下行性制御
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/05/29 15:23 UTC 版)
「ゲートコントロールセオリー」の記事における「下行性制御」の解説
前頭葉や視床下部から、中脳中心灰白質を介し吻側延髄腹側部、橋中脳背外側被蓋部を通り、脊髄後角へと至る。橋中脳背外側被蓋部のニューロンは吻側延髄腹側部と双方向性に連絡しており、また後角への直接投射経路も有する。これらをオピオイドや電気刺激により活性化すると、後角の侵害受容ニューロンの活動は抑制される。この事より、中脳中心灰白質、吻側延髄腹側部、橋中脳背外側被蓋部が下行性制御の中枢だとされる。 中脳中心灰白質(PAG:periaqueductal grey) 中脳中心灰白質は、エンケファリン(Enk)、サブスタンスP(SP)、GABA作動性ニューロンが多数存在する。中脳中心灰白質への求心性線維は、視床下部、扁桃体、脳幹より入力され、視床下部、扁桃体の特定部位を刺激すると抗侵害作用が得られる。脳幹からの入力は、楔形核(nucleus cuneiformis)、橋延髄網様体、青斑核、その他脳幹に存在するカテコラミン作動性の諸核に由来する。また、中脳中心灰白質は、脊髄後角に直接投射する痛覚調節線維が起始する延髄吻側のニューロンと双方向性に連絡している。中脳中心灰白質自体から脊髄への直接投射は少ない為、吻側延髄腹側部がリレーしていると考えられている。 吻側延髄腹側部(RVM:rostral ventromedial medulla) 吻側延髄腹側部を電気で刺激すると、後角の侵害受容ニューロンが選択的に抑制される。その際、脳脊髄液中にセロトニン(5-HT)とノルアドレナリン(NA)が放出される。これは脊髄背側策下行路が関与するとされる。吻側延髄腹側部への主な入力は楔形核である。侵害受容性脊髄網様体ニューロンは延髄の網様体巨大細胞群に密な投射を送り、そこからも入力を受ける。また、尾側縫線核群のセロトニン含有ニューロン、延髄吻側のA5や橋のA7に由来するノルアドレナリン作動性入力が接続しており、上記の放出に関与するとされる。 橋中脳背外側被蓋部(DLPT:dorsolateral pontomesencephalic tegmentum) 橋中脳背外側被蓋部を全体的に電気で刺激すると、後角の障害受容ニューロンが抑制される。これにより臨床的慢性痛が解除されるという報告もある。橋中脳背外側被蓋部には楔状核、A7領域が含まれ、A7領域は吻側延髄腹側部と双方向性に連絡している。
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