CardWirth システム構成

CardWirth

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/13 15:18 UTC 版)

システム構成

CardWirthのプログラムには先述の通り、本体となるシナリオ動作エンジン(CardWirth本体)とシナリオ作成用エディタ (CardWirthEditor等) が存在する。 (配布はエンジン単体・あるいは両者をパッケージングした形態で行われているので必ずしもエディタがシステムに含まれるわけではない) これにデフォルトの各種リソース、データ、そしてユーザーが各自で追加したシナリオ群によって構成される。 配布されているバージョンやパッケージング形態によっては後述する「エフェクトブースター」などが含まれていることもある。

動作環境

CardWirthは設計された時期や開発コンセプトの関係上、DirectX等の複雑な描画・音響エフェクトは使用されておらず、基本的にそれほど高いスペックは要求されない(Windows 95以上が動くパソコンであれば問題はない)。 そのこともあり、Windows XP以降の環境に十分に対応できていない状況が一時期続いていた。 最新のバージョンではこの点は解消されているが、半面、描画・音響共に機能が向上していることもあって快適に動作させるためにはそれなりのスペックが必要となっている。(動作環境はCPUは1GHz以上、メモリは32ビットOSで1GB以上・64ビットOSでは2GB以上に改められている)

エンジン

CardWirthEditorで制作したシナリオを動作させる、CardWirthの本体部分(エンジン)。 このプログラム単体でゲームを起動することが可能。

CardWirth

純正またはその派生エンジンは公開されて以来いくつかのバージョンが存在するが、大きく分けて以下の三つの系列が存在する。

  • groupAskが現在も配布しているVer.1.20と、それ以前のバージョン
  • groupAsk official fansiteが未完成の状態の新エンジンをgroupAskから譲り受け、公開可能な状態にまで引き上げたVer.1.28と、その改良エンジンであるVer.1.30までのもの
  • groupAskが制作したこれまでのソースコードを破棄し、新たに作り直したエンジンを採用したVer.1.50

これらのうち、現在は最新版にあたるVer.1.50が主流となっている。

この3つのエンジン間には動作や処理、仕様といったものに若干の差異があり、シナリオのつくりや作成年次によっては動作に完全な互換性がないこともある。(中にはシナリオの進行に支障をきたすこともある)

CardWirthNext

CardWirthNextは、CardWirthエンジンVer.1.50を開発したLynaが手がける、派生エンジンの一つ。

元はCardWirthエンジンVer.1.60として公開される予定であったが、完成直前にLynaが所属していたgroupAsk official fansiteから脱退したことで非公式エンジン扱いとなった。(そのため現在もこのエンジンのタイトルは「CardWirth Ver.1.60」となっている) このCardWirthNextという名称は、当初はソースコードを刷新したCardWirthエンジンのことを指しており、一時期はその嚆矢となるCardWirthエンジンVer.1.50もこれに含まれていたが、現在では公式エンジンとの区別を明確にする意味合いもあって、その定義で用いられることはほとんどない。

CardWirthエンジンVer.1.50をベースにしているため基本となる部分はそれほど変わらないが、CardWirthエンジンにはない独自の機能が多数実装されている。 またCardWirthエンジンに対し上位互換であるため、CardWirthエンジンのデータをそのまま利用できる。 ただし、Nextエンジン及び後述するWirthBuilderから生成されるデータは独自形式となるため、一度変換してしまうとそれらは他のCardwirthエンジンとの互換性は一切なくなり、また各種のツール類を利用することも同様にできなくなる。2015年で開発停止となった。

CWI

CWIは、クローンエンジン開発プロジェクトの一つ。

CardWirthユーザーの一人であるThomasによって開発され、C#によって記述された独自の互換エンジンを持つ。 現在は開発停止しているが、ソースコードが公開されているため、派生プロジェクトやこのエンジンを利用したツールなどが発表されている。 同時にシナリオデータの仕様についても独自の解析結果を公表しており、後述のCardWirthPyでもその成果が利用されている。

CardWirthPy

CardWirthPyは、クローンエンジン開発プロジェクトの一つ。 2020年4月時点で唯一開発が継続されているエンジンである。

プログラム言語「Python」によって一から開発された独自の互換エンジンを用いており、「フリー・オープンソースの維持」「CardWirthとの99%の互換性を目指す」を標榜している。 オープンソースであるため、プロジェクトへの参加やコードの変更は誰でも認められている。 「CardWirthとの99%の互換性を目指す」のCardWirthとは、Ver.1.20からVer.1.50までのCardWirthエンジンおよび後述のバリアント仕様に改修されたエンジンを指しており、これらと双方向での互換性を持っている。 一方で独自の拡張機能を多数備えており、シナリオのデータ形式をXMLによって記述されるCardWirthPy独自の形式のものにすることで、そうした機能を利用することもできる。

前述の通りCardWirthNextのデータ形式を利用することはできないため、CardWirthNextとの互換性までは考慮されていないが、CardWirthPyの拡張機能にはCardWirthNextの独自機能と同等の機能を持ったものも一部存在する。

エディタ

CardWirthエンジンで動作させるためのシナリオを制作するエディタツール。

CardWirthEditor

groupAskが配布している「CardWirthEditor」と、CardWirth Ver.1.28の仕様に合わせて軽微な改造を施してgroupAsk official fansiteがかつて配布していた「CardWirthEditor2」が存在するが、基本的に同一のものである。 多くのエディタがスクリプトでの記述を必要とするのに対し、CardWirthEditorはインタフェースとして完全なGUIを備えており、全くの初心者であっても容易に扱えるのが特徴。 その一方で、コンテントと呼ばれるアイコン化された一連の処理の並びが一般的なプログラミング言語ソースコードとそれほど変わらないため、昨今用いられるプログラミング言語(PerlJavaなど)による開発に慣れているユーザーも直感的に扱えるという、非常に優れた開発ツールとしての一面も持つ。 ただし、あくまでもCardWirth用に作られたシナリオエディタに過ぎないので、高度なプログラミングにまで対応しているわけではない。 もっとも、多少複雑な処理を組み込むにしてもシナリオを制作する上で困ることはほとんどない。 少なくともサウンドノベルのような形式のシナリオを作るのであれば、基本的なコンテントをいくつか覚えるだけですぐにでも思い通りの物を制作することが出来る。

なおCardWirthEditorを長時間起動しているとメモリの使用量が増加していくという問題点(おそらくメモリリーク)が確認されている。

WirthBuilder

CardWirthEditorの後継として開発されたシナリオ制作エディタで、CardWirthエンジンVer.1.29以降に追加された機能をシナリオに盛り込むためにはこちらのツールを使う必要がある。 ユーザインタフェースはCardWirthEditorを踏襲しており、旧来からのユーザーでも違和感なく操作できるようになっている。 CardWirth Ver.1.50 フルパックではCardWirthEditorを完全に廃してこちらだけが同梱されるようになった。

また、前述のCardWirthNextに同梱されているシナリオ制作エディタも、(CardWirthNext専用版となってはいるが)このWirthBuilderである。 CardWirthエンジンVer.1.50用のものと見た目や使用感はほぼ同じであるが、前述の通りこのエディタを介して出力されたシナリオのデータは新規・既存を問わずこれまでと異なる専用の形式で保存されるため、他のエディタ(プロジェクト)では利用できなくなる。

CWXEditor

元は前述のCardWirthPy専用のシナリオ制作エディタとして、CardWirthPy本体とは別のプロジェクトにより開発されたシナリオ制作エディタであったが、後にCardWirthエンジン用のシナリオも取り扱う機能が実装された。 これにより、CWXEditorを使用することでどちらの形式のシナリオも作成することが可能となっている。 CardWirthエンジン用の形式でシナリオを作成した場合、CardWirthEditorおよびCardWirthエンジンVer.1.50用のWirthBuilderで作られたシナリオデータと完全な互換性があり、相互で利用可能となっている。 CardWirthPy専用のシナリオ形式でシナリオを作成した場合、CWXEditor以外で編集することはできない。 また、前述の通りCardWirthNext用のWirthBuilderで作られたシナリオは独自形式で保存されるためCWXEditorで編集することは出来ず、CardWirthNextの機能を使ったシナリオをCWXEditorによって制作することも出来ない。

非常に強力な各種シナリオ制作支援機能が搭載されているが、多機能すぎることやユーザインタフェースがCardWirthEditorと全く異なる事などから、旧来からのユーザーも含めて扱いにはそれなりの習熟が必要となる。

同梱ツール

CardWirth本体に付属する(あるいはしていた)プログラム

CardWirthUtility

Ver.1.15にまで存在していた、CardWirthのプレイ時の各種データに対して修正や編集を行うためのユーティリティソフト。 Ver.1.20からはエンジンにその機能の大半が譲られる形となり廃止されている。 しかしこのプログラムには引退したプレイヤーキャラクターの具体的な数値データを見ることが出来るという、現在のエンジンにはない大きな特徴があった。

エフェクトブースター

groupAsk official fansiteによって一から開発されたもの。 これは単体のソフトウェアの名称ではなく、CardWirth Ver.1.20でJPEGファイルを読み込むために作られたDLLファイルを拡張し、画像エフェクト処理の再生機能を追加したものを利用した技術と、その関連ソフトウェアの総称である。 この技術を利用することでCardWirthに様々な画像エフェクト機能を追加できるようになるが、CardWirth単体とは異なり使用時の再生パフォーマンスハードウェア性能に大きく依存する。 関連ソフトウェア群の使い勝手がCardWirthEditorほど良くなく、またヘルプ群が不足していた(リファレンスですら説明が不十分である)点からあまり普及せず、一部のヘビーユーザーが使用するにとどまった。 元々は開発者が試作ツールとして開発を進めていたものであり、一般に公開する予定がなかったという。

CardWirthVer.1.50では上記のDLLが使われていないことから、現在エフェクトブースターは同バージョンのパッケージ内に同梱されていない。 替わりにエンジンそのものに同様の機能が備えられており、既存のエフェクトの再生が可能。また一部機能に関してはWirthBuilder上からその設定が可能となっている。

JPYメーカー

エフェクトブースター関連のプログラムとしてかつて公開されていた開発ツール。 エフェクトブースターの機能は独自仕様のスクリプト言語によってパラメータをいくつか記述するだけで使用できたが、完全にGUI化されたCardWirthEditorに慣れ親しんでいたユーザーからすれば扱い難いという問題があった。 これを解消すべく後日このツールが公開されたが、エフェクトブースターの全機能が扱えない、また使い勝手の点でも洗練されているとは言えず、結局完成度が低いままに終わってしまった。

シナリオ

シナリオは、実際にはWindowsの1フォルダとしてパッケージングされたファイル群によって形成される。 その主な内容はシナリオのソースファイル、シナリオのデータファイル、そしてリソースファイル(BMPJPEGPNGMIDIWAVMP3・その他)となっている。 オリジナルのCardWirth本体には「交易都市リューン」「ゴブリンの洞窟」の2本があらかじめ収録されている(ただし、収録されている付属シナリオは後述するバリアントの種類によって違いがある)。


  1. ^ a b (参考資料:ファンサイト「CardWirth Anthology」のコンテンツ「CWエッセイ」第8回・第43回・第44回)
  2. ^ (出典:CWエッセイ第8回「~カードワースの夜明け~」)
  3. ^ (出展:「CardWirth Users'Network」1999年7月24日7時48分のアムリタの発言)
  4. ^ (出典:「CardWirthUsers'Network」2001年3月9日7時17分のmishikaの発言)
  5. ^ 2013年までの文献に留められていることに留意
  6. ^ (210本中131本・・・出展:「CardWirthUsers'Network」2000年4月26日18時57分のTELぅぇぃの発言)
  7. ^ (参考資料:「CardWirthUsers'Network」2000年5月12日 19時25分「6132」番)
  8. ^ (参考資料:「CardWirth Users'Network」2000年9月2日 1時12分「7854」番)






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