グロス=ピタエフスキー方程式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/09 15:07 UTC 版)
グロス=ピタエフスキー方程式(グロス=ピタエフスキーほうていしき、英: Gross–Pitaevskii equation; GPE)は、ボソン間相互作用が擬ポテンシャルとして表される理想的なボソン多体系の、ハートリー=フォック近似の下での基底状態を記述するモデルである。
グロス=ピタエフスキー方程式の名前は、ユージン・グロス[1]とレフ・ピタエフスキー[2]に因む。グロス=ピタエフスキー方程式は、グロスおよびピタエフスキーの頭文字を取ってしばしばGP方程式と呼ばれる。あるいは更に短縮してGPと呼ぶこともある。
ハートリー=フォック近似において N 体のボソン系全体を表す波動関数 Ψ は、個々のボソンに対応する波動関数たち {ψi}i ∈ [N] の積状態として表すことができる。
- この節の加筆が望まれています。
変分法による近似解
厳密な解析解が適用できる系からかけ離れた状況にある系に対しても、変分法を用いた近似によって解を評価することができる。基本的なアイデアは、波動関数に対して変分に用いる何らかのパラメタを設定し、系の自由エネルギーを考えることである。基底状態の波動関数は自由エネルギーを最小化する変分パラメタを決定することによって得られる。
トーマス=フェルミ近似
ボソン気体系の粒子数が非常に大きい場合、ハミルトニアンのボソン間相互作用項の寄与はボソンの運動エネルギー項よりはるかに大きくなる。従って、粒子数が充分大きい場合には運動エネルギー項を無視することができる。(全体に対し寄与の小さい)運動エネルギー項をハミルトニアンから落とす近似をトーマス=フェルミ近似という。トーマス=フェルミ近似の下で、グロス=ピタエフスキー方程式の解は厳密に求めることができ、以下のようになる。
出典
参考文献
- Gross, E.P. (1961-05). “Structure of a quantized vortex in boson systems”. Il Nuovo Cimento 20 (3): 454–457. doi:10.1007/BF02731494.
- Pitaevskii, L. P. (1961-08). “Vortex Lines in an Imperfect Bose Gas”. Soviet Physics JETP 13 (2): 451–454 .
- Hugenholtz, N. M.; Pines, D. (1959). “Ground-state energy and excitation spectrum of a system of interacting bosons”. Physical Review 116 (3): 489–506. Bibcode: 1959PhRv..116..489H. doi:10.1103/PhysRev.116.489.
- Pethick, C. J. & Smith, H. (2002). Bose–Einstein Condensation in Dilute Gases. Cambridge: Cambridge University Press. ISBN 0-521-66580-9.
- Pitaevskii, L. P. & Stringari, S. (2003). Bose–Einstein Condensation. Oxford: Clarendon Press. ISBN 0-19-850719-4.
外部リンク
- Trotter-Suzuki-MPI リー=トロッター積公式の応用であるトロッター=鈴木分解を利用した巨大スケールのシュレーディンガー方程式シミュレーション用の並列計算ライブラリ。主な対象としてグロス=ピタエフスキー方程式が含まれている。
グロス=ピタエフスキー方程式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/10 15:44 UTC 版)
「非線形シュレディンガー方程式」の記事における「グロス=ピタエフスキー方程式」の解説
中性ボーズ気体をはじめとするボーズ粒子系は極低温でボーズ=アインシュタイン凝縮と呼ばれる量子力学的な相転移を引き起こす。このとき、系は凝縮体の波動関数と呼ばれる秩序変数Ψで記述される。Ψはグロス=ピタエフスキー方程式 と呼ばれる次の三次元版の非線形シュレディンガー方程式にしたがう。 i ℏ ∂ ∂ t Ψ ( r , t ) = ( − ℏ 2 ∇ 2 2 m + V e x t ( r ) + g | Ψ ( r , t ) | 2 ) Ψ ( r , t ) {\displaystyle i\hbar {\frac {\partial }{\partial t}}\Psi (\mathbf {r} ,t)=\left(-{\frac {\hbar ^{2}\nabla ^{2}}{2m}}+V_{ext}(\mathbf {r} )+g|\Psi (\mathbf {r} ,t)|^{2}\right)\Psi (\mathbf {r} ,t)} 但し、Vextは外場ポテンシャルであり、g は粒子間相互作用の強さを表す結合定数である。
※この「グロス=ピタエフスキー方程式」の解説は、「非線形シュレディンガー方程式」の解説の一部です。
「グロス=ピタエフスキー方程式」を含む「非線形シュレディンガー方程式」の記事については、「非線形シュレディンガー方程式」の概要を参照ください。
- グロス=ピタエフスキー方程式のページへのリンク