チェリー=ガラードの1トン・デポへの旅
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「テラノバ遠征」の記事における「チェリー=ガラードの1トン・デポへの旅」の解説
アトキンソンはバリアを数マイル出たところでエバンス大尉を引き取り、基地に戻ったので、スコットに会うための旅を中止した。アトキンソンは医師としてエバンスを見るためにベースキャンプに残る必要があった。その代りにまず熟練したナビゲーターであるライトをスコットと落ち合うために南に行かせようとしたが、気象学者主任のシンプソンが、ライトは科学的作業に必要であると宣言した。アトキンソンは続いて近視のチェリー=ガラードを送った。チェリー=ガラードはナビゲートができず、エレバス山から見える範囲にある南緯79度30分の1トン・デポを再補給しただけだった。事実上南緯82度あるいは82度30分で落ち合うというスコットの命令には合わせられなかった。チェリー=ガラードは犬の御者であるディミトリが付いてきているはずだった。アトキンソンはこの時まだ南極点行隊の安全を疑っていなかった。南極台地でエバンスの傍に最後にスコットを見たときは、良好に旅を続けており、スケジュールに合っていた。アトキンソンがチェリー=ガラードに口頭で伝えた運命の命令は、「できるだけ早く1トン・デポまで行き食料を置いて来ること。スコットがまだ着いていなければ、何をすべきか自分で判断する」であり、「翌シーズンの犬ぞり計画のため、犬はリスクを冒せられないことを覚えておくこと」だった。この命令は記憶に頼って、後で記録されたものだった。 チェリー=ガラードはディミトリと犬の2つのチームと共に、2月26日にハットポイントを出発し、1トン・デポには3月4日に到着し、追加分の食料を置いた。スコットはそこにいなかった。物資は自分たちの犬達のために24日分であり、ハットポイントに戻る前に8日間待った。待つ代わりに南に移動するという選択肢もあったが、補給所に犬の餌がないので、連れて行けば犬を殺すことを意味していた。そうすれば、アトキンソンの「犬にリスクを冒させない」という命令に違背することになった。チェリー=ガラードはスコットを待つことにした。3月10日、天候が悪くなる中で、チェリー=ガラードの物資も少なくなっていたが、スコット隊が僅か70マイル (110 km) 足らず先で奮闘していたことを知る由もなく、基地に戻ることにした。アトキンソンは最初はライトに仕事を頼んだが、後に、「私は遠征隊の他の士官がそれ以上できなかったことに満足している」と記した。チェリー=ガラードはその後の人生で、違う行動を取っていれば南極点行隊を救えたかもしれないという考えに悩まされた。
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