アンスコ (アメリカ合衆国の企業)とは? わかりやすく解説

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アンスコ (アメリカ合衆国の企業)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/20 14:46 UTC 版)

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アンスコフレックスII

アンスコ英語: Ansco)は、かつてアメリカのニューヨークに存在した写真機、および写真フィルムを製造販売する企業であり、そのブランドである。

前身のアンソニー時代は別として、カメラメーカーとしてはあまり高級機は作らなかった[1]。かつてはアメリカ合衆国第2位のフィルムメーカーであった[1]

歴史

前史、スコービル

  • 1802年 - スコービル(Scoville Co. )は写真発明以前より錠前を含む真鍮加工業で出発し、種々の木製カメラも製作してアメリカ合衆国最古のカメラメーカーとなっていた[2]

前史、アンソニー

創業者のエドワード・アンソニー(Edward Anthony )は大学を卒業して土木技師として働く傍ら、余暇にサミュエル・モールスよりダゲレオタイプの技法を学んでいた[2]

  • 1841年 - エドワード・アンソニーがニューヨークに写真スタジオを開いた。
  • 1842年 - エドワード・アンソニーが写真スタジオの副業としてカメラメーカー、E・アンソニー(E. Anthony & Co. )を設立。
  • 1852年 - エドワード・アンソニーの兄が参加しE & HT アンソニーE & HT Anthony & Co )となった[2]
  • 1870年 - 高級木製カメラ、アンソニーAnthony )を発売、写真館にあるプロ用木製カメラの代名詞となった。

透明セルロイドをベースとする写真フィルムを発明しコダックとの間で特許訴訟になっていたハンニバル・グッドウィン(Hannibal Goodwin )を支援した。

アンスコへ

  • 1902年 - アンソニースコービル & アダムスScoville & Adams )が合併、アンソニー & スコービルAnthony & Scoville )となった[2]
  • 1907年 - アンスコAnsco )と改名した[2]
  • 1914年3月27日[3] - グッドウィンに対しコダックから500万ドルの賠償金が支払われたがすでにグッドウィンは死去、この賠償金をアンスコが受け取った[2]
  • 1928年 - アグフア(現在のアグフア・ゲバルト)と合併、アグフアアンスコ英語: Agfa-Ansco )となった。
  • 1943年 - アグフアのアンスコ部門・ブランドとなった[2]
  • 1963年 - GAFフィルムとなり、アンスコのブランドが消滅した[2]

カメラ製品

初期には自製し高級木製カメラメーカーとして有名になったが、アグフアとの合併後はアグフア・ゲバルトミノルタ(現コニカミノルタ)、リコーチノンなどからのOEMが主体となりまた大衆向けとなった。日本国内の代理店はシュリロ貿易(現シュリロトレーディング)だったが駒村商会でも取り扱いがあった。

120フィルム使用カメラ

  • アンスコ2号 - アンスコ0号をほとんどそのまま120フィルムによる6×9cm判としたもの。
  • スピーデックスSpeedex1946年頃発売) - 6×6cm判。距離計はない。
  • アンスコオートマチックレフレックスF3.5Ansco Automatic reflex/3.51947年発売[1]) - 6×6cm判[1]。レンズはウォレンサックアンスコアナスチグマット83mmF3.5[1]またはヴェロスチグマット83mmF3.5[1]で、なかなか描写の良いレンズである[1]。やや大きめで重い、プロにも使える高級機であり、アンスコブランドの製品のみならず高級機の少ないアメリカ製カメラとしても例外的な存在である[1]。オートマチックと言いながら初期型はシャッターセットがフィルム巻き上げと連動しておらずオートマットではない[1]。後に改良されてセルフコッキングになってからも特別その旨を表示していない[1]。フィルムの装填は赤窓式で1を出し[1]、フィルム巻き止めはセミオートマット[1]。二重露出防止装置はないが、撮影しないままのフィルム送りは防止されている[1]。デザインが良く[1]、作りも良く[1]、写りも良いが[1]、使い勝手が悪い[1]

127フィルム使用カメラ

カデットII
  • アンスコ0号 - 127フィルムを使用する。「アンスコ・ヴェスト」と俗称される。ヴェスト・ポケット・コダックの追随品だが一番安価な製品でもレンズにラピッド・レクチリニアを装備している。
  • カデットIICadet II
  • カデットレフレックスCadet Reflex1959年発売) - 4×4cm判。二眼レフカメラ型だがマット面はなく機能的にはボックスカメラに近い。

135フィルム使用カメラ

アンスコメモ
  • アンスコメモAnsco Memo1925年発売[4][2]) - 35mmフィルムを使用、映画用と兼ねないスチル写真専用としては非常に初期の24×18mm(ハーフ)判カメラ。ボディーは木製本革張り。レンズはシネマットF6.3[2]。シャッターはアイレックスのエバーセット式でT、B、1/25、1/50、1/100秒[2]。発売と同時に現像タンク、プロジェクター[2]、引き伸ばし機などが用意され、システムカメラとしても初期の製品とされる。
  • リージェントRegent ) - 135フィルムを使用、アグフア製ゾリネッテSolinette )のOEM。距離計はない。レンズはテッサー型3群4枚のゾリナーSolinar )50mmF3.5。
  • スーパーリージェントSuper Regent ) - 135フィルムを使用、アグフアのスーパーゾリネッテSuper Solinette )のOEM。ファインダーに連動距離計が組み込まれている。レンズはテッサー型3群4枚のゾリナーSolinar )50mmF3.5。
  • アンスコメモIIオートマチックAnsco Memo II1963年発売) - 135フィルムを使用、24×18mm判(ハーフ判)。リコーオートハーフゾーンフォーカスのOEM。

616フィルム使用カメラ

  • クリッパーClipper ) - 616フィルムを使用する。
  • フラッシュクリッパーFlash Clipper ) - 616フィルムを使用する。
  • クリッパースペシャルClipper Special ) - 616フィルムを使用する。

620フィルム使用カメラ

  • パンダPanda1939年発売) - 620フィルムを使用する。二眼レフカメラ型だがマット面はなく機能的にはボックスカメラに近い。
  • アンスコフレックスAnscoflex ) - 620フィルムを使用し6×6cm判。エナメル仕上げの金属ボディー、スライド式の前面保護カバー兼ファインダーフード[1]と特徴的。二眼レフカメラ型だがマット面はなく機能的にはボックスカメラに近い[1]初級カメラである[1]。デザインはレイモンド・ローウィ[1]。シャッターはエバーセットで、シャッターボタンを押すとシャッターが切れてボタンが押し込まれたままとなり、フィルム巻き上げでボタンが出てくることで二重撮影防止になっている[1]。フィルム巻き上げは赤窓[1]
  • アンスコフレックスIIAnscoflex II1954年発売[1]) - アンスコフレックスの改良型で、銘板にIIの表示がされクローズアップとY1フィルターが組み込まれた[1]

写真乾板使用カメラ

アンソニースタジオカメラ1870年発売) - 写真乾板使用、ガラス写真乾板は約25×35cm判。写真館にあるプロ用木製カメラの代名詞となった。

フィルム製品

リバーサルフィルムアンスコクロームが知られる。

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y 『クラシックカメラ専科No.38、プラクチカマウント』pp.70-73。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l 『クラシックカメラ専科』pp.147-157。
  3. ^ http://query.nytimes.com/gst/abstract.html?res=990DE0D9173DE633A25754C2A9659C946596D6CF
  4. ^ 『世界の珍品カメラ』p.32。

参考文献

  • 北野邦雄『現代カメラ新書No.3、世界の珍品カメラ』朝日ソノラマ
  • 『クラシックカメラ専科』朝日ソノラマ
  • 『クラシックカメラ専科No.38、プラクチカマウント』朝日ソノラマ



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