NWOBHM
(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/01 04:37 UTC 版)
NWOBHM(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル、New Wave Of British Heavy Metal)は、1970年代後半のイギリスで勃発した音楽ムーブメントのことである。"N.W.O.B.H.M."と表記されることもある。アイアン・メイデン、デフ・レパード、サクソン、サムソン、タイガース・オブ・パンタン、プレイング・マンティスらが、NWOBHMの代表的なバンドとされている。
概要・歴史
1970年代後半のイギリスは、保守党・労働党のお粗末な政策と、石油ショック後の大不況の影響で、国民は厳しい生活状況に追い込まれていた。[1]1979年夏、イギリスでDJニール・ケイ主催のヘヴィ・メタル・ディスコ「Bandwagon」で、無名バンドによるライブイベント「Heavy Metal Nite」が開かれた。ローカル・バンドの自主製作盤の紹介も行っていた雑誌「Sounds」誌には、「Bandwagon」で紹介されたバンドのBest10を発表するコラムがあった。このコラムで注目されたアイアン・メイデン、サムソン、エンジェル・ウィッチによってツアーが実施されたことが、パンクに対抗するハード・ロック/ヘヴィ・メタル(以降 HR/HM と表記)バンドが登場する契機となった。
NWOBHMの由来は「Sounds」誌で、ジェフ・バートンの書いた記事による。1970年代後期のHR/HMは、パンク以降に登場したニュー・ウェイヴを支持する人間が過去のロックを「オールド・ウェイヴ」と呼ぶ事に対しあえて「"New Wave"」、ブリティッシュ・ロック低迷からの復権を願って"British"、ハード・ロックを継承しながらも新しい時代を切り開く意味で"Heavy Metal"を合わせて名付けられた。 パンク、ニュー・ウェイヴが過去の音楽を否定する事を始まりとするのに対し、NWOBHMは伝統を継承するとの主張が込められている。
詳細
女性学者のディーナ・ワインステインによれば、ヘビーメタル・バンドやメタル・ファンの音楽、哲学、ライフスタイルは、左翼の批評家や、保守・右派的な世論の両方からしばしば非難されたという。[2]1979年5月にEMIからデビューアルバムを発表したサクソン、同年8月にフォノグラムと契約したデフ・レパード、同年12月にEMIと契約したアイアン・メイデンが代表的なバンドとして挙げられるが、実際には1980年代前半までに乱立したインディーズ・レーベルや自費出版による流通で発表を行った多数のバンドがNWOBHMの中核であった。1980年代前半までに7インチ・レコードを発表したバンドだけがNWOBHMと呼ばれるとする見方もある。なお、レインボー[3]、ジューダス・プリースト[4]、UFO、シン・リジィ[5]、ディープ・パープル[6]、レッド・ツェッペリン[7]、ブラック・サバス[8]、マイケル・シェンカー・グループなどのバンドは、NWOBHMには含まれない。
このムーブメントの影響は、1980年8月16日にイギリス・ドニントンで第1回のモンスターズ・オブ・ロックが開催され、HR/HM系バンドのみのロック・フェスティバルとしてレインボー、ジューダス・プリースト、スコーピオンズ、サクソン、エイプリル・ワイン、タッチ、ライオットが出演している。伝統的なレディング・フェスティバルでは、パンク、ニュー・ウェイヴ系から、HR/HM系のバンドが主な出演となり、1980年にはバッジー、ホワイトスネイクなどが、1981年にはスコーピオンズ、UFOなどが、1982年にはダイアモンド・ヘッド、マイケル・シェンカー・グループなどが出演している。また、イギリス以外の国(特にアメリカや日本における)でのヘヴィメタルの隆盛にもつながっている。ヒット曲「ラブ・バイツ」や「シュガー・オン・ミー」で、全米チャートでも成功を収めたデフ・レパード[9]は「自分たちはヘヴィメタルバンドではなく、ハードロックバンドである。」と、NWOBHMとは関係がないとしている。
NWOBHMの代表的なバンド一覧
- アイアン・メイデン(IRON MAIDEN)
- ウィッチファインダー・ジェネラル(WITCHFINDER GENERAL)
- ウィッチファインド(WITCHFYNDE)
- ウルフ(WOLF)
- エンジェル・ウィッチ(ANGEL WITCH)
- ガスキン(GASKIN)
- ガール(GIRL)
- ガールスクール(GIRLSCHOOL)
- クオーツ(QUARTZ)
- グランプリ(Grand Prix)
- グリム・リーパー(GRIM REAPER)
- サクソン(SAXON)
- サムソン(SAMSON)
- ジャガー(JAGUAR)
- スイート・サヴェージ(SWEET SAVAGE)
- セイタン(SATAN)
- ダーク・スター(DARK STAR)
- タイガース・オブ・パンタン(TYGERS OF PAN TANG)
- タイタン(TYTAN)
- ダイアモンド・ヘッド(DIAMOND HEAD)
- タンク(TANK)
- ディーモン(DEMON)
- デフ・レパード(DEF LEPPARD)
- トーキョー・ブレイド(TOKYO BLADE)
- トレスパス(TRESPASS)
- ファストウェイ(FASTWAY)
- フィスト(FIST)
- ブラック・ローズ(BLACK ROSE)
- ブリッツクリーグ(BLITZKRIEG)
- プレイング・マンティス(PRAYNG MANTIS)
- ヴァーディス(VARDIS)
- ヴェノム(VENOM)
- ホワイト・スピリット(WHITE SPIRIT)
- ママズ・ボーイズ(MAMA'S BOYS)北アイルランド
- モーターヘッド(Motörhead)
- レイヴン(RAVEN)
- ワイルド・ホーシズ(WILD HORSES)
脚注
- ^ Britain Worse off 1970s foreignpolicy.com 2025年3月17日閲覧
- ^ Weinstein 2000 p.237-p.239
- ^ 「キル・ザ・キング」「マン・オン・ザ・シルバー・マウンテン」などの代表曲を持つ
- ^ 代表曲に「ロッカ・ローラ」がある
- ^ 1976年のシングル「ボーイズ・アー・バック・イン・タウン」は全米チャートでもヒットしている
- ^ 「ハイウェイ・スター」「紫の炎」などがヒットしたハード・ロックの有名バンド
- ^ 「ロックンロール」「ブラック・ドッグ」などの代表曲を持つ、ヘビーメタルの著名グループ
- ^ 「パラノイド」「血まみれの安息日」などが有名。
- ^ ビルボード年間トップ100 p.253 音楽之友社
洋書
- Bushell, Garry; Halfin, Ross (1984). Iron Maiden – Running Free. London, UK: Zomba Books. ISBN 978-0-946-391509
- Christe, Ian (2004). Sound of the Beast: The Complete Headbanging History of Heavy Metal. New York City: HarperCollins. ISBN 978-0-380-81127-4
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