フィロゲロス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/24 17:39 UTC 版)
『フィロゲロス』[1]または『ピロゲロース』[2](古希: Φιλόγελως)は、古代ギリシアの笑話集。古代末期の3世紀から5世紀ごろ成立[3][2]。
題名は「笑いを愛する人」を意味し、「知を愛する人」(フィロソフォス、哲学者)と同様の語構成である[3]。
内容
全265話からなり「うつけ者」「けちん坊」「ほら吹き」「機転ばなし」など20の類型に分類されている[5][2]。人物類型の多くはギリシア喜劇やテオフラストス『人さまざま』にも登場する[5]。
「愚者の街」として知られるアブデラ、シドン、キュメの話(愚か村話)が多い[5][2]。キリスト教の話もあるが、異教(古代ギリシアの宗教)の話のほうが多い[3]。性や排泄の話もあるが比較的少ない[5][2]。
『イソップ寓話集』『ギリシア詞華集』など他のギリシア文学、ラテン文学の笑話と似た話もある[6]。トルコの『ナスレッディン・ホジャ物語』、中国の『笑府』など、他地域の笑話と似た話もある[7]。
背景
作者はヒエロクレスとフィラグリオスの二人だが、この二人の素性は不詳である[8][3][2]。笑話の中には、3世紀のピリップス帝のローマ建国千年祭や、3~5世紀の文化の記述があるため、3~5世紀ごろ成立と考えられる[9]。『スーダ辞典』などの記述から、1世紀ごろのフィリスティオンが、原型となる笑話集を作ったとも考えられる[3]。
本作は近現代の西洋古典学ではマイナーな作品だが、ウラジーミル・プロップらの昔話研究(比較説話学)で着目されている[7]。
日本語訳
- 中務哲郎訳『フィロゲロス ギリシア笑話集』国文社〈叢書アレクサンドリア図書館〉、1995年。ISBN 9784772003995。
脚注
- ^ 中務 1995.
- ^ a b c d e f 松原國師『西洋古典学事典』京都大学学術出版会、2010年。 ISBN 9784876989256。1006頁。
- ^ a b c d e 中務 1995, p. 177-179.
- ^ 中務 1995, p. 9.
- ^ a b c d 中務 1995, p. 179-184.
- ^ 中務 1995, p. 178;184-187.
- ^ a b 中務 1995, p. 187f.
- ^ グレッグ・ジェンナー (2023年6月26日). “なぜ「世界最古のジョーク」を誰も知らないのか…現代人にはほぼ理解不能なジョークの笑い所とは ジョークにも「賞味期限」が存在する (4ページ目)”. PRESIDENT Online(プレジデントオンライン). 2025年5月22日閲覧。
- ^ 中務 1995, p. 177f.
- フィロゲロスのページへのリンク