エブラ語とは? わかりやすく解説

エブラ語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/25 22:36 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動
エブラ語
話される国 エブラ
話者数
言語系統
言語コード
ISO 639-1 なし
ISO 639-3 xeb
Linguist List xeb
Glottolog ebla1238[1]
テンプレートを表示

エブラ語: Eblaite language)は、セム語派の消滅した言語で、紀元前23世紀に古代都市エブラ、現在の西シリアアレッポハマーの間にあるテル・マルディーフで用いられていた。

エブラ語は、サルゴン以前のアッカド語に近い言語東セム語のひとつとして記述されてきた。たとえば、マンフレート・クレベルニクはエブラ語について、粘土板に出現する王名の一部は北西セム語に属するものの、「アッカド語にきわめて近いため、初期のアッカド語の方言として分類できる」と言っている[2]。ジョン・ヒューナーガードはエブラ語が西セム語の形態的改新を持たず、その一方でアッカド語と共通の改新(形容詞複数男性の接尾辞-ūtの存在、独立した二人称・三人称与格接尾辞の発達)があることから東セム語に含め、かつアッカド語のすべての方言に見られるいくつかの改新がエブラ語に見られないことから、アッカド語の方言ではないとした[3]。一方サイラス・ゴードンによれば[4]、書記がエブラ語を話すことはあったかもしれないが、おそらくあまり話されることはなく、東セム語と西セム語の両方の特徴を持つリンガ・フランカとしての文章語であっただろうとする。

エブラ語は約1万5千枚[4]の粘土板の上に楔形文字で書かれており、1970年以降、主にエブラの遺跡で発見された。

エブラ語はアッカド語の最古層である古アッカド語と同時期のものであり、その音節文字部分はセム語を表記するために十分な発達をしておらず、調音の近い音が区別されない。無声音有声音強調音の区別や母音の長さが表記されない。古アッカド語の場合は後の時代のバビロニア語やアッシリア語との比較によってそれらが実際に何の音を表していたのかを推測できるが、エブラ語はごく短い期間しか使われなかったために、どのような音韻体系を持っていたのか知ることが難しい。また、アッカド語と違ってエブラ語は表語文字で記された部分の割合が非常に高く(9割が表語文字ともいう)、さらに文章に省略が多いことが、解読や言語構造の理解を難しくしている[5]。語順はわかるものの、表語文字でしか書かれない語についてはどう読まれていたのか知ることができない[4]

出典

  1. ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Eblan”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/ebla1238. 
  2. ^ Krebernik (1996)
  3. ^ Faber (1997) p.7
  4. ^ a b c Gordon (1997) p.101
  5. ^ Huehnergard & Woods (2004) p.229

参考文献

  • Archi, A. (1987). “Ebla and Eblaite”. In Gordon, C.H and Lake, Winona. Eblaitica. 1. Indiana: Eisenbrauns. pp. 7-17. 
  • Faber, Alice (1997). “Genetic Subgrouping of the Semitic Languages”. In Hetzron, Robert. The Semitic Languages. New York: Routledge. pp. 3-15. ISBN 9780415412667. 
  • Gordon, Cyrus H. (1997). “Amorite and Eblaite”. In Hetzron, Robert. The Semitic Languages. New York: Routledge. pp. 100-113. ISBN 9780415412667. 
  • Huehnergard, John; Woods, Christopher (2004). “Akkadian and Eblaite”. In Roger D. Woodard. The Cambridge Encyclopedia of the World's Ancient Languages. Cambridge University Press. pp. 218-280. ISBN 9780521562560. 
  • Krebernik, Manfred (1996). “The Linguistic Classification of Eblaite: Methods, Problems, and Results”. In Cooper, J.S. and Schwartz, G.M. (pdf). The Study of the Ancient Near East in the Twenty-First Century. pp. 233-249. http://archiv.ub.uni-heidelberg.de/propylaeumdok/1342/1/Krebernik_The_linguistic_classification_of_Eblaite_1996.pdf. 
  • Rubio G. (2006). “Eblaite, Akkadian, and East Semitic”. In Kouwenberg, N.J.C. and Deutscher, G.. The Akkadian Language in its Semitic Context. Leiden: Nederlands Instituut voor het Nabije Oosten. pp. 110-139. 

外部リンク



エブラ語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/11/12 05:13 UTC 版)

東セム諸語」の記事における「エブラ語」の解説

北西シリアから出土したエブラ語の資料は古アッカド語とほぼ同じ紀元前2400年ごろにさかのぼる。出土した資料の量は15000件にものぼるが、使われ時期紀元前3千年紀中頃のみである。はじめは西セム語属すると考えられていたが、研究が進むにつれてこの言語西セム語に共通な改新形を持たずアッカド語と共通のいくつかの改新が行われている(男性複数形語尾人称代名詞与格形など)ことが明らかにされた。このため東セム語属すると考えられることが多くなり、学者によってはアッカド語初期方言とみなす者すらある。しかし、エブラ語は表記法上の制約大きく、じゅうぶん研究進んでいない。

※この「エブラ語」の解説は、「東セム諸語」の解説の一部です。
「エブラ語」を含む「東セム諸語」の記事については、「東セム諸語」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「エブラ語」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「エブラ語」の関連用語

エブラ語のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



エブラ語のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのエブラ語 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの東セム諸語 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS