刺胞動物との共生
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/03 09:47 UTC 版)
ヤドカリのうち多くの種が、刺胞動物のうちのイソギンチャク類と共生する。日本でよく見られるのは大型の浅海生種ソメンヤドカリ Dardanus pedunculatus、ケスジヤドカリ D. arrosor が背負った殻の上にベニヒモイソギンチャク Calliactis polypus、ヤドカリイソギンチャク C. japonica が共生する例である。他にもトゲツノヤドカリ Diogenes edwardsii の大鋏にヤドカリコテイソギンチャク Verrillactis paguri が付着するなど、いくつかの共生関係が知られる。 これらのイソギンチャクの中には、自らヤドカリの殻に住み着く傾向を持つものもあり、また、ヤドカリの種によっては、イソギンチャクを見つけると自分の殻の上にそれを移し替える行動を持つものがある。その場合、イソギンチャクの基部をヤドカリが鋏で刺激するとイソギンチャクは素直に基盤を離れる。 この関係では、イソギンチャクは移動することができるようになること、付着する基盤がない砂泥底の部分にも進出できるなどの利点がある。ヤドカリの側では、イソギンチャクの刺胞によって、タコ等の天敵の攻撃を避けることができる。つまり、互いに利益がある相利共生の関係である。 さらに関係が進んだ例として、深海生のユメオキヤドカリ Paragiopagurus diogenes、イイジマオキヤドカリ Sympagurus dofleini等では共生したイソギンチャクが分泌物でクチクラ質の「殻」を作り、その中にヤドカリが入る。ヤドカリの成長にあわせて殻も大きくなるので、ヤドカリは引っ越しをする必要がない。また、ヤドカリがイソギンチャクに餌をやることも観察されている。 イソギンチャク以外では、スナギンチャク類のヤドカリスナギンチャクやヤツマタスナギンチャクがやはりヤドカリの殻を覆って成長する。また、ヒドロ虫類のイガグリガイウミヒドラ Hydrissa sodalis は、イガグリホンヤドカリ Pagurus constans の住む貝殻に育ち、次第に成長すると、殻が大きくなるように成長する。表面からたくさんの棘を伸ばすことからこの名がある。
※この「刺胞動物との共生」の解説は、「ヤドカリ」の解説の一部です。
「刺胞動物との共生」を含む「ヤドカリ」の記事については、「ヤドカリ」の概要を参照ください。
- 刺胞動物との共生のページへのリンク