余呉湖の羽衣伝説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/07 03:39 UTC 版)
古老の伝へて曰へらく、近江の国伊香(いかご)の郡(こほり)。与胡(よご)の郷(さと)。伊香の小江(をうみ)。郷の南にあり。天の八女(やをとめ)、ともに白鳥(しらとり)となりて、天より降りて、江(うみ)の南の津に浴(かはあ)みき。時に、伊香刀美(いかとみ)、西の山にありて遥かに白鳥を見るに、その形奇異(あや)し。因りてもし是れ神人(かみ)かと疑いて、往きて見るに、実に是れ神人なりき。ここに、伊香刀美、やがて感愛をおこして得還り去らず。窃(ひそ)かに白き犬を遣りて、天の羽衣を盗み取らしむるに、弟(いろと)の衣を得て隠しき。天女(あまつをとめ)、すなはち知(さと)りて、その兄(いろね)七人は天上に飛び昇るに、その弟一人は得飛び去らず。天路(あまぢ)永く塞して、すなわち地民(くにつひと)となりき。天女の浴みし浦を、今、神の浦といふ、是なり。伊香刀美、天女の弟女(いろと)と共に室家(をひとめ〈夫婦〉)となりて、此処に居み、遂に男女(をとこをみな)を生みき。男二たり、女二たりなり。兄の名は意美志留(おみしる)、弟(おと)の名は那志登美(なしとみ)、女(むすめ)は伊是理比咩(いぜりひめ)、次の名は奈是理比賣(なぜりひめ)、此は伊香連(いかごのむらじ)等が先祖、是なり。後に母(いろは)、すなわち天の羽衣を捜し取り、着て天に昇りき。伊香刀美、独り空しき床を守りて、唫詠(ながめ〈吟詠〉)すること断(や)まざりき。 古老傳曰 近江國伊香郡 與胡鄕 伊香小江 在鄕南也 天之八女 倶爲白鳥 自天而降 浴於江之南津 于時 伊香刀美 在於西山 遙見白鳥 其形奇異 因疑若是神人乎 往見之 實是神人也 於是 伊香刀美 卽生感愛 不得還去 竊遣白犬 盗取天羽衣 得隱弟衣 天女乃知 其兄七人 飛昇天上 其弟一人 不得飛去 天路永塞 卽爲地民 天女浴浦 今謂神浦是也 伊香刀美 與天女弟女 共爲室家 居於此處 遂生男女 男二女二 兄名意美志留 弟名那志登美 女伊是理比咩 次名奈是理比賣 此伊香連等之先祖是也 後 母卽捜天羽衣 着而昇天 伊香刀美 獨守空床 唫詠不斷 — 帝皇編年記
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