ケーラー・アインシュタイン計量とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > ケーラー・アインシュタイン計量の意味・解説 

ケーラー・アインシュタイン計量

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/24 04:33 UTC 版)

微分幾何学において、複素多様体上のケーラー・アインシュタイン計量 (Kähler–Einstein metric) は、ケーラー計量かつアインシュタイン計量であるようなリーマン計量である。多様体がケーラー・アインシュタインであるとは、ケーラー・アインシュタイン計量を持つ場合を言う。これらの中で最も重要なものは、カラビ・ヤウ多様体であり、これは、ケーラーかつリッチ平坦なものである。

この分野の最も重要な問題は、コンパクトケーラー多様体にケーラー・アインシュタイン計量が存在することである。

ケーラー計量がある場合には、リッチ曲率はケーラー計量に比例するので、第一チャーン類は、負か、0か、または、正のいずれかである。

第一チャーン類が負の場合は、オーバン(Aubin)とヤウ(Shing-Tung Yau)が常にケーラー・アインシュタイン計量が存在することを証明した。

第一チャーン類が 0 の場合は、ヤウは常にケーラー・アインシュタイン計量が存在するというカラビ予想を証明した。ヤウはこの仕事でフィールズ賞を受賞した。これがカラビ・ヤウ多様体の名称の由来である。

残りの、第一チャーン類が正の場合(ファノ多様体と言う)が最も困難である。この場合は、存在に非自明な障害が存在する。2012年、チェン(Chen)、ドナルドソン(Donaldson)、スン(Sun)は、この場合の存在性は K-安定性と呼ばれる代数幾何学的な条件に同値であることを証明した。彼らの証明は、アメリカ数学会誌 (the Journal of the American Mathematical Society) の一連の論文に発表された[1][2][3]

参考文献

  1. ^ Chen, Xiuxiong; Donaldson, Simon; Sun, Song Kähler-Einstein metrics on Fano manifolds. I: Approximation of metrics with cone singularities. J. Amer. Math. Soc. 28 (2015), no. 1, 183–197.
  2. ^ Chen, Xiuxiong; Donaldson, Simon; Sun, Song Kähler-Einstein metrics on Fano manifolds. II: Limits with cone angle less than 2π . J. Amer. Math. Soc. 28 (2015), no. 1, 199–234.
  3. ^ Chen, Xiuxiong; Donaldson, Simon; Sun, Song Kähler-Einstein metrics on Fano manifolds. III: Limits as cone angle approaches 2π and completion of the main proof. J. Amer. Math. Soc. 28 (2015), no. 1, 235–278.
  • Moroianu, Andrei (2007). Lectures on Kähler Geometry. London Mathematical Society Student Texts. 69. Cambridge. ISBN 978-0-521-68897-0 
  • 中島, 啓 (1999). 非線型問題と複素幾何学. 現代数学の展開. 20. Tokyo: 岩波書店. ISBN 4-00-010656-2 

外部リンク


ケーラー・アインシュタイン計量

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/22 07:43 UTC 版)

カラビ予想」の記事における「ケーラー・アインシュタイン計量」の解説

カラビ予想密接な関連する予想として、コンパクトケーラー多様体が負、ゼロ、正の第一チャーン類を持つと、定数倍を除外してケーラー計量としてチャーン類対応するケーラー・アインシュタイン計量を持つという予想がある。この予想の証明は、負のチャーン類に対して、ティエリー・オービン(英語版)(Thierry Aubin)とシン=トゥン・ヤウ(Shing-Tung Yau)により1976年なされたチャーン類が 0 のときは、ヤウにより、0 の場合結果より証明された。 第一チャーン類が正の場合は、ヤウ2点ブローアップした複素射影平面英語版)はケーラー・アインシュタイン計量を持たないことを証明した。従って、正の場合反例となる。また、ケーラー・アインシュタイン計量が存在して一意には決定されないことも証明した。正の第一チャーン類に対して、さらに多く結果がある。ケーラー・アインシュタイン計量が存在するための必要条件は、正則ベクトル場リー代数簡約的であることなどがある。ヤウは、正の第一チャーン類対しケーラー多様体がケーラー・アインシュタイン計量を持つことと、幾何学的不変式論の意味ケーラー多様体安定なことが同値であることを予想した複素曲面場合は、ガン・ティアン(Gang Tian)により研究された。正のチャーン類を持つ複素曲面は、2つ射影直線明らかにケーラー・アインシュタイン計量を持つ)の積か、もしくは一般位置にある多くとも 8個の点ブローアップされた射影平面である。一般位置の意味は、一直線上に 3つの点が並ばないこと、二次曲線の上6つの点が載っていないことを言う意味である。射影平面はケーラー・アインシュタイン計量を持っていて、1つまたは 2つの点でブローアップされた射影平面は、正則ベクトル場リー代数簡約的ではないので、ケーラー・アインシュタイン計量を持たないティアンは、一般位置にある 3, 4, 5, 6, 7, 8 個の点でブローアップされた射影平面はケーラー・アインシュタイン計量を持つことを示した

※この「ケーラー・アインシュタイン計量」の解説は、「カラビ予想」の解説の一部です。
「ケーラー・アインシュタイン計量」を含む「カラビ予想」の記事については、「カラビ予想」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「ケーラー・アインシュタイン計量」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ケーラー・アインシュタイン計量」の関連用語

ケーラー・アインシュタイン計量のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ケーラー・アインシュタイン計量のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのケーラー・アインシュタイン計量 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのカラビ予想 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS