を用いて極力塗装を不要とした安価な工作の紹介が多くなっていた。
晩年・没後
- 『鉄道模型趣味』2023年8月号の編集後記にて、同号の締切直前に訃報が届いたことが触れられた[13]。
- 翌9月号にて、6月20日未明に入院中の病院にて死去したことが誌面で発表された[4]。晩年は入退院を繰り返しており、入院中にも執筆していた。享年72[4]。
- 第22回国際鉄道模型コンベンション(2023年8月18-20日開催)のModels IMON・TMSブースにて「小林信夫さん原画展」と題して、製作記事用に描かれた原画が初めて公開された[14]。
- 2024年9月には小林の選り抜き記事で構成された『小林信夫の模型世界』が発行され、翌年には続編が発行された。
その他の主な仕事
- 『グリーンマックスNゲージカタログ[15]』のコラム(volume. 8、1987年まで/小林の名は記載されていない)
- 『GMマニュアル Vol.1』グリーンマックス、1986年11月。(小林の名は記載されていない)
- トミーテック 鉄道コレクションのイメージイラスト
- ナローゲージ80 猫屋線第7弾[16]-猫山森林鉄道第2弾(縮尺1/80・軌間9mm、2020年2月-2024年2月発売)
- ノスタルジック鉄道コレクション 第1弾[17]-第4弾(縮尺1/150・軌間9mm、2021年6月-2023年12月発売)
GMカタログでの名言
1980年代のグリーンマックスのカタログには名言がいくつか見られ、著者名は記されていないものの、絵柄やアイディアなどから小林によるものと考えられている。
- 「何らかの方法で埋める」「この部分自作した方が早い」[18] - クモハ52キットからクモハ53(前面パーツはサロ85に付属)を製作する際の前面部の処理の説明。
- 「手すり(ぜひ自作して取り付けたい)」[18] - 京急1000形キットから小田急5200形(前面パーツは小田急9000形に付属)を製作する際のアドバイス。
- 「スソのRは不要」[18] - 阪急2800系キットから京急2000形(前面パーツは東急8500系に付属)を製作する際の説明。
- 「テキサン練習機はゼロセンを黄色く塗ってごまかしておけば良い。(シロウトはだませる)」[19] - 1/144スケールの飛行機を用いて空港を製作する際のアドバイス。
脚注
注釈
出典
- ^ GM50年史, p. 128
- ^ “HISTORY: 1976”. トミックス40周年記念サイト. トミーテック (2016年4月21日). 2024年11月23日閲覧。
- ^ 小林信夫「楽しい軽工作 <34> トレーの丘、下敷の温室」『鉄道模型趣味 2022年7月号』No. 966、機芸出版社、2022年6月20日、96-100頁。
- ^ a b c d 名取紀之「小林信夫さんを偲んで」『鉄道模型趣味 2023年9月号』No. 980、機芸出版社、2023年8月20日、100-101頁。
- ^ GM50年史, pp. 128-131
- ^ 小林 (2024), p. 158
- ^ GM50年史, pp. 16-17
- ^ GM50年史, pp. 16, 44, 130
- ^ 大平祥司「GREEN MAXの仕事」『N(エヌ)』No. 29、イカロス出版、2006年8月、36-39頁。
- ^ GM50年史, pp. 64-65
- ^ a b GM50年史, pp. 58-63
- ^ a b c “新製品紹介/格納庫(倉庫)、劇場(映画館)”. GM通信. グリーンマックス (2022年3月23日). 2024年11月23日閲覧。
- ^ 名取紀之「編集者の手帖」『鉄道模型趣味 2023年8月号』No. 979、機芸出版社、2023年7月20日、114頁。
- ^ 「メーカー・ショップ大集合:企業出展」『第22回JAM国際鉄道模型コンベンション公式記録集』機芸出版社、2024年1月1日、98頁。ISBN 9784905659259。
- ^ GM50年史, pp. 46-47
- ^ tomytecdiocolleのツイート(1225762128843304960)
- ^ tomytecdiocolleのツイート(1360123503836418055)
- ^ a b c 「この前面はこう使う!」『GMマニュアル Vol.1』グリーンマックス、1986年11月、11頁。(クモハ52についてはGM50年史, pp. 47, 66に掲載)
- ^ 「1/144 scaleノススメ」『Nゲージ総合カタログ Vol.6』グリーンマックス、1984年7月、29頁。[12]
参考文献
- 小林信夫『小林信夫の模型世界』機芸出版社、2024年9月1日。 ISBN 9784905659280。
- 小林信夫『続小林信夫の模型世界 ~貴方も電鉄経営者~』機芸出版社、2025年10月1日。 ISBN 9784905659310。
- 『グリーンマックス創業50周年記念誌』ネコ・パブリッシング、2025年3月18日。
ISBN 9784777055890。
- 第7章「小林信夫氏とグリーンマックス」「小林信夫氏原画集」のほか、各種資料を収録
外部リンク
- 小林信夫 (イラストレーター)のページへのリンク