二個の平方数の和
(フェルマーの二平方和の定理 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/14 03:19 UTC 版)
二個の平方数の和(にこのへいほうすうのわ)は「平方数」、「多角数定理」などの補遺に当たる。ここに示す事実は古くから知られている[1]ものであるが呼びかたが定まっておらず、フェルマーの4n+1定理[2]、フェルマーの二平方定理、あるいは単にフェルマーの定理(フェルマーの最終定理とは異なる)などと呼ばれる。
定理 ― 奇素数 p が整数 x と y を用いて、
と表されるのは、
の時に限る。また、逆も成り立つ。そして、この分解は一意的である。
合成数が高々二個の平方数の和で表されるための必要十分条件は、4を法として3に合同な素因数が全て平方(冪指数が偶数)になっていることである。この定理は、フェルマーによって提起され、オイラーによって解決された。
具体的に4を法として1に合同な素数とは 5, 13, 17, 29, 37, 41, 53, 61, 73, 89, 97, 101, 109, (オンライン整数列大辞典の数列 A002144)
証明
素数についての証明
平方剰余の相互法則の補充法則により、であれば
となる自然数が存在する。とするとの組み合せの個数はである。従って、で
となるものが存在する。とすると
である。であるから
であり、故に
である。
合成数についての証明
であれば
であるから、十分条件については明らかである。必要条件についてはがの形の素因数を持つと仮定して矛盾を導く(背理法)。であれば
と書ける。ここでであれば必然的にであり、であるから両辺をで除するものとする。であればとなるが存在する。両辺にを乗すると
となる。しかし、これはがの平方剰余にならないという事実に反する。従って、の形の素因数を平方以外の形で持つ合成数が二個の平方数の和で表されることはない。
一文証明
ザギエ(Zagier)による一文証明(one-sentence proof)[3]は、一文で完結することもさりながら、平方剰余に関する知識を要求しないということも特筆に値する。
-
有限集合上の対合
-
は必ず一個の不動点を持つから、集合の元の個数は奇数であり、対合
- も不動点を持つ。
対合とはとなる写像のことである。 不動点とはとなる元のことであり、 必ず一個の不動点を持つというのはを意味している。 が素数であることを仮定して、 一文証明が主張する対合が実際に対合であること、そしての他に不動点が存在しないことの確認は読者に任せる。 唯一の不動点を除き集合の元は対合によって対になるから、元の個数は奇数である。 従って、対合によって対にならない元が存在する。 これはを意味し、ひいてはを意味する。
重みつき平方数の和
x2+2y2
の素数はで表される。合成数がで表されるための必要十分条件は、以外の素因数が全て平方になっていることである。この証明は以下に与えられる。
平方剰余の相互法則の第一補充法則と第二補充法則により、
であるから、であればとなる自然数が存在する。の場合の証明にならえば
となり、故に
となる。の場合は両辺を2で除して
となる。合成数についてはの場合の証明にならう。
x2+3y2
の素数はで表される。合成数がで表されるための必要十分条件は、以外の素因数が全て平方になっていることである。これはオイラーの6n+1定理[4]などと呼ばれる。この証明は以下によって与えられる。
平方剰余の相互法則と第一補充法則により、
であるから、であればとなる自然数が存在する。の場合の証明にならえば
となり、故に
となるが、法3で考えるとはありえない。の場合は両辺を3で除して
となる。合成数についてはの場合の証明に倣う。なお、であれば、は共に偶数か共に奇数であるが、奇数であればである。従って、素因数2の冪指数は偶数である。
ヤコビの二平方定理
自然数を高々二個の平方数の和で表す方法の数は、ヤコビの二平方定理
によって与えられる。ただし、シグマ記号は2で整除されないNの約数(1とNを含む)について和を取ることを表す。例えば、
であるが、実際に25を高々二個の平方数の和で表す方法は
であり、符号と順序を区別すれば12個になる。
二個の平方数の和で表される自然数の個数
二個の平方数の和で表される自然数の分布について、いくつかの結果が知られている。 エトムント・ランダウとシュリニヴァーサ・ラマヌジャンは独立に、 x 以下の自然数のうち二個の平方数の和で表される自然数の個数はある正の定数 c について漸近的に
となることを証明している。 c はランダウ・ラマヌジャンの定数と呼ばれ、およそ 0.76422365358922066299069873125 であることが知られている(オンライン整数列大辞典の数列 A064533)[5]。
関連項目
脚注
- ^ Wolfram MathWorld: Sum of Squares Function
- ^ Weisstein
- ^ Zagier, Don (February 1990). “A One-Sentence Proof That Every Prime 𝑝≡1 (mod4) Is a Sum of Two Squares” (pdf). The American Mathematical Monthly (英語). 97 (2): 144. doi:10.2307/2323918. JSTOR 2323918. 2023年12月30日閲覧.
{{cite journal2}}
: CS1メンテナンス: url-status (カテゴリ) Preprint Archived 2012年2月5日, at the Wayback Machine. - ^ Wolfram Mathworld: Euler's 6n+1 Theorem
- ^ たとえば Landau (1909), p. 641-- を参照
参考文献
- Conway, John Horton; Guy, Richard K. (1996), The Book of Numbers, New York: Copernicus, pp. 146-147, 220-223,
ISBN 978-0-387-97993-9
- J・H・コンウェイ、R・K・ガイ『数の本』根上生也 訳、丸善出版、2012年1月。 ISBN 978-4-621-06207-4。
- 高木貞治「§37.x2+y2の解」『初等整数論講義』(第2版)共立出版、1971年10月15日。 ISBN 4-320-01001-9。
- Hardy, G. H.; Wright, E. M. (2008) [1938], An Introduction to the Theory of Numbers, Revised by D. R. Heath-Brown and J. H. Silverman. Foreword by Andrew Wiles. (6th ed.), Oxford: Oxford University Press,
ISBN 978-0-19-921986-5, MR
2445243,
Zbl 1159.11001
- G.H.ハーディ、E.M.ライト「第19章 分割」『数論入門』 II、示野信一・矢神毅 訳、丸善出版〈シュプリンガー数学クラシックス9〉、2012年4月。 ISBN 978-4-621-06247-0。 - 注記:原著第5版の翻訳。
- Edmund Landau, (1909). Handbuch der Lehre von der Verteilung der Primzahlen vol. II,. B. G. Teubner
外部リンク
- 『フェルマーの二平方和定理』 - 高校数学の美しい物語
- Weisstein, Eric W. “Fermat's 4n+1 Theorem”. mathworld.wolfram.com (英語).
フェルマーの二平方和の定理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/16 01:27 UTC 版)
「平方剰余の相互法則」の記事における「フェルマーの二平方和の定理」の解説
詳細は「二個の平方数の和」を参照 4k + 1 型の素数は二個の平方数の和で表すことができる。また逆にある奇素数が二つの平方数の和で表すことができるならば、4k + 1 型の素数である。そして、二つの平方数の順序を別にすればこの分解は一意的である。 5 = 1 2 + 2 2 , 113 = 7 2 + 8 2 , 277 = 9 2 + 14 2 , 421 = 14 2 + 15 2 , 13 = 2 2 + 3 2 , 137 = 4 2 + 11 2 , 281 = 5 2 + 16 2 , 433 = 12 2 + 17 2 , 17 = 1 2 + 4 2 , 149 = 7 2 + 10 2 , 293 = 2 2 + 17 2 , 449 = 7 2 + 20 2 , 29 = 2 2 + 5 2 , 157 = 6 2 + 11 2 , 313 = 12 2 + 13 2 , 457 = 4 2 + 21 2 , 37 = 1 2 + 6 2 , 173 = 2 2 + 13 2 , 317 = 11 2 + 14 2 , 461 = 10 2 + 19 2 , 41 = 4 2 + 5 2 , 181 = 9 2 + 10 2 , 337 = 9 2 + 16 2 , 509 = 5 2 + 22 2 , 53 = 2 2 + 7 2 , 193 = 7 2 + 12 2 , 349 = 5 2 + 18 2 , 521 = 11 2 + 20 2 , 61 = 5 2 + 6 2 , 197 = 1 2 + 14 2 , 353 = 8 2 + 17 2 , 541 = 10 2 + 21 2 , 73 = 3 2 + 8 2 , 229 = 2 2 + 15 2 , 373 = 7 2 + 18 2 , 557 = 14 2 + 19 2 , 89 = 5 2 + 8 2 , 233 = 8 2 + 13 2 , 389 = 10 2 + 17 2 , 569 = 13 2 + 20 2 , 97 = 4 2 + 9 2 , 241 = 4 2 + 15 2 , 397 = 6 2 + 19 2 , 577 = 1 2 + 24 2 , 101 = 1 2 + 10 2 , 257 = 1 2 + 16 2 , 401 = 1 2 + 20 2 , 593 = 8 2 + 23 2 , 109 = 3 2 + 10 2 , 269 = 10 2 + 13 2 , 409 = 3 2 + 20 2 , 601 = 5 2 + 24 2 . {\displaystyle {\begin{aligned}5&=1^{2}+2^{2},&113&=7^{2}+8^{2},&277&=9^{2}+14^{2},&421&=14^{2}+15^{2},\\13&=2^{2}+3^{2},&137&=4^{2}+11^{2},&281&=5^{2}+16^{2},&433&=12^{2}+17^{2},\\17&=1^{2}+4^{2},&149&=7^{2}+10^{2},&293&=2^{2}+17^{2},&449&=7^{2}+20^{2},\\29&=2^{2}+5^{2},&157&=6^{2}+11^{2},&313&=12^{2}+13^{2},&457&=4^{2}+21^{2},\\37&=1^{2}+6^{2},&173&=2^{2}+13^{2},&317&=11^{2}+14^{2},&461&=10^{2}+19^{2},\\41&=4^{2}+5^{2},&181&=9^{2}+10^{2},&337&=9^{2}+16^{2},&509&=5^{2}+22^{2},\\53&=2^{2}+7^{2},&193&=7^{2}+12^{2},&349&=5^{2}+18^{2},&521&=11^{2}+20^{2},\\61&=5^{2}+6^{2},&197&=1^{2}+14^{2},&353&=8^{2}+17^{2},&541&=10^{2}+21^{2},\\73&=3^{2}+8^{2},&229&=2^{2}+15^{2},&373&=7^{2}+18^{2},&557&=14^{2}+19^{2},\\89&=5^{2}+8^{2},&233&=8^{2}+13^{2},&389&=10^{2}+17^{2},&569&=13^{2}+20^{2},\\97&=4^{2}+9^{2},&241&=4^{2}+15^{2},&397&=6^{2}+19^{2},&577&=1^{2}+24^{2},\\101&=1^{2}+10^{2},&257&=1^{2}+16^{2},&401&=1^{2}+20^{2},&593&=8^{2}+23^{2},\\109&=3^{2}+10^{2},&269&=10^{2}+13^{2},&409&=3^{2}+20^{2},&601&=5^{2}+24^{2}.\end{aligned}}} 証明は、ある素数 p に対して A2 + B2 = rp と表せたならば r より真に小さい r′ ≥ 1 を選んで A′2 + B′2 = r′p とできるアルゴリズムの存在を示すことで行うことができる。 4k + 1 型の素数は第1補充法則より、A2 + 12 = rp と表すことができるため、このアルゴリズムを適用すればいつかは r を 1 にすることができる。
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