ピケティ『21世紀の資本』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/31 04:38 UTC 版)
「経済成長の黄金律」の記事における「ピケティ『21世紀の資本』」の解説
トマ・ピケティは、2013年にフランス語で著し2014年に日本語に翻訳された『21世紀の資本』で、黄金律について次のような自説を展開している。およそ黄金律に対して否定的である。 歴史データをみると資本収益率が成長率よりずっと高いので、現実の資本は黄金律よりずっと少ない。現実経済が黄金律ほどの資本を蓄積するとは考えにくい。黄金律は抽象理論にすぎず実際問題であまり役に立たない。 黄金律において、資本を所有する不労所得生活者は、資本の収益の全てを再投資しないと自分の地位を保てないので、何も消費できない。したがって黄金律の実現は不労所得生活者の支配を終わらせる。しかし黄金律を無理に実現する必要はなく、そうするよりも不労所得生活者に課税するほうがずっと簡単で効果的だ。 黄金律は資本の上限を設定するだけのものであって、黄金律に到達するのが望ましいという主張を導き出すものではない。目先の消費を犠牲にしてまで先ゆきの黄金律をめざすのが適切とは限らない。 なお、以上のような議論でピケティは均斉成長を基準に考えている。均斉成長では資本と生産が同じ伸び率で成長することが知られる(宇沢の定理)。一方、ピケティは『21世紀の資本』の「おわりに」で資本が生産より速く急成長すると主張している。グレゴリー・マンキューはこれを批判して、ピケティのいうような成長は均斉成長から外れてゆくが、標準的な成長理論は均斉成長を基準にして考えるので、ピケティの考えは標準的理論から外れていると指摘した。
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