ねじりまんぽとは? わかりやすく解説

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ねじりまんぽ

レンガが、ねじるような形で積まれているトンネル。「まんぽ」はトンネル意味する方言

ねじりまんぽ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/26 03:25 UTC 版)

ねじりまんぽSkew arch)とは、アーチ橋を斜めに架けるための組積造の技法である。

専門用語では斜架拱(しゃかきょう)と呼称する。

概要

ねじりまんぽとは、明治大正期に建設されたレンガ構造の土木構造物で[1]トンネル状の斜めアーチを煉瓦石材により組積造で構築する技法の一つである[2][3][4]。斜架拱の一種[1]。ねじりまんぽの「まんぽ」は近畿地方でトンネルのことを指す方言で[5]、マンボ、マンプウ、マンボウなどとも言われる[1]

ねじりまんぽは、海外では鉄道の普及より前、19世紀以前には既に存在していたと考えられており[6]、一説にはルネサンス期の1530年代、イタリア・フィレンツェのムニョーネ川に架かるPonte Rossoが最初期のねじりまんぽともいわれている[7]。鉄道構造物としてのねじりまんぽの初期の例としては、1829年建造のイギリス・マージーサイドにあるレインヒルのアーチ橋が知られている[6]

日本国内では、日本における本格的鉄道技術の出発点である、明治7年(1874年)開通の東海道本線大阪‐神戸間[8]お雇い外国人のイギリス人技師によって初めて採用された[9][3][10]。明治10年(1877年)5月、明治新政府は大阪駅構内に鉄道技術者の育成機関、工技生養成所(工部省鉄道局工技生養成所)を設立した。工技生養成所ではイギリス人鉄道技師により数学・測量・製図・力学・土木学一般・機械学・運輸大要などの教育が行われた [11][12]。ねじりまんぽも、この工技生養成所出身の技術者たちの活躍により日本各地へ広がっていった[9]。ねじりまんぽの多くは近畿圏に存在するが[13]、北は新潟県から南は福岡県までの日本列島の広い範囲で建造された。明治期には普遍的な技法であったが[14][15]、大正初期、コンクリート橋の普及により、ねじりまんぽの建設は途絶えた[16]

日本では前述の理由により鉄道構造物としての採用が殆どで、琵琶湖疏水蹴上インクラインのものは鉄道以外では希少な採用例である[17]

ねじりまんぽ一覧
名称 開業年 路線 駅間
(廃止区間を除き2023年時点)
建設 備考
安井拱渠[18] 1874 東海道本線 西宮‐さくら夙川 官設鉄道 さくら夙川駅建設により消滅
東皿池拱渠[18] 1874 東海道本線 さくら夙川‐芦屋 官設鉄道
木仙上谷拱渠[18] 1874 東海道本線 住吉‐六甲道 官設鉄道 1993年撤去
馬場丁川拱渠[18] 1876 東海道本線 西大路‐桂川 官設鉄道
円妙寺架道橋[18] 1876 東海道本線 長岡京‐山崎 官設鉄道
奥田端拱渠[18] 1876 東海道本線 島本‐高槻 官設鉄道
門ノ前拱渠[18] 1876 東海道本線 JR総持寺‐茨木 官設鉄道
東川拱渠[18] 1880 東海道本線 大津‐大谷 官設鉄道 1921年廃止
小田原川拱渠[18] 1884 東海道本線 垂井‐関ケ原 官設鉄道
甲中吹拱渠[18] 1887 東海道本線 穂積‐大垣 官設鉄道
甲大門西拱渠[18] 1887 東海道本線 穂積‐大垣 官設鉄道
琵琶湖疏水[18] 1888 京都市
屋ノ棟川トンネル(上)[19][18] 1889 東海道本線 篠原‐野洲 官設鉄道 1956年頃撤去
市三宅田川拱渠[18] 1889 東海道本線 野洲‐守山 官設鉄道
狼川トンネル(上)[20][18] 1889 東海道本線 南草津‐瀬田 官設鉄道 1956年頃撤去
兵田川拱渠[18] 1889 東海道本線 石山‐膳所 官設鉄道
篠津川拱渠[18] 1889 東海道本線 石山‐膳所 官設鉄道
鳥谷川拱渠[18] 1890 関西本線 加太‐柘植 関西鉄道
碓井第12号橋梁[18] 1893 信越本線 横川‐軽井沢 官設鉄道 1963年頃撤去
碓井第15号橋梁[18] 1893 信越本線 横川‐軽井沢 官設鉄道 1963年頃撤去
第130号橋梁[18] 1893 桜井線 金橋‐高田 大阪鉄道
車場川拱渠[18] 1897 信越本線 荻川‐亀田 北越鉄道
第248号拱渠[18] 1897 関西本線 月ケ瀬口‐大河原 関西鉄道
第272号拱渠[18] 1898 関西本線 加茂‐木津 関西鉄道
東除川暗渠[18] 1898 高野線 狭山‐大阪狭山市 南海電鉄
第91号暗渠[18] 1899 山陰本線 千代川‐八木 京都鉄道
狼川トンネル(下)[20][18] 1900 東海道本線 南草津‐瀬田 官設鉄道 1956年頃撤去
屋ノ棟川トンネル(下)[19][18] 1901 東海道本線 篠原‐野洲 官設鉄道 1956年頃撤去
眼鏡橋[18] 1913 三国芦原線 三国‐三国港 鉄道院
折尾高架橋[18] 1914 北九州市内線 黒崎‐折尾 九州電軌
欅坂拱渠[18] 1915 日田彦山線 採銅所‐香春 小倉鉄道
六把野井水拱橋[21] 1916 北勢鉄道線 楚原‐上笠田 北勢鉄道

日本のねじりまんぽ

日本国外のねじりまんぽ(Skew arch)

脚注

  1. ^ a b c 河村他 1990, p. 199.
  2. ^ 小野田他 1996, p. 117.
  3. ^ a b 辻 2007, p. 43.
  4. ^ 小野田 2014, p. 71.
  5. ^ 辻 2007, p. 44.
  6. ^ a b 小野田 2004, pp. 129–130.
  7. ^ 小野田他 1996, pp. 129–130.
  8. ^ 小野田 2000, p. 269.
  9. ^ a b 小野田他 1996, p. 128.
  10. ^ 小野田 2014, p. 72.
  11. ^ 清水慶一「明治初期における初等・中等建築教育の研究」『日本建築学会論文報告集』第307号、一般社団法人 日本建築学会、1981年、143頁、NAID 110003881885 
  12. ^ 林田治男「英国人鉄道技師の叙勲」『大阪産業大学経済論集』第17巻第1号、大阪産業大学学会、2015年、26頁、 NAID 110009990314 
  13. ^ 小野田 2014, pp. 68‐69.
  14. ^ 河村他 1990, p. 210.
  15. ^ 小野田他 1996, p. 118.
  16. ^ 小野田他 1996, p. 130.
  17. ^ 河村他 1990, p. 205.
  18. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae 小野田他 1996, p. 119.
  19. ^ a b 小野田他 1990, p. 215.
  20. ^ a b 小野田他 1990, p. 216.
  21. ^ 小野田 2004, p. 117.

参考文献

  • 小野田滋、山田稔、井上和彦、松岡義幸「わが国における鉄道トンネルの沿革と現状 (第3報)」『土木史研究』第10号、土木学会、1990年、 NAID 130004038141 
  • 小野田滋、河村清春、須貝清行、神野嘉希「組積造による斜めアーチ構造物の分布とその技法に関する研究」『土木史研究』第16号、土木学会、1996年、 NAID 130004038298 
  • 小野田, 滋「阪神間・京阪間鉄道における煉瓦・石積み構造物とその特徴」『土木史研究』第20号、土木学会、2000年、 NAID 130004038573 
  • 小野田滋『鉄道と煉瓦』鹿島出版会、2004年。 ISBN 4306077047 
  • 小野田滋『関西鉄道遺産 : 私鉄と国鉄が競った技術史』講談社、2014年。 ISBN 9784062578868 
  • 河村清春、小野田滋、木村哲雄、菊池保孝「関西地方の鉄道における「斜架拱」の分布とその技法に関する研究」『土木史研究』第10号、土木学会、1990年、 NAID 130004038162 
  • 辻良樹『関西鉄道考古学探見』JTBパブリッシング、2007年。 ISBN 9784533069086 

ねじりまんぽ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/08 14:06 UTC 版)

狼川トンネル」の記事における「ねじりまんぽ」の解説

正式名称は斜拱渠と呼ばれアーチ部を斜めにねじって積まれる構造コンクリートによる構造物発達する大正時代以降構造物には見られない

※この「ねじりまんぽ」の解説は、「狼川トンネル」の解説の一部です。
「ねじりまんぽ」を含む「狼川トンネル」の記事については、「狼川トンネル」の概要を参照ください。

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