バージョン1から存在する物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/13 14:19 UTC 版)
「Unlambda」の記事における「バージョン1から存在する物」の解説
「.H」や「.e」などの、「.A」で表されるものは恒等関数 (引数として与えられた値を全く変更せずにそのまま返す関数) で、副作用として「A」を表示するものである。「i」は副作用を伴わない恒等関数である。上述の Hello world プログラムではダミーの引数として使われている。「`.di」というプログラムは、文字「d」を表示する関数(「.d」)に引数iを適用して呼び出すもので、戻り値(評価結果)として関数「i」を返し、副作用として文字「d」を表示する。同様に、「``.l.di」というプログラムでは、まず、関数「 .l」に引数として「.d」が適用され、文字「l」が表示されて、戻り値として関数「.d」を返す。そして次に、この戻り値「.d」に対して、引数として関数「i」が適用され、前述の通りの動作が続く。関数「r」は改行文字を表示する関数の糖衣構文である。 Unlambda言語のその他の重要な特徴として、「kA演算子」と「s演算子」がある。kA演算子は、引数の値に関係なく戻り値として A を返す演算子である。つまり、「``kAB」の戻り値は、 B の値に関係なく、いつも A である。 「s」は汎用の評価演算子である。「```sABC」というプログラムは、A、B、Cの値に関係なく、「``AC`BC」と評価される。この「s」と「k」だけでいかなる計算も行えるという事実は、注目すべき点である。例えば、恒等関数「i」は「``skk」によって実現することができる。なぜなら、「```skkA」は、いかなる A に対しても A を返すからである。 Unlambda言語の唯一のフロー制御機構は「c」演算子によって提供される「現在の継続を伴う呼び出し」(call with current continuation) である。「`cA」というコードが評価されると、その瞬間の処理系の状態を表す「継続」と呼ばれる特殊なオブジェクトが生成される。続いて「A」の部分が評価され、その評価結果に対して、先の継続オブジェクトが引数として渡される。もしも、その継続が引数として渡されることがなければ、コード「`cA」の評価値は「A」の評価値と同じになる。しかし、その継続オブジェクトが「B」に渡されたなら、「A」の実行はすぐに中断され、コード「`cA」の全体としての評価は「y」になる。 Unlambda言語の既定の評価戦略は先行評価であるが、d演算子をつかえば遅延評価をさせることもできる。原則としては「`AB」というコードは、まず A そして B を評価し、それから、A に対して B を適用する。しかしながら、もし A が特殊な値「d」を評価するなら、B が評価される代わりに、「`dB」が「遅延演算」という特殊なオブジェクトになる。その遅延演算オブジェクトに引数 C が適用された時に初めて B が評価される。それ自身に副作用がないという点で、`d演算子と`i演算子は等価であるといえる。ただし、「`dB」では後に何かの引数が適用された場合に B の副作用が発生するが、「`iB」では B を評価する時点で副作用が発生するという点で異なる。 Unlambda言語には「v」という組込演算子もある。これは引数を無視してvを返すものである。厳密にいうと、この演算子は必要不可欠というわけではない。というのは、v演算子は「```s``s`kskk``s``s`kskk」として実現することができるからである。つまり、この演算子は利便性のために用意されているものである。(このコードは、不動点演算子 Yを使って、さらに簡単に「`Yk」と表現することもできる。)
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