不当な起訴の抑制(公訴権濫用論)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/30 17:03 UTC 版)
「起訴便宜主義」の記事における「不当な起訴の抑制(公訴権濫用論)」の解説
上述のように、検察官が不当に公訴を提起しないことについては検察審査会等が一定のチェック機能を果たすことが法律上予定されている。 これに対して検察官が不当に公訴を提起することについては明文の規定が存在していない。明文で規定されている手続としては、検察官が自ら公訴を取り下げる(公訴の取消し。257条)ことが考えられるが、これができるのは第一審公判手続の判決前までであるし、公訴の取下が行われるかどうかは検察官の自制の問題である。 こうして、裁判所が訴追裁量権の行使について一定の審査を行う必要性が存在することとなる。このような必要性に基づいて、一定の場合に検察官の公訴の提起それ自体を違法として、裁判所が検察官の公訴提起を棄却すべき場合があるとの見解が学説上有力に唱えられた。これが公訴権濫用論である。 公訴権濫用論については次のような判例が存在する。検察官の公訴権濫用を認定して公訴棄却を判示した原審に対して検察官が上告した事件において最高裁判所は、検察官による裁量権の逸脱行為が公訴の提起を無効とする場合はあり得るが、それは公訴の提起自体が職務犯罪を構成するような極限的な場合に限られるときわめて限定的な判示をした上で(公訴棄却を判示した)原審を維持する判示を行っている。
※この「不当な起訴の抑制(公訴権濫用論)」の解説は、「起訴便宜主義」の解説の一部です。
「不当な起訴の抑制(公訴権濫用論)」を含む「起訴便宜主義」の記事については、「起訴便宜主義」の概要を参照ください。
- 不当な起訴の抑制のページへのリンク