中村せんとは? わかりやすく解説

中村せん・りつ

(中村せん から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/17 19:12 UTC 版)

中村せん(なかむら せん)と中村りつ(なかむら りつ)は、必殺シリーズの登場人物である。それぞれ同シリーズの主要人物である中村主水の姑と妻であり、姑のせんを菅井きんが、妻のりつを白木万理が演じた。

このページでは中村家についても解説する。

概要

中村主水藤田まこと)の家族である。婿養子で立場の弱い主水への婿いびりが恒例で、仕事人シリーズの各回は中村家のシーンのストップ モーションで終わるというのが基本的な構成になっていた[注 1]。シリーズ第2作『必殺仕置人』で初登場。『仕置人』と第4作『暗闇仕留人』は全く登場しない回があったが、第6作『必殺仕置屋稼業』にレギュラー出演したことで、以降の主水シリーズの構成がほぼ出来上がった。

必殺シリーズのプロデューサーを務めた山内久司は、シリーズ第1作『必殺仕掛人』の構想時からシリーズのホームドラマ要素を強く望んでいた[注 2]。中村家はその具現化であり、山内はせんとりつを「必殺の一番の特徴」と評している[1]。暗殺者を主人公とする作品のもつ暗さとは対照的な中村家でのコメディータッチなやり取りは深作欣二工藤栄一など初期シリーズの監督たちからは作品の完成度を損なうものとして拒絶されたが、山内は押し通したという。山内はこのやり取りがストーリー上は全く無駄なものであることを認めつつ、シリーズが成功を収め長く人気を得られたのはこのホームドラマ要素のおかげであると述べている[1][注 2]

外出も含めて基本的に二人で行動しており、登場シーンも二人一緒が圧倒的に多い。

それぞれの名前の由来は「戦慄」より[2]。『必殺仕事人』第3話で『ババァの名前がせん、カカァがりつ。二人合わせて戦慄とくりゃ、こっちは生きてるのが精一杯だ』と主水がそれをネタに会話をする事があった。菅井と白木は必殺シリーズ終了直前まで、このことに気付かなかったという。

中村家

代々、江戸町奉行所の同心を勤めてきた家柄である。現当主の中村主水は娘婿である。先代(せんの夫)の名も主水であるが、当代との直接的な関係性は描写されていない。先々代当主の名も同じく主水(百官名)である。

先代の主水はせんとの間にりつ、たえ(妙心尼)、あや(糸井あや)の娘 3人と男子 1人を儲ける。そして先代は失踪する[注 3]。せんはその後、女手一つで子供を育てたが跡取りの男子が早死にしたため、りつの娘婿として遠縁にあたる北大路主水が中村家当主として迎えられた。

必殺仕事人2010』で主水に西方赴任の命[注 4]が下り、江戸を去った。

中村せん

先々代当主、主水の娘。先代当主、主水の妻。現当主、主水の妻りつの実母であり、主水の義理の母、姑に当たる。

早くに夫を失い、女手一つで子供たちを育てあげた。典型的な鬼姑で、娘婿の主水のあまりにも怠惰な生活ぶりに手を焼いている。このだらしない娘婿を「ムコ殿!」[注 5]と叱責し、他家の婿や主水の同僚の出来の良さを引き合いに現状を嘆いたり、あるいは中村家の由緒云々を長々と語り、先祖のあっぱれな言行と主水の失敗を比較したりするのが決まったパターンである。もっとも、せんからすれば主水に当主として立派に振舞ってほしいとの思いからの叱責である[注 6]

菅井きんの当たり役となったが、せんのイメージが強すぎて、娘の縁談が破談になる事を恐れ、『新・必殺仕置人』のクランクイン直前に降板を希望したことがある。この時は制作スタッフが菅井に配慮し、菅井が出演しない非主水シリーズの「必殺からくり人」、「必殺からくり人・血風編」を放映した。結果として降板を避け、娘の縁談は無事に成功したというエピソードがある[注 7]

中村りつ

現当主、主水の妻である。先代当主の主水とせん夫妻の長女。

せんによると見合いの席で一目惚れして、北大路主水を婿養子に迎えたとのことである[注 8]。夫の怠惰な性格には母のせん共々、呆れており、一緒に叱責するのが常だが、せんとは異なり、陰でフォローすることもある。また、主水の細面で馬面の容姿をせんは貶すことがあるが、りつにとってはそれが好みらしい。よって、二人だけの時には甘えたりもしている。ただし、せんと二人で、主水のへそくりをせしめたり、高価な着物を無断で購入したりしていることも事実である。

りつを演じた白木は、かつてはお色気女優の白木マリとして知られており、主水が登場する以前の『必殺仕掛人』の第2話で女郎のおれん役として既に出演していたが、りつ役を演じることで時代劇女優のイメージが定着した。お色気女優として活躍していた事の名残から、主水に色仕掛けをコミカルに行う事も多い。『必殺仕置屋稼業』では主水を誘う女郎役の二役を演じているが、その際は「おめぇみたいなババァはお断り」と跳ね除けられている。白木が『いつみても波瀾万丈』に出演した際はりつについて「夫を愛しているが母親の手前、つい厳しくしてしまう」と発言している。

白木は芸能界への復帰ということで、心機一転を込めて改名した直後にりつ役の話が来た。『必殺仕置人』出演に当たり、芸名を変えたように見えるが実際は出演と改名に直接の関係は無い。

登場作品

テレビシリーズ

テレビスペシャル

舞台

せんは「必殺ぼたん燈籠」を最後に、舞台に出演していない。

  • 藤田まこと特別公演「新・必殺仕置人」(1977年、新歌舞伎座
  • 納涼必殺まつりシリーズ(1981年 - 1987年の8月下旬、京都南座
    • 必殺女ねずみ小僧(1981年)
    • 必殺・鳴門の渦潮(1982年、それに先駆けて名鉄ホールで上演された)
    • 必殺ぼたん燈籠(1983年)
    • からくり猫屋敷(1984年)
    • 琉球蛇皮線恨み節(1985年)
    • 女・稲葉小僧(1986年)
    • 地獄花(1987年)
  • 藤田まこと特別公演「必殺仕事人 中村主水参上!(地獄花改め)」(1988年、梅田コマ・スタジアム
  • 藤田まこと特別公演「必殺仕事人 主水、大奥に参上!」(1989年、梅田コマ・スタジアム → 新宿コマ劇場 → 1991年、名鉄ホール)
  • 藤田まこと特別公演「必殺仕事人 地獄花」(1990年、名鉄ホール)
  • 南座八月公演「必殺/中村主水、大奥に参上!」(1996年、京都南座)
  • 藤田まこと特別公演「必殺仕事人/主水、大奥に参上!」(1997年、新宿コマ劇場 → 1998年、中日劇場劇場飛天 → 1999年、全国巡業 → 2002年、明治座

劇場映画

パチンコ機

いずれも京楽産業.から発売。

脚注

注釈

  1. ^ ただし『必殺仕事人2009』では東山紀之が当主を演じる渡辺家に変更され、以降の役回りを譲っている。
  2. ^ a b 必殺を斬る
  3. ^ 『必殺仕事人』第12話で、せんたちの婿いびりに耐えられなくなったのが原因と思われる描写がある。
  4. ^ 劇中ではセリフで語られるのみで、本人たちは直接の登場はない。主水は回想シーンで登場した。「西方」は必殺シリーズでしばしば見られる死の暗喩であり、『2010』撮影直前に主水役の藤田まことが亡くなったことに対しての措置とその含意である。
  5. ^ 初期のシリーズでは「主水殿」と呼ぶこともあった。
  6. ^ 主水の裏稼業が露見しそうになり、せんとりつを連れて江戸から逃げようと家に帰った折、せんが主水を頼りにしていることを偶然聞いてしまい、逃げるのを止めて戦うことを決意するエピソードも存在する。
  7. ^ 詳しくは必殺シリーズ#中村主水の主人公問題を参照。
  8. ^ 見合いの席で妥協したという台詞もある。

出典



中村せん

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/13 00:35 UTC 版)

中村せん・りつ」の記事における「中村せん」の解説

先々代当主主水娘。先代当主主水の妻。現当主、主水の妻りつの実母であり、主水義理の母、姑に当たる。 早くに夫を失い女手一つ子供たち育てあげた。典型的な鬼姑で、娘婿主水あまりにも怠惰な生活ぶりに手を焼いている。このだらしない娘婿を「ムコ殿!」と叱責し他家の婿や主水同僚出来良さ引き合い現状嘆いたり、あるいは中村家由緒云々長々語り先祖あっぱれな言行主水失敗比較したりするのが決まったパターンである。もっとも、せんからすれば主水当主として立派に振舞ってほしいと思いからの叱責である。 菅井きん当たり役となったが、せんのイメージが強すぎて、娘の縁談破談になる事を恐れ、『新・必殺仕置人』のクランクイン直前降板希望したことがある。この時は制作スタッフ菅井配慮し菅井出演しない主水シリーズの「必殺からくり人」、「必殺からくり人・血風編」を放映した結果として降板避け、娘の縁談無事に成功したというエピソードがある。

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