モモタマナ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/11 22:52 UTC 版)
シクンシ科 (クロンキスト体系) | ||||||||||||||||||||||||
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モモタマナ | ||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Terminalia catappa L. |
モモタマナ Terminalia catappa L. は、シクンシ科に属する樹木。太平洋諸島などに広く分布する。葉が大きく、枝振りが美しいので植栽されることが多い。
概説
シクンシ科に所属する植物は熱帯を中心に種数が多いが、日本に産するものは3種ほどしかない。本種はそのうちの1つである。太平洋諸島からインドにわたる熱帯域を中心に分布し、日本では琉球列島と小笠原に分布する。葉が大きくて倒卵形をしている。果実が水に浮いて分散する。
大きな木になるが、枝が水平に伸び、また大きな葉をまとめて広げるので、木陰を作る。その為もあり、古くから村落の集会所や墓地などに植栽されてきた。現在でも街路樹や公園樹としてよく利用される。また果実は食用にもなる。
特徴
半落葉性の高木[1]。大きいものでは高さ25m、幹の径は1mにも達し、樹冠は平らに広がる。小枝は輪生するように出て、無毛、またはほぼ無毛。葉はその先端に束生する。葉は革質で、長さ20-25cm、全体にほぼ無毛ながら葉柄と中脈に多少の毛がある。葉柄は短くて太く、溝があり、先端には蜜腺がある場合がある。葉身は倒卵形で、縁は滑らかで先端は丸く、基部は耳状、つまり葉柄に着くところはくぼんで両側が丸く突き出す。落葉する前には、往々にして紅葉する。
花期は5-7月。穂状花序を葉腋に生じる。花序は長さ6-8cmで、先端の方には雄性花を、基部の方には雌性花、あるいは両性花をつける。花は白くて径5mm、学は鐘型で内側に星状毛が密生し、萼裂片5個は早くに脱落する。花弁はない。果実は熟すると長さ3-6cmになり、楕円形で多少とも扁平、両側に竜骨状の突起があって、緑色か、その上に赤みを帯びる。果皮は繊維質で、内側の内果皮は硬く、海水に浮くことが出来る。
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穂状花序
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花の拡大
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結実の様子
樹形について
この木は枝が横に広がり、上が平らな樹形になりやすい。これは上向きの枝があまり伸長せず、その前にその下から側方に伸びる枝がより発達するためである。その側枝が横に伸びてゆくために、平らに広がった枝振りが作られる。この様な茎の伸び方を添伸型(てんしんけい)と言うが、本種はこの型の成長をするものの代表的なものである[2]。
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図版・枝振りを示す
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大木の様子
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枝の様子
和名
モモタマナが標準和名であるが、別名はコバテイシである。ただし初島(1975)はコバテイシの方を標準名に採用している[3]。この名は沖縄における方言名に由来するようで、沖縄県各地でコバテイシ、あるいはクファディーサ、あるいはそれらに類する方言名が伝えられる[4]。
分布と生育環境
日本では沖縄島以南の琉球列島、及び小笠原諸島に分布し、国外では台湾、中国南部から旧世界の熱帯域に広く分布する[5]。
下述のようによく栽培されるが、自生のものは海岸にある。果実が水に浮くため、海水に浮かんで漂流し[5]、潮流によって分散するものと考えられる。
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海岸のもの
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砂浜に転がる果実
分類
モモタマナ属には世界に250種ほどが知られる。日本には本種ともう1種、以下の種が知られる。
- Terminalia nitens Presl テリハモモタマナ
利用
水平に広がって出る枝先に束生する大きな葉が広がり、その下は気持ちの良い木陰となる。そのため日陰を作る街路樹として広く植栽される[6]。沖縄では古来より村落の集会所や墓地によく栽培された[7]。
材質として、辺材は淡黄色で、中心はより色濃くて暗褐色になる。材質は緻密で、工作は比較的容易である。建材や家具材、造船材に使われる[4]。南洋ではカヌーを作るのに用いる[5]。
果実からは油が取れる。仁を炒って食べるとラッカセイに似て美味である[4]。これを Country almond と呼ぶ[5]。小笠原諸島では、子供を中心に食べる文化がある。
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学校の前に植栽されている様子
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下から見上げた枝
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紅葉の様子
琉歌に以下のような本種を詠んだものがある[7]。
- こはでさの御月(おつき)まどまどど照ゆる よそめまどはかて忍いでいまうれ
- (こはでさ(本種)の木に照る月影は、枝葉の隙間から漏れてくる位で薄暗く、恋を語るに絶好の場所だから、よそ目にかからぬようこっそり忍んでおいで)
出典
- ^ 以下、記載は主として佐竹他(1989),p.106
- ^ 甲山(1997),p.126-127
- ^ ただし、彼も属名はモモタマナ属を採用している。
- ^ a b c d 天野(1982),p.106
- ^ a b c d 佐竹他(1989),p.106
- ^ 戸部(1997),p.189
- ^ a b 城間(1977)p.41
参考文献
- 佐竹義輔他編著、『日本の野生植物 木本 II』、(1989)、平凡社
- 戸部博、「モモタマナ」:『朝日百科 植物の世界 4』、(1997)、:p.188-189
- 天野鉄夫、『琉球列島有用樹木誌』、(1982)、琉球列島有湯樹木誌刊行会
- 城間朝教、『カラー百科シリーズ⑦ 沖縄の自然 植物誌』、(1977)、新星図書
- 甲山隆司、「樹形はどのようにしてできあがるか」:『朝日百科 植物の世界 7』、(1997)、:p.126-128
- モモタマナのページへのリンク