ジューク_(レーダー)とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > ジューク_(レーダー)の意味・解説 

ジューク (レーダー)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/04 08:16 UTC 版)

ジュークロシア語: Жук)はロシアファゾトロン-NIIRが開発したレーダーSu-27Su-30MiG-29/MiG-29M、SMTに搭載される。名称は、ロシア語で「甲虫類」を意味する。

概要

ジュークはXバンド帯を利用するコヒーレントパルスドップラー・レーダーで、ルックダウン/ショートダウン能力を持ちホバリング中のヘリコプターの探知も可能である[1]。空中や地上及び海上の静止及び移動目標を発見、追尾し距離と速度を測定することが可能である目標の距離や速さを測定することが可能で、探知した目標を識別し優先度をつけて表示する機能を持つ[1]。また、地形追従モードをサポートするほか、飛行中に危険な天候パターンを検出することも可能である。

レーダーの動作モードとしては空対空モードとして、ベロシティサーチ、TWS、ボアサイト、スリュータブル、自動追尾、空対地モードでは合成開口レーダー、リアルビーム、ドップラービームナローイングなどモードを有し、3x3の分解能でグラウンドマッピングが可能である[1]。兵装としてはR-77R-73R-27Kh-29Kh-31航空機関砲などの制御が可能である。

ジュークは各部がモジュラー化されており、整備やアップグレードが容易である。

派生型

ジューク

基本型。型式はN010。12目標を同時に探知可能であり、内2-4目標を追尾可能である[2]。また、レーダー反射断面積(RCS)が5m2の目標を90 km探知可能である。ジュークはMiG-29M «9.15»のために開発され、1986年に最初のテストが行われた。しかし、MiG-29M自体がキャンセルされたため、量産は行われていない。MiG-23のレーダーのアップグレード用としても提案が行われた[3]

仕様

ジューク-8-II

ジュークをJ-8IIに搭載するために改修したものでほぼ同様の性能を持つ。重量はわずかに増加し、240 kgとなった[2]

ジューク-27

Su-27向けに開発されたもの。Su-27にあわせてアンテナを大型化したことにより重量は260 kgとなっている。RCSが5 m2の目標を130 km先から探知できる性能を持つ[2]

ジューク-M (輸出型はジューク-ME)

2007年のMAKSで展示されたジュークME

ジュークMはジュークの先進的な派生型でマッピングや地形追従などの先進的な空対地機能を有している。信号処理装置の改良により、RCSが5m2の目標を120 kmで探知可能(輸出型の場合)となったほか、10目標を追尾しその内4機に対して一度に攻撃することが可能となった。空対地及び空対艦モードでは戦車を25 km、橋を120 km、護衛艦を300 kmで探知可能で、同時に2つの目標を追尾可能である。ジュークMはMiG-29K/KUB、MiG-29M1/M2、MiG-29SMT «9.18»および«9.19»に搭載されているほか、既存のMiG-29のアップグレード用として提案されている[4]。型式はN010M

仕様

ジューク-MS (輸出型はジューク-MSE)

画像外部リンク
Su-33UBに搭載されたジューク-MSE

ジューク-MをSu-27に搭載するために改修したもので、Su-33UBに搭載されたほか、中国のSu-30MKK英語版に対して提案が行われた。RCSが5m2の目標を190 kmで探知可能である。アンテナが大型化したことにより空対地モードにおいて戦車に対する探知距離が30 kmとなった[4]

仕様

ジューク-F

Su-27に搭載するために開発されたもので、ジュークのフロント部分をパッシブフェーズドアレイ (PESA) アンテナに変更したもの。輸出のために提供されたものの、生産及び運用されたことはない。RCSが5m2の目標を130–200 kmで探知可能で、同時に24目標を探知し、内8目標を追尾可能である[2]

仕様

ジューク-MF (輸出型はジューク-MFE)

画像外部リンク
ジューク-MFE

MiG-29のアップグレード用に開発されたタイプでフロント部分をPESAアンテナに交換している。試作機はMiG-29SMTに搭載して試験が行われた。RCSが5m2の目標を110 kmから探知可能で、同時に20目標を探知し、内4目標を追尾可能である[4]FMG-29とも呼ばれる。

仕様

ジューク-MFS (輸出型はジューク-MFSE)

画像外部リンク
ジューク-MFSE

ジュークMの更なるアップグレード型。バルスMに対抗してSu-30MK3向けに開発が行われた。型式はN031で当初はソコルと呼ばれた。16のキャリア周波数を有しており、RCSが5m2の目標を180 kmで探知可能で、同時に30目標を探知し、内6目標を追尾可能である。空対地モードでは戦車を30 kmで探知可能。Su-30MK3のほかMiG-31に搭載されているザスロンの代替レーダーとしての提案が行われていた[7]

仕様

ジューク MA(輸出型はジューク MAE)

画像外部リンク
ジューク MAE

2005年に公開されたこのレーダーシリーズでは初となるアクティブフェーズドレイ(AESA)型。型式はFGA01-01。レーダーアンテナは上方に約20°で傾けて取り付けられており、そこに1,080 - 1,148個のT/Rモジュールを装備している。探知距離は、ルックアップ時かつヘッドオンで200km、テイルオンで80km、ルックダウン時にヘッドオンで200km、テイルオンで75kmである[8]。空対地、空対艦時はRCSが1,000m2の目標に対して300km、300m2の目標に対して150kmである。空対空モードでは30目標を探知し、8目標、空対地モードでは2目標のの追尾が可能[8]。しかし、サイズと重量(520kg)が大きく、さらなる改良が必要であると指摘された。

仕様

FGA01-01

ジューク-A (輸出型はジューク-AE)

2009年のMAKSに出展されたジュークAEの試作型。アンテナが小さくモジュールの数が少ない。
2013年のMAKSに出展されたジュークAEの量産型

ジュークMAの改良型。型式はFGA-29。出力は1チャンネルあたり5kwである。発熱による損傷を防ぐため、過熱した素子は自動的にスイッチが切られ、冷却後再び入るといった仕組みが取り入れられている。

2007年に公開された試作機はT/Rモジュールを680個装備しており[9]、RCSが3m3の目標ヘッドオン時に130 km先(2011年の情報では160 km)の30目標を探知し、6目標の追尾が可能[10]。護衛艦を200 km、ミサイル艇を80 km、橋を120 km、移動する戦車を80 kmで探知が可能である。

2013年に公開された量産型ではT/Rモジュールを1,035個装備しており[9]、140km先から30目標を探知し内6目標を同時追尾できる。ジュークAに関してはMiG-35に搭載されるほか、インド空軍が関心を抱いており、保有するMiG-29UPGの第2段のアップグレード及びSu-30MKIのアップグレードの一環として搭載が検討されている[11]。ロシア空軍もこのレーダーを用いて自軍のMiG-29をアップグレードする可能性が高いとされる[12]

また、ジュークAをベースにアンテナの直径を小型化し周波数帯域を変更して目標探知距離を200kmとした派生型がKa-52Kに搭載される[13]

コストは350-400万ドルとされる[14]

仕様

試作機
量産型

ジューク 3D

2013年のMAKSに出展されたジューク 3D

2013年のMAKSに出展されたもの。型式はFGA-35。3次元技術を使用したT/Rモジュールを採用しているのが特徴[17]。直径68.8cmのアンテナアレイに960個のモジュールを装備している。

脚注

外部リンク


「ジューク (レーダー)」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ジューク_(レーダー)」の関連用語

ジューク_(レーダー)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ジューク_(レーダー)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのジューク (レーダー) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS