公理的特徴付け
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/20 03:21 UTC 版)
Aを物理量、すなわち状態空間上の自己共役作用素であるとする。 今何らかの量子力学的な系が与えられていたとし、この系でAを観測した観測値の期待値を E ( A ) {\displaystyle E(A)} と書くことにする。なお系の具体的な状態は問わない。したがって系が純粋状態であっても混合状態であってもよい。 E ( A ) {\displaystyle E(A)} は自己共役作用素Aに実数を対応させる関数 E : A ↦ R {\displaystyle E~:~A\mapsto \mathbf {R} } とみなす事ができるが、物理的に考えると、この関数は次の2性質を満たさねばならないはずである。なお以下でIは単位行列である。さらにAが非負であるとは、任意の状態ベクトル | ψ ⟩ {\displaystyle |\psi \rangle } に対し ⟨ ψ | A | ψ ⟩ ≥ 0 {\displaystyle \langle \psi |A|\psi \rangle \geq 0} が成立する事を言う: (1) E ( I ) = 1 {\displaystyle E(I)=1} (2) Aが非負なら、 E ( A ) ≥ 0 {\displaystyle E(A)\geq 0} なぜこれらの条件が要請されるかというと、単位行列Iの固有値は全て1なので、Aを観測した結果は常に1でなければならない(=条件(1))。またAが非負になるにはその固有値(や連続スペクトル)が全て非負になる場合だけなので、 E ( A ) ≥ 0 {\displaystyle E(A)\geq 0} が成立しなければならない(=条件(2))。 さらに関数 E ( A ) {\displaystyle E(A)} が以下の連続性を満たしている事を要請する: (3) n → ∞ {\displaystyle n\to \infty } のとき A n → A {\displaystyle A_{n}\to A} となる任意の自己共役作用素の列 { A n } n {\displaystyle \{A_{n}\}_{n}} に対し、 E ( A n ) → E ( A ) {\displaystyle E(A_{n})\to E(A)} ここで E ( A n ) → E ( A ) {\displaystyle E(A_{n})\to E(A)} は実数としての収束であり、 A n → A {\displaystyle A_{n}\to A} はL2ノルムに関するweak-*収束である。 このとき次が成立する事が知られている: 定理 ― 有界な自己共役作用素Aに実数を対応させる線形汎関数 E : A ↦ R {\displaystyle E~:~A\mapsto \mathbf {R} } が(1)、(2)、(3)をすべて満たす必要十分条件は、 E ( A ) = t r ( ρ A ) {\displaystyle E(A)=\mathrm {tr} (\rho A)} を満たす密度行列ρが存在する事であるH13:p423-424。しかもそのような密度行列は一意に定まるH13:p423-424。
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