コピヨー (レーダー)とは? わかりやすく解説

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コピヨー (レーダー)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/29 09:21 UTC 版)

コピヨーロシア語: Копье)はロシア連邦ファゾトロン-NIIRが開発した小型のパルス・ドップラー・レーダーおよびパッシブ・フェーズドアレイ・レーダーである。コピヨーはロシア語で槍を意味する。型式はFK-04

概要

コピヨーはフォゾトロンがプライベートベンチャーで開発した最初のレーダーである。ファゾトロンはジュークレーダー用に開発された技術を元にMiG-21のような旧式の航空機のアップグレードや練習機・軽攻撃機に搭載するレーダーとしてコピヨーを開発した[1]

コピヨーは、Xバンド帯域で16の異なる周波数で動作する。アンテナは直径が500mm、FB比29デシベルのスロットアレイで、雑音指数4デシベルの受信機を2つ装備し出力は最大5kW、平均1kWである。処理にはMPSデータプロセッサおよびTS175デジタルコンピュータを用いる[2]

レーダー方式は、コヒーレントパルスドップラー・レーダーと呼ばれる方式である。目標の最適な検出および追跡のためにパルス繰り返し周波数(PRF)は、高・中・低の3つに分かれており、高PRFモードはルックダウンおよび高クラッター環境での捜索、低PRFモードはルックダウンでの測距および全周捜索に使用される。グランドマッピングモードとしては低解像度のリアルビーム、中解像度のドップラービームシャープニング(精度10:1)、高解像度の合成開口(精度100:1)の3種類が用意される。そのほか、地上移動目標識別・追尾英語版(GMTI/GMTT)や海上目標追尾などのモードを有する[1]

探知能力は、レーダー反射断面積が3m2の相手に対して45km、ヘッドオンで57km、追尾時に25-30kmで、捜索中追尾(TWS)モード時に10目標を探知して2目標を追尾できる。マッピング時の分解能は低解像度時かつ80kmの距離からで300x300m、中解像度かつ60kmの距離からで30x30m、高解像度時かつ60kmの距離からで10x5mである[1]

ミサイル(R-27R-73R-77Kh-31Aを含む)や航空機関砲ロケット弾爆弾の管制が可能である[1][3]

派生型

コピヨー21I
MiG-21-93に搭載されたタイプ[2]
コマール
Su-22向けにアジマス方向へのスキャン範囲を±60度としたモデル。FC-1に重量105kgのものが提案された[4]
コピヨー25(N027)
Su-39向けでポッド内に収められている。
コピヨー29
インド空軍が運用するMiG-29の迅速かつ安価なアップグレードのための提案されたモデル[2]
コピヨーM
再プログラム可能なTS501FデータプロセッサーとTS181Fデジタルコンピュータの採用により大幅に近代化したモデル。
重量は90kg、体積は230dm3に減少し、平均故障間隔は200時間に増加した。データ処理能力の向上で探知距離は75km、追尾距離は56kmとなった。合成開口モードの解像度も3x3mに改善されている。そのほか、レイドアセスメント、新しい広角近接戦闘モードが新たに追加された[2]Yak-130オサとの選択式で搭載可能[5]
コピヨー25M
コピヨーMをSu-25SM/UBM向けにコピヨー25と同様のアプローチでポッド内に装備したもの。探知距離が20%増加し、地上の監視機能が強化されている[6]
コピヨーShch
2005年に公開されたコピヨーMのYak-130向け改良型で空中目標を80km、複数の地上目標に関して25km、小さなスタンドアローンの海上目標に関して150kmである[7]
コピヨーF(ファラオン)
アンテナを雑音指数28デシベルのパッシブ・フェーズドアレイ・アンテナ(PESA)にしたモデル。MiG-21MF、MiG-21bis、Su-22、Su-25、Yak-130、MiG-ATに装備するために開発された[8]
PESAアンテナには従来の線状型でなく非等間隔型を採用して1/5にコストを抑えている。PESA化により電子妨害に対する耐性が向上し、低被探知英語版の動作モードも追加された。進行波管TWT)型の送信機は、搭載航空機に応じて1,000W、400W、150Wより選択可能である。
Su-34Su-35/37Su-33UBなどの尾部に搭載する後方探知レーダーとしても提案が行われていた[2][9]
ファラオン-M
ファラオンの改良型で最新のデジタル技術やソリッドステート化で重量を45kgまで減少させている[2][9]

仕様

出典[1][2][10]

コピヨー コピヨー21I コピヨー25 コピヨーM コピヨーF
周波数 Xバンド
アンテナ形式 スロットアンテナ PESA
平均送信出力 1kW 0.3kW
5kW 3kW
方位角 ±40 ±60 ±70
仰俯角 ±40 +60...-40 ±70
探知距離[注釈 1] 57km[注釈 2] 57km[注釈 3] 70km[注釈 4] 80km[注釈 3] 75km(ルックアップ)
30km(ルックダウン)
探知距離[注釈 5] 20-30km[注釈 2] 30km(ルックアップ)
25km(ルックダウン)
35km[注釈 4] 40km[注釈 3] 30km(ルックアップ)
20km(ルックダウン)
装甲車戦車に対する探知距離 20km(移動車列) 20km 25-30km(車列) 25km 20km(移動中)
鉄道橋に対する探知距離 100km 80km 100km 80km
艦船に関する探知距離 80km(ミサイル艇
200km(駆逐艦
100km(モーターボート
200km(駆逐艦)
75km(RCS 300m2 80km(モーターボート)
150km(駆逐艦)
100km(ミサイル艇)
200km(駆逐艦)
探知数 10 8 10 20
追尾数 2 4
重量 120kg 100kg 85kg 90kg 75kg
体積 250dm3 230dm3 165dm3
アンテナ直径 500mm 440mm
平均故障間隔 120時間 200時間

脚注

注釈

  1. ^ RCS 5m2、ヘッドオン
  2. ^ a b RCS 3m2
  3. ^ a b c ルックアップ/ルックダウン
  4. ^ a b ルックダウン
  5. ^ RCS 5m2、追尾時

出典

関連項目




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