ジョルジュ・ローデンバックとは? わかりやすく解説

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ロダンバック【Georges Rodenbach】


ジョルジュ・ローデンバック

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/26 12:58 UTC 版)

ジョルジュ・ローデンバック
生誕 1855年7月16日
ベルギートゥルネー
死没 1898年12月25日
フランスパリ
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ジョルジュ・ローデンバック(Georges Rodenbach、1855年7月16日 - 1898年12月25日)は19世紀末のベルギー詩人小説家。日本語表記はロデンバック、ロダンバックとも。

その代表作に「死都ブリュージュ」があり、日本ではフランス文学研究者の村松定史が現代和訳、ローデンバック研究の第一人者。

略歴

1855年7月16日、ベルギートゥルネーの名家に生まれた。誕生後すぐに家族に連れられゲントに移り住む。ここで学業を修め、サント・バルブ校に通学し、生涯の友ヴェルハーレンと出会う。その後、ゲント大学に入学して法律を学び、1879年、法学博士となる。翌年、修学のためパリに赴くが、劇場や芸術家の集まりに多く出入りし、ユゴーバンヴィルらと知り合う。[1]シャルル・ボードレールの『悪の華』に衝撃を受け、デカダン派や象徴派の詩人たちと交遊するようになる。ポール・ヴェルレーヌステファヌ・マラルメとも面識を得る。

帰国後、ゲントで弁護士生活に入るが、1883年にブリュッセルに移り、文芸誌『若きベルギー』に集う若者たちのリーダーとなる。1886年には弁護士を辞めて創作一筋の生活を始める。

  • 1877年、処女詩集『炉辺と野外』。
  • 1879年、名品「小箱」を含む詩集『悲しみ』。
  • 1881年、『優美な海』。(『悲しみ』および『優美な海』は、凡庸な出来として後に詩人は否認。)
  • 1884年、詩集『社交界の冬』。
  • 1885年、ブリュッセルで弁護士を開業。同時期にマックス・ワーラー主宰の「若きベルギー」誌に詩作を発表。
  • 1886年、この頃の詩人の個性がはっきりと表れている詩集に『白い青春』がある。
  • 1887年、パリに移住。ここで多くの文学者と交わりを持ち、「ジュルナール」誌に発表の場を与えてくれたゴンクール兄弟の《屋根裏サロン》の一員となり、アルフォンス・ドーデらと知己を得る。また、ステファヌ・マラルメの《火曜会》の常連ともなる。
  • 1888年、詩篇『静寂』。マラルメが初めてローデンバックに出した手紙(1888年3月25日付、パリ)は、この詩集への礼状であり、そこには「ものの意味形成性」を詩に読む共通の観点が述べられ、「最も純粋で奇跡的な」詩篇のひとつという賛辞が見える。この年の8月11日に、5歳年下のアンナ=マリア・ユルバンと結婚。ブルターニュへ新婚の旅。
  • 1889年、最初の長編小説『配所(流浪)の芸術』を発表。
  • 1891年、詩集『静寂の国』(詩篇『静寂』を含む詩集。)
  • 1892年、息子コンスタン誕生。「ル・フィガロ」誌の2月4日〜14日に連載した小説『死都ブリュージュ』が、写真挿画入りで刊行される。
  • 1893年、詩集『眼の中の旅』。
  • 1894年、コメディ・フランセーズで、1幕韻文劇『ヴェール』が上演され、高い評価を受ける。小説『ベギン会修道女の美術館』。
  • 1895年、『召命』。一時健康を害し、ノイローゼを患う。
  • 1896年、散文『墳墓』、詩集『閉ざされた生活』。
  • 1897年、長編小説『カリヨン(楽鐘)奏者』を刊行。
  • 1898年、自由詩型の詩集『故里の空の鏡』。クリスマスの宵、盲腸炎で急逝。享年43歳。詩人マラルメや画家ギュスタヴ・モローピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌも同じ年に他界している。
  • 1899年、小説『木』。
  • 1899年、評論『エリート』。
  • 1901年、短編小説集『霧の紡車』。
  • 1924年、随想『招魂集』。

日本に於けるローデンバックの移入は、永井荷風北原白秋西条八十らがローデンバックを愛読し下記に訳がある。

  • 上田敏訳(『海潮音』本郷書院 明治38年)「黄昏」1 Ⅱ
  • 大木篤夫訳(『近代佛蘭西詩集』 アルス 昭和3年)「田舎の町に」1ⅩⅩⅣ
  • 矢野峰人訳(『志るゑつと』 東京学藝社 昭和8年)「鏡」1Ⅴ
  • 内藤濯訳(『形影集』 白水社 昭和28年)「悲しさや」1ⅤⅣ、「月光」1ⅩⅥ、「室には光うすれしを」1Ⅳ[抄訳]、「野の里の……」1ⅩⅩⅣ
  • 小浜俊郎訳(『詞華集』 国書刊行会 昭和60年)「田舎では……」1ⅩⅩⅣ

永井荷風は1911年(明治44年)の長崎旅行記『海洋の旅』で、うらびれた島原の旅館に滞在して「そして悲しいロオダンバックのように唯だ余念もなく、書斎の家具と、寺院の鐘と、尼と水鳥と、廃市を流るる堀割の水とばかりを歌い得るようになりたい」と記している。

ブリュージュに似て堀割の多い水都・柳川で育った北原白秋は「かはたれのロオデンバッハ芥子の花ほのかに過ぎし夏はなつかし」と詠んでいる。

作品一覧

  • Œuvre poétique 2 vol., Archives Karéline, 2008
  • Le Foyer et les Champs, 1877, poésies
  • Les Tristesses, 1879, poésies
  • La Belgique 1830-1880, 1880, poème historique
  • La Mer élégante, 1881, poésies
  • L'hiver mondain, éditions Henry Kistemaeckers, Bruxelles, 1884
  • Vers d'amour, 1884
  • La Jeunesse blanche, 1886, poésies
  • Du Silence, 1888
  • L'Art en exil, 1889
  • Bruges-la-Morte, 1892, roman
  • Le Voyage dans les yeux, 1893
  • Le Voile, drame, joué à la Comédie-Française le 21 mai 1894
  • L'Agonie du soleil, 1894
  • Musée de béguines, 1894
  • Le Tombeau de Baudelaire, 1894
  • La Vocation, 1895
  • À propos de "Manette Salomon". L'Œuvre des Goncourt, 1896
  • Les Tombeaux, 1896
  • Les Vierges, 1896
  • Les Vies encloses, 1896, poème
  • Le Carillonneur, 1897, roman
  • Agonies de villes, 1897
  • Le Miroir du ciel natal, 1898

死後出版作品

  • Le Mirage, adaptation théâtrale de son roman Bruges-la-Morte, 1900
  • Évocations, notice de Pierre Maes, La Renaissance du Livre, in-18°, 320 p., 1924

翻訳作品

脚注

  1. ^ 木村尚三郎「(書評)ジョルジュ・デュビー著篠田勝英著訳「中世の結婚―騎士・女性・司祭―」」『法制史研究』第1986巻第36号、1986年、417–419頁、doi:10.5955/jalha.1986.417ISSN 1883-5562 

関連書籍

  • 村松定史「日本におけるジョルジュ・ローデンバック」芸林書房、1998年、ISBN 978-4768156209
  • 三田 順「ベルギー象徴派における文学と美術の照応--ジョルジュ・ローデンバックとグザヴィエ・メルリの比較研究」、2008年
  • 村松定史「ジョルジュ・ローデンバック研究 」弘学社、2014年、ISBN 978-4902964912

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