中立説派-選択説派論争
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/09 01:55 UTC 版)
「中立進化説」の記事における「中立説派-選択説派論争」の解説
木村説が初めて発表されるや、白熱した論争が起こり、多くはゲノム中の中立遺伝子と非中立遺伝子の割合に関して展開された。論争を遠目に見ていた多くの研究者の認識とは反対に、論争は、自然選択が働いているのかどうかということに関してではなかった。木村は分子進化には中立進化が幅を利かせているが、表現型レベルの形質の変化にはサンプリングの偶然による遺伝的浮動よりも自然選択が働いているほうが多いだろうと論じた。 太田朋子は木村の学生で、一時的に微小有害突然変異がかなり一般的に存在しているかも知れないという考えに迷い込んだこともあったが、中立説に、「ほぼ中立な」選択性という概念を取り入れるという重要な一般化を行った。つまり遺伝子が大部分浮動による影響を受けるか、選択による影響を受けるかは、交配集団の有効な大きさによって決まるとする。中立説派-選択説派の喧噪は沈静化したが、中立遺伝子と非中立遺伝子の割合に関する問題はまだ続いている。GraurとLi (2000)は次のように言っている。『分子進化の将来についてわれわれが予言したいことは2つしかない。1つはかつての論争に関係している。中立説派-選択説派の論争やイントロンの起源の古さというような問題に関する論争は続くだろう。その際「中立説は死んだ」とか「中立説よ永遠なれ」というような叫びは凶暴性の帯びかたに程度の差はあれ1つの論文のタイトルに鳴り響くことは時々あるだろう』
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