ゼタ=南サンジャク方言
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 03:28 UTC 版)
「シュト方言」の記事における「ゼタ=南サンジャク方言」の解説
ゼタ=南サンジャク方言は古イェ方言とも呼ばれる。この方言はモンテネグロ東部、ポドゴリツァやツェティニェ、セルビア領サンジャク地方東部のノヴィ・パザル(Novi Pazar)、イストリア半島のペロイ(Peroj)にも見られる。主流のイェ方言の発音に加えて、イェ方言=エ方言混交(djete-deteta)がノヴィ・パザルやビイェロ・ポリェ(Bijelo Polje)で、イ方言=イェ方言混交(dite-đeteta)がポドゴリツァで、エ方言=イェ方言混交(dete-đeteta)がモンテネグロ南部の村ムルコイェヴィチ(Mrkojevići)で見られる。ムルコイェヴィチではまた、ポドラヴィナの村々と同様に「cr」に代わって「čr」が維持されている特徴も見られる。 幾らかの方言では古語の「ь/ъ」が非常に広い/ɛ/または/æ/になっているケースも見られ、これらはほかのシュト方言およびチャ方言では非常に珍しい(たとえば、san や danに代わってsæn や dæn)が見られる。その他の特殊な音韻的特長としては、[ʑ]の音(「izjesti」に代わって「iʑesti」)や、[ɕ]の音(sjekiraに代わってɕekira)の存在がある。しかし、これらの音素はまた東ヘルツェゴビナのコナヴレ(Konavle)にも見られ、モンテネグロだけに特徴的なものではない。/ʎ/と/l/の区別が幾らかの方言では失われており、これはアルバニア語基層の影響である。「pjesma」を「pljesma」とするのは、標準形のljが多くの方言でのjに変化していることによる過剰修正(Hypercorrection)である。 全ての動詞は不定形が「t」で終わる(pjevat「歌う」など)。この特徴も、ほぼ全ての東ヘルツェゴビナ方言にもあてはまる。そしてほとんどのセルビア語およびクロアチア語の方言にも共通している。 「a + o」の組は「ā」/aː/となる(「kao」に代わって「kā」、「rekao」に代わって「rekā」となる)。これはクロアチア語の沿岸部の方言と共通である。その他の地方では、「ao」が「ō」になるほうが一般的である。 モンテネグロの民族主義者の間では、セルビア語から切り離して、ゼタ方言を基盤とした「モンテネグロ語」の地位を確立しようとする運動がある。モンテネグロでは2007年より憲法でモンテネグロ語が第一公用語とされた。
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