動学非効率性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/31 04:38 UTC 版)
黄金律が最適成長モデルでえらばれないという点に関して、フェルプスは、その場合でも黄金律は動学非効率性の境界線として規範的な意義をもつと主張した。動学非効率性というのは、消費を一方的に増やせる機会があるのに、その機会を活かしていないという意味で無駄のある状況をいう。資本が黄金律を超えるほど余分に蓄積され、資本収益率が成長率を下まわるほど低下すると動学非効率におちいる。 現代の経済成長理論において黄金律貯蓄率は、きちんと定義された選好から導かれたものではないので最適性の観点からみると過去の遺物とみなされるが、そうであっても動学効率性の議論で役に立つとされる。動学非効率性の文脈において「蓄積の黄金律は今も最適成長理論で最も基本の命題である」といわれる。 たとえばグレゴリー・マンキューはトマ・ピケティ『21世紀の資本』を批判するペーパーで、動学非効率性の境界線として黄金律に言及している。批判されたピケティも実は『21世紀の資本』の目立たない場所で黄金律が動学非効率性の境界線になることを論じていた。ピケティは歴史データをもとに資本収益率 r が経済成長率 g を平均的に上まわるという不等式 r > g を見いだし、それを根拠にして、現実経済の動学非効率性を否定した。かつてマンキューは、もっと緻密な実証方法で先進国の動学非効率性を否定する結果をえたことがあった。
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