グリコゲニンとは? わかりやすく解説

グリコゲニン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/17 16:38 UTC 版)

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glycogenin glucosyltransferase
グリコゲニンの構造(ウサギ由来)[1]
識別子
EC番号 2.4.1.186
CAS登録番号 117590-73-5
データベース
IntEnz IntEnz view
BRENDA BRENDA entry
ExPASy NiceZyme view
KEGG KEGG entry
MetaCyc metabolic pathway
PRIAM profile
PDB構造 RCSB PDB PDBj PDBe PDBsum
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グリコゲニン: glycogenin)は、グルコースからグリコーゲンへの変換に関与する酵素である。グリコゲニンはグルコース分子の重合のプライマーとして作用し、最初の数個の分子の重合を担う。その後の重合反応は他の酵素に引き継がれる。37 kDaのサブユニットからなるホモ二量体で、グリコシルトランスフェラーゼに分類される。

この酵素は次の化学反応を触媒する。

UDP-α-D-グルコース + グリコゲニン UDP + α-D-グルコシルグリコゲニン

すなわち、この酵素の2つの基質はUDP-α-D-グルコースとグリコゲニンであり、2つの産物はUDPとα-D-グルコシルグリコゲニンである。

命名

この酵素はグリコシルトランスフェラーゼファミリー、特にヘキソシルトランスフェラーゼ(hexosyltransferase)に属する。この酵素の系統名はUDP-α-D-グルコース:グリコゲニン α-D-グルコシルトランスフェラーゼ(UDP-alpha-D-glucose:glycogenin alpha-D-glucosyltransferase)である。他の慣用名には次のようなものがある。

  • グリコゲニン
  • プライミンググルコシルトランスフェラーゼ(priming glucosyltransferase)
  • UDP-グルコース:グリコゲニン グルコシルトランスフェラーゼ

グリコゲニンはグリコーゲン合成の開始を担い、グリコーゲンシンターゼが引き継ぐ。

発見

グリコゲニンは1984年にWilliam Joseph Whelanによって発見された[2]

機能

肝臓筋肉でのグリコーゲン合成はUDP-グルコースによって開始されるが、グリコーゲンの重合の主要な酵素であるグリコーゲンシンターゼは、少なくとも3つのグルコース残基の鎖が存在しているときにのみ、付加を行うことができる。グリコゲニンはグリコーゲン合成のプライマーとして作用し、グルコースの付加も行うことができる。この反応は自身へのグルコースの付加(自己触媒)によって行われ、UDP-グルコースのグルコースをチロシン194番残基のヒドロキシル基に結合させる。さらにグリコゲニンのグルコシルトランスフェラーゼ活性によって、UDP-グルコースに由来するグルコースを7つ付加することができる。十分なグルコース残基が付加されると、グルコース鎖の伸長はグリコーゲンシンターゼに引き継がれる。このときもグリコゲニンはグリコーゲン分子の還元端に共有結合的に結合したままである。

構造

グリコーゲンの二次元断面図。コアタンパク質であるグリコゲニンはグルコース単位からなる枝に囲まれている。球状複合体には約3万単位のグルコースが含まれている[3]

アイソザイム

ヒトでは、グリコゲニンには2つのアイソフォームが存在する。GYG1遺伝子にコードされるグリコゲニン1は筋肉で発現し、GYG2遺伝子にコードされるグリコゲニン2は肝臓と心筋で発現しているが、骨格筋では発現しない。グリコゲニン1の欠乏患者が見つかっており、筋細胞にグリコーゲンを貯蔵することができないため、筋力低下と心臓疾患が引き起こされる[4]

glycogenin 1
識別子
略号 GYG1
遺伝子コード GYG
Entrez英語版 2992
HUGO 4699
OMIM英語版 603942
RefSeq NM_004130
UniProt P46976
他のデータ
EC番号
(KEGG)
2.4.1.186
遺伝子座 Chr. 3 q24-q25.1
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glycogenin 2
識別子
略号 GYG2
Entrez英語版 8908
HUGO 4700
OMIM英語版 300198
RefSeq NM_003918
UniProt O15488
他のデータ
EC番号
(KEGG)
2.4.1.186
遺伝子座 Chr. X p22.3
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出典

  1. ^ PDB 1LL3; “Crystal structure of the autocatalytic initiator of glycogen biosynthesis, glycogenin”. J. Mol. Biol. 319 (2): 463–77. (May 2002). doi:10.1016/S0022-2836(02)00305-4. PMID 12051921. 
  2. ^ Whelan WJ (September 1998). “Pride and prejudice: the discovery of the primer for glycogen synthesis”. Protein Sci. 7 (9): 2038–41. doi:10.1002/pro.5560070921. PMC: 2144155. PMID 9761486. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2144155/. 
  3. ^ Katch, Victor L.; McArdle, William D.; Katch, Frank I. (2007). Exercise physiology: energy, nutrition, and human performance. Philadelphia: Lippincott Williams and Wilkins. pp. 12. ISBN 978-0-7817-4990-9 
  4. ^ “Glycogenin-1 deficiency and inactivated priming of glycogen synthesis”. N. Engl. J. Med. 362 (13): 1203–10. (April 2010). doi:10.1056/NEJMoa0900661. PMID 20357282. 

関連文献

外部リンク


グリコゲニン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 08:25 UTC 版)

O-結合型グリコシル化」の記事における「グリコゲニン」の解説

O-グリコシル化セリンまたはスレオニン残基ではなくチロシン残基に対して行われる唯一の既知の例は、グリコゲニンのチロシン残基対すグルコース付加である。グリコゲニンはグルコースからグリコーゲンへの変換開始するグリコシルトランスフェラーゼであり、筋肉肝細胞存在している。

※この「グリコゲニン」の解説は、「O-結合型グリコシル化」の解説の一部です。
「グリコゲニン」を含む「O-結合型グリコシル化」の記事については、「O-結合型グリコシル化」の概要を参照ください。

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