バレーメトロレールとは? わかりやすく解説

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バレーメトロレール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/26 06:45 UTC 版)

バレーメトロレール
主力車両の近畿車輛製電車(2008年撮影)
基本情報
 アメリカ合衆国
アリゾナ州マリコパ郡
所在地 フェニックステンピメサ
種類 ライトレール
路線網 2系統(2025年現在)[1][2]
駅数 50箇所(2025年現在)[3][4][5][2]
開業 2008年[3]
最終延伸 2025年[1]
運営者 バレーメトロ英語版[3]
路線諸元
路線距離 約62 km(38.5 miles)(2025年現在)[3][1]
軌間 1,435 mm[6]
電化方式 直流750 V
架空電車線方式[6]
路線図(2025年時点)
テンプレートを表示

バレーメトロレール英語: Valley Metro Rail)は、アメリカ合衆国アリゾナ州マリコパ郡にあるライトレール2008年に最初の路線が営業運転を開始しており、州都のフェニックステンピメサといったフェニックス都市圏の各地域を結んでいる。運営はフェニックス都市圏の路面電車路線(テンピ・ストリートカー)や路線バスなどと共にバレーメトロ英語版によって行われている[4][1]

歴史

アメリカの都市・フェニックスにはかつて1887年に開通した路面電車英語版が存在したが、モータリーゼーションの進展により路線バスへ置き換えられ1948年までに廃止された。その後、フェニックスや周辺都市では高速道路を中心とした自動車中心の交通網の整備が試みられていたが住民からの反対もあり大半は実現せず、1990年代に入ると公共交通機関路線バス)の整備が各地で行われるようになった。そして、2000年に市民団体とフェニックス市によって作成された、増税される消費税を財源とした公共交通網の拡張計画「提案2000(Proposition 2000)」の中に、フェニックス市内を走行するライトレールを建設する計画が含まれた。この提案は住民投票の結果賛成65 %で可決され、同年に近隣のテンピ市議会もライトレールの建設を決議した。そして、最初の路線となるフェニックスとテンピ市内を結ぶ全長32.2 km(20 miles)の建設は2006年まで実施され、試運転を経て2008年12月27日に最初の路線が営業運転を開始した[3][7][8][9]

その後、2015年メサのダウンタウン地区の延伸(Central Mesa Extension)が行われ、2019年には更にギルバート・ロード(Gilbert Road)への延伸が実施された[注釈 1]。また、フェニックス北西部についても2013年に延伸工事が開始され、2016年19番街/ダンラップ駅英語版(19th Ave / Dunlap)までの区間が開通した他、既存の区間にも新たな電停が増設された(50番通り/ワシントン駅英語版、50th Street/Washington)。続いて2024年1月27日には19番街/ダンラップ駅から更に北西部へと路線を延長し、かつてショッピングモールが存在した地点に設置されるセルダ・ウィリアムス・トランジットセンター英語版(Thelda Williams Transit Center)まで向かう、2つの途中駅を含む全長2.57 km(1.6 mile)の区間が営業運転を開始した[注釈 2][10][11][12]

一方、フェニックス中心部から分岐し、中央街(Central Avenue)を南へ進む全長5.5 miles(8.85 km)の路線の建設も進められ、2025年6月7日から営業運転を開始した。これに伴い、それまで「ジェファーソン/1番街駅(Jefferson/1st Avenue)」と「ワシントン/中央街駅(Washington/Central Avenue)」に分かれていたダウンタウン中央部の駅がホームの増設と共に統合され、拠点駅「ダウンタウン・フェニックス・ハブ英語版」となっている他、運行形態も再編され、東西を結ぶ「Aライン英語版(A Line)」と延伸区間を含めた南北を結ぶ「Bライン英語版(B Line)」の2系統で運行されるようになっている[1][13]

路線

2025年現在、バレーメトロは以下の区間でライトレールの運行を行っている。大半の路線は複線だが、フェニックス市内の一部区間では線路が独立して敷設されており、駅も双方の方面で離れた位置に設置され、名称も異なっている。ただしこれらの近接した2つの駅をそれぞれ1つとして数えているため、バレーメトロのライトレールの駅数は公式では50箇所となっている。運行間隔は最短12分(平日:19時まで)、最長20分(平日・土曜日:19時以降、日曜日:全日)となっている[3][4][5][2]

系統名 経由区間 備考・参考
Aライン英語版 Downtown Phoenix Hub - 44th St/Washington - Mill Ave/3rd St - Dorsey/Apache Blvd - Gillbert Rd/Main St
Bライン英語版 Metro Parkway - 19th Ave/Dunlap - Downtown Phoenix Hub - Baseline / Central Ave

車両

2023年現在、バレーメトロレールでは以下の2種類の電車が営業運転に用いられている。双方とも連結運転に対応した3車体連接車で、バリアフリーに適した部分超低床電車となっている[3][14]

  • 近畿車輛製電車 - 開通時に導入された、日本近畿車輛が開発した車両。合計50両(101 - 150)が在籍する[15]
  • S700 - シーメンスがアメリカ合衆国向けに展開する部分超低床電車。バレーライトレールの需要増加や今後の延伸に伴う輸送力増強を目的に2022年から営業運転に用いられており、2023年時点で25両(201 - 225)が在籍している他、契約には53両分のオプションが含まれている[16][17][18]

今後の予定

2007年時点のライトレールおよびストリートカーの建設計画

前述の通りバレーメトロレールでは2025年現在も西部への延伸区間(Capitol Extension Project)を始めとした複数の延伸計画が進められており、2034年までにライトレールと接続する路面電車路線(ストリートカー)を含め合計106.22 km(66 miles)の路線網が構築される事になっている[3][6][19][20][21][22]

脚注

注釈

  1. ^ 計画当初は2018年の開通を予定していた。
  2. ^ 計画当初は2026年の開通が検討されていた。
  3. ^ フェニックス・スカイハーバー国際空港へ接続。

出典

  1. ^ a b c d e Phoenix launches second light rail line”. mainspring (2025年6月16日). 2025年6月26日閲覧。
  2. ^ a b c Two-Line Light Rail System Information”. Valley Metro. 2025年6月26日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h Rail System Fact Sheet”. Valley Metro. 2023年7月14日閲覧。
  4. ^ a b c Maps & Schedules”. Valley Metro. 2023年7月14日閲覧。
  5. ^ a b Valley Metro Rail”. Valley Metro. 2020年10月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月14日閲覧。
  6. ^ a b c Coming of the Tempe Streetcar”. LRTA (2022年4月29日). 2023年7月14日閲覧。
  7. ^ Jane Eppinga (2015年1月30日). “Phoenix’s First Light Rail System”. Arizona Capitol Times. 2023年7月14日閲覧。
  8. ^ A Brief History Of Transportation Elections in the Valley of the Sun (1960-2000)”. Arizona Rail Passenger Association. 2007年8月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月14日閲覧。
  9. ^ Patrick Thomas McDaniel; Denise Keele (2019). “Light Rail in Phoenix, Arizona: Increasing Economic, Environmental, and Social Sustainability”. Journak of Environmental Sustainability 7 (1). https://scholarworks.rit.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1074&context=jes 2023年7月14日閲覧。. 
  10. ^ Northwest Extension Phase II”. Valley Metro. 2025年6月26日閲覧。
  11. ^ Northwest Phoenix light rail extension opens Jan. 27, 2024”. Valley Metro (2023年12月21日). 2024年1月16日閲覧。
  12. ^ Phoenix Names Transit Center for Former Councilmember Thelda Williams”. City of Phoenix (2023年5月3日). 2024年1月16日閲覧。
  13. ^ South Central Extension/Downtown Hub”. Valley Metro. 2025年6月26日閲覧。
  14. ^ Keith Barrow (2016年1月13日). “Phoenix Valley Metro launches LRV tender”. International Railway Journal. 2023年7月14日閲覧。
  15. ^ Phoenix, AZ - Valley Metro Rail Technical Data”. Kinki Sharyo. 2023年7月14日閲覧。
  16. ^ PHOENIX, ARIZONA S700 Low-Floor Light Rail Vehicle”. Siemens. 2023年7月14日閲覧。
  17. ^ Jörg Martini (2020年10月13日). “Another 14 Light Rail Vehicles for Phoenix”. Urban Transport Magazine. 2023年7月14日閲覧。
  18. ^ Valley Metro contracts with Siemens, Brookville for new rail fleet”. Progresive Railroading (2017年5月19日). 2023年7月14日閲覧。
  19. ^ Projects & Planning”. Valley Metro. 2023年7月14日閲覧。
  20. ^ Garrett Mitchell (2015年8月22日). “Mesa light rail expansion debuts to thousands of riders”. azcentral.com. 2023年7月14日閲覧。
  21. ^ Brenna Goth (2015年12月10日). “Northwest Phoenix light-rail extension to open in March”. azcentral.com. 2023年7月14日閲覧。
  22. ^ Northwest Extension Marks Arrival of Trains”. Valley Metro (2015年12月7日). 2016年4月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月14日閲覧。

外部リンク




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