チェイン写像とテンソル積
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/07 04:41 UTC 版)
チェイン写像(鎖写像)と呼ばれる、鎖複体の間の自然な射の概念がある。2つの複体 M* と N* が与えられると、2つの複体の間のチェイン写像は、Mi から Ni への準同型の列であって、M と N のバウンダリ写像に関する図式全体が可換となるものである。チェイン複体とチェイン写像は圏をなす。 V = V* と W = W* を鎖複体とすると、それらのテンソル積 V ⊗ W {\displaystyle V\otimes W} は、次数 i の元たちが ( V ⊗ W ) i = ⨁ { j , k | j + k = i } V j ⊗ W k {\displaystyle (V\otimes W)_{i}=\bigoplus _{\{j,k|j+k=i\}}V_{j}\otimes W_{k}} で与えられ、微分が ∂ ( a ⊗ b ) = ∂ a ⊗ b + ( − 1 ) | a | a ⊗ ∂ b {\displaystyle \partial (a\otimes b)=\partial a\otimes b+(-1)^{|a|}a\otimes \partial b} で与えられる鎖複体である。ここに、a と b はそれぞれ V と W の任意の斉次ベクトルであり、 | a | {\displaystyle |a|} は a の次数を表す。 このテンソル積により、(任意の可換環 K に対し)K-加群の鎖複体の圏 Ch K {\displaystyle {\text{Ch}}_{K}} は対称モノイダル圏(英語版)となる。このモノイダル積についての単位対象は、次数 0 の鎖複体と見た基礎環 K である。ブレイディング(英語版)は、斉次元の単純なテンソル上 a ⊗ b ↦ ( − 1 ) | a | | b | b ⊗ a {\displaystyle a\otimes b\mapsto (-1)^{|a||b|}b\otimes a} により与えられる。符号はブレイディングがチェイン写像となるために必要である。さらに、K-加群の鎖複体の圏は、内部Homも持つ。鎖複体 V と W が与えられると、V と W の内部Hom, hom(V,W) は、次数 n の元が Π i Hom K ( V i , W i + n ) {\displaystyle \Pi _{i}\operatorname {Hom} _{K}(V_{i},W_{i+n})} により与えられ、微分が ( ∂ f ) ( v ) = ∂ ( f ( v ) ) − ( − 1 ) | f | f ( ∂ ( v ) ) {\displaystyle (\partial f)(v)=\partial (f(v))-(-1)^{|f|}f(\partial (v))} により与えられる鎖複体である。すると、自然な同型 Hom ( A ⊗ B , C ) ≅ Hom ( A , Hom ( B , C ) ) {\displaystyle {\text{Hom}}(A\otimes B,C)\cong {\text{Hom}}(A,{\text{Hom}}(B,C))} がある。
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