分散共分散行列の同等性の検定
例題:
「表 1.に示すような2群3変数のデータにおいて,2群の分散共分散行列が同等か,有意水準 5% で検定しなさい。」
群 | X1 | X2 | X2 |
---|---|---|---|
1 | 2.9 | 161.7 | 120.8 |
1 | 2.3 | 114.8 | 85.2 |
1 | 2.0 | 128.4 | 92.0 |
1 | 3.2 | 149.2 | 97.3 |
1 | 2.7 | 126.0 | 81.1 |
1 | 4.4 | 133.8 | 107.6 |
1 | 4.1 | 161.3 | 114.0 |
1 | 2.1 | 111.5 | 77.3 |
2 | 4.8 | 198.7 | 172.9 |
2 | 3.6 | 199.3 | 157.9 |
2 | 2.0 | 188.4 | 152.7 |
2 | 4.9 | 183.6 | 164.2 |
2 | 3.9 | 173.5 | 172.2 |
2 | 4.4 | 184.9 | 163.2 |
検定手順:
- 前提
- 2 群の p 変量データにおいて,各群の平均偏差データ行列を X1,X2 とする。
X1,X2 はそれぞれ n1 × p,n2 × p データ行列の各要素から対応する平均値を引いたものである。
- 各群の分散共分散行列を S1 = X1' X1 / ( n1 - 1 ),S2 = X2' X2 / ( n2 - 1 ) とする。
例題では,
- 2 群をプールした分散共分散行列 S* は,1 変量の平均値の差の検定(t 検定)で,2 群をプールしたときの分散を求めるときの式を行列に拡張したものである。
例題では,
- ν1 = n1 - 1,ν2 = n2 - 1 とおき,| S* | などを行列式として,
とし,次式により χ20 を求める。
例題では,| S1 | = 8520.68,| S2 | = 2780.09,| S* | = 12021.40 より -2 ln V = 9.73042,また b = 0.718849 となるから,χ20 = 6.99471 である。
- χ20 は,自由度 p ( p + 1 ) / 2 の χ2 分布に従う。
例題では,自由度は 6 である。
- 有意確率を P = Pr { χ2 ≧ χ20 } とする。
χ2分布表,またはχ2分布の上側確率の計算を参照すること。
例題では,自由度 6 の χ2 分布において,Pr{χ2 ≧ 12.59}= 0.05 であるから,P = Pr{χ2 ≧ 6.9917}> 0.05 である(正確な有意確率:P = 0.3213371)。
- 帰無仮説の採否を決める。
例題では,有意水準 5% で検定を行うとすれば(α = 0.05),P > α であるから,帰無仮説を採択する。すなわち,「2 群の分散共分散行列は等しくないとはいえない」。
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