ゆきてかへらぬ_(映画)とは? わかりやすく解説

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ゆきてかへらぬ (映画)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/06 14:07 UTC 版)

ゆきてかへらぬ
Yasuko, Songs of Days Past[注 1]
監督 根岸吉太郎
脚本 田中陽造
製作 武部由実子
谷川由希子
佐藤満
製作総指揮 木下直哉
出演者 広瀬すず
木戸大聖
岡田将生
田中俊介
トータス松本
瀧内公美
草刈民代
カトウシンスケ
藤間爽子
柄本佑
音楽 岩代太郎
主題歌 キタニタツヤ「ユーモア」
撮影 儀間眞悟
編集 川島章正
制作会社 ギークピクチュアズ / ギークサイト
製作会社 「ゆきてかへらぬ」製作委員会
配給 キノフィルムズ
公開 2025年2月21日
上映時間 128分
製作国 日本
言語 日本語
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ゆきてかへらぬ』(現代仮名遣い:ゆきてかえらぬ)は、2025年2月21日公開の日本の映画[1]。監督は根岸吉太郎、脚本は田中陽造、主演は広瀬すず[2]

制作経緯

大正から昭和初期を舞台に、駆け出しの女優長谷川泰子、詩人中原中也、文芸評論家小林秀雄という若い男女3人の愛と青春の日々を、実話に基づき描く[2]。田中が40年以上前に書き上げ、多くの映画人から映画化を望まれるも長く実現に至らなかった「幻の脚本」を[3][4]、根岸が『ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜』以来16年ぶりに監督を務める形で映画化を果たした[4]

2025年2月5日、オランダロッテルダム国際映画祭において、「ビッグスクリーンコンペティション部門」の正式出品作品として公開され[5][6]、その後、同年2月21日に日本で公開された[1]

あらすじ

1924年大正13年)の京都。まだ芽の出ない無名の女優・長谷川泰子は、のちに不世出の天才詩人と呼ばれることになる学生・中原中也と出会う。泰子は20歳、中也は17歳のときだった。ふたりは惹かれあい、住む場所のない泰子を、中也が下宿先に誘う形で同棲を始めた。どこか虚勢を張り合うふたりだが、相手を尊重できる「気っ風の良さ」は同じだった。中也は詩作に打ち込み、泰子は中也の創作活動を支えるミューズのような存在になる。ときにケンカして仲違いすることはあっても、離れられないふたりだった。

1年後の1925年(大正14年)、ふたりは京都から東京へ移住する。中也は友人の富永太郎の紹介で、のちに日本を代表する文芸評論家となる小林秀雄と出会い、親交を深める。小林は、中也の天才的な詩の才能を見抜き、深い感銘を受けていた。中也もまた、明晰な批評を行う小林から高い評価を受けることを誇りに感じ、互いに深く認め合う仲になった。

ある日、泰子と中也が住む家を小林が訪れた。中也と小林は文学について楽しそうに語り合う。才気あふれるクリエイターたちの楽しげな様子を目の当たりにして、泰子は放置され、取り残されたような気分になった。そんな泰子を落ち着かせるため、中也は小林を誘い、一緒に3人で遊ぶようになる。

やがて、小林の関心は中也の隣にいる泰子にも向けられていき、その魅力に惹かれていく。小林から求愛され、戸惑う泰子。理知的で穏やかな小林と、情熱的でどこか純粋さが残る中也。タイプがまったく異なるふたりの男に愛され、泰子の心は揺れ動く。後戻りのできない、恋愛、友情、芸術、尊敬、執着が複雑に入り混じった三角関係の始まりだった。

時が経つにつれ、3人の関係は次第に歪さを増していく。小林の安定感に次第に惹かれていき、中也の自己中心的で激しすぎる愛に疲弊していった泰子は、ついに中也のもとを去り、小林と同棲を始めた。しかし、泰子と小林の生活も平坦なものではなかった。泰子は次第に精神のバランスを崩し、潔癖症の症状が悪化していった。泰子の潔癖症は執拗な言葉責めを伴うもので、小林は尽くすが耐え切れず、ついに彼女のもとを去った。こうして、ふたりの生活は終わりを告げる。

その後、歳月が経ち、女優としての実績を積み重ねていた泰子は、ある撮影現場で中也と小林に再会する。中也は別の女性と結婚していたが、授かった子を亡くして失意にあり、自身も結核性脳膜炎を患い、衰弱していた。それから間もなく、中也の訃報を受け取った泰子は涙を流す。葬儀の場に現れた泰子は、かつて中也に託された赤い手袋を棺に添え、小林にも別れを告げる。かくて、泰子と中也と小林の「奇妙な三角関係」は、終焉を迎えたのだった。

キャスト

長谷川泰子(はせがわ やすこ)
演 - 広瀬すず
主人公。駆け出しの女優
京都で出会った3歳年下の詩人中原中也と惹かれあう。その後、東京へ移ったふたりの前に文芸評論家小林秀雄が現れ、3人の関係は複雑な三角関係の様相を呈するに至る。
中原中也(なかはら ちゅうや)
演 - 木戸大聖[1]
詩人。天才詩人として、のちに日本文学史に名を遺す。泰子より3歳年下。
小林とは互いに認め合う仲だったが、恋人の泰子を小林に奪われてしまう。
小林秀雄(こばやし ひでお)
演 - 岡田将生[1]
文学者。その批評は鋭く、のちに日本を代表する文芸評論家となる。
中也とは互いに認め合う仲だったが、中也の恋人の泰子に惹かれ、奪ってしまう。
富永太郎(とみなが たろう)
演- 田中俊介[7]
中也の友人で、詩人にして画家でもある。結核のため、若くして命を落とす。
鷹野叔(たかの よし)
演 - トータス松本[7]
バイオリンを弾きながら歌う吟遊詩人。「さすらいの大空詩人」と呼ばれ、各地を行脚した永井叔をモデルとしている[8]
泰子の辛い過去を知る人物である。
長谷川イシ(はせがわ イシ)
演 - 瀧内公美[7]
泰子の母親。幼い泰子を巻き添えに自殺を図ろうとする。
スター女優
演 - 草刈民代[7]
泰子が入社した撮影所のスター女優。
泰子を「文士二号」と呼び、侮辱する。
辰野(たつの)教授
演 - カトウシンスケ[7]
東京の大学教授。秀雄の友人。
中原孝子(なかはら たかこ)
演 - 藤間爽子[7]
後年、中也の妻になる人物。
勤め人
演 - 柄本佑[7]
泰子が東京の公園で出会う勤め人。
田中の脚本で根岸が新作映画を製作すると聞きつけた柄本が、「通行人Aでもいいから出演したい」と要望を出したところ、「勤め人」として出演が実現した[9]

スタッフ

脚注

注釈

  1. ^ 本作品の英題「Yasuko, Songs of Days Past 」は、中原中也の詩集『在りし日の歌』から着想を得て付けられた。「映画『#ゆきてかへらぬ』ティザービジュアル解禁 ┈ Vol.1 ┈映画『ゆきてかへらぬ』公式X 2025年2月21日付、2025年7月11日閲覧.

出典

  1. ^ a b c d 広瀬すず、岡田将生&木戸大聖と三角関係に!主演最新作『ゆきてかへらぬ』2.21公開決定”. シネマトゥデイ. シネマトゥデイ (2024年8月17日). 2025年11月6日閲覧。
  2. ^ a b c 広瀬すず主演映画『ゆきてかへらぬ』2025年2月公開 監督は根岸吉太郎、脚本は田中陽造”. リアルサウンド映画部. blueprint (2024年6月26日). 2025年11月6日閲覧。
  3. ^ 香田史生 「『ゆきてかへらぬ』根岸吉太郎監督 撮影までの数年間がもたらしたもの【Director’s Interview Vol.473】」 CINEMORE 2025年2月21日付、2025年7月11日閲覧.
  4. ^ a b 週刊文春CINEMAオンライン編集部 「《映画「ゆきてかへらぬ」》全シーンがフォトジェニック『ゆきてかへらぬ』が紡ぐ秋冬春夏…駆け出し女優、天才詩人、知的な評論家の青春物語を深掘り文春オンライン 2025年2月22日付、2025年7月11日閲覧.
  5. ^ 「ゆきてかへらぬ」ロッテルダム映画祭で上映、根岸吉太郎「愛と格闘と葛藤を描いた話」”. 映画ナタリー. ナターシャ (2025年2月6日). 2025年11月6日閲覧。
  6. ^ ロッテルダム国際映画祭舞台挨拶レポート映画『ゆきてかへらぬ』公式サイト 2025年2月6日付、2025年7月11日閲覧.
  7. ^ a b c d e f g 「ゆきてかへらぬ」に田中俊介、トータス松本、瀧内公美、草刈民代、柄本佑ら7名出演”. 映画ナタリー. ナターシャ (2024年11月15日). 2025年11月6日閲覧。
  8. ^ 田中陽造 「自作解題」 『ゆきてかへらぬ -田中陽造自選シナリオ集-』 国書刊行会、2025年、p.397.下段.
  9. ^ 週刊文春CINEMAオンライン編集部 「《映画『ゆきてかへらぬ』》柄本佑ピンポイント出演に父・柄本明が「佑、どこに出てた?」…公開後だからこそ話せた裏話が続々‼ 《オフィシャルレポート》3月23日(日)公開後トークイベント文春オンライン 2025年3月24日付、2025年7月11日閲覧.
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t ゆきてかへらぬ:作品情報・キャスト・あらすじ・動画”. 映画.com. エイガ・ドット・コム. 2025年11月6日閲覧。
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v ゆきてかへらぬ - 作品情報・映画レビュー”. キネマ旬報WEB. キネマ旬報社. 2025年11月6日閲覧。
  12. ^ キタニタツヤ、新曲「ユーモア」が映画"ゆきてかへらぬ"主題歌に決定”. skream!. 激ロックエンタテインメント (2024年12月6日). 2025年11月6日閲覧。

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