雇用保険 雇用保険の概要

雇用保険

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/20 07:52 UTC 版)

前身の失業保険が失業の事後的対応である失業手当金の給付に重点を置いていたのに対し、雇用保険ではこれに加えて、失業の予防、雇用構造の変動への対応にも重点をおくことになった[1]。幾度かの改正を経て現在では求職者給付、就職促進給付、雇用継続給付、教育訓練給付の4種の「失業等給付」を規定し、さらに「二事業」と呼ばれる雇用安定事業、能力開発事業を規定する。さらに2020年 (令和2年) 4月の改正法施行により「育児休業給付」を「失業等給付」と並ぶ給付の体系に再編された。

なお労働者災害補償保険(労災保険)と雇用保険とを総称して、労働保険という[2]


注釈

  1. ^ 雇用保険法上は労働者の定義はなされていないが、行政手引によれば「事業主に雇用され、事業主から支給される賃金によって生活している者、及び事業主に雇用されることによって生活しようとする者であって現在その意に反して就業することができないものをいう」とされる。これを解釈すれば、「労働組合法第3条でいう労働者と同義である」とされる(福岡高判平成24年2月28日等)。
  2. ^ 行政手引によれば「雇用関係とは、民法第623条の規定による雇用関係のみでなく、労働者が事業主の支配を受けて、その規律の下に労働を提供し、その提供した労働の対償として事業主から賃金、給料その他これらに準ずるものの支払を受けている関係をいう。」とされる。
  3. ^ ここでいう「その事業に使用される労働者の2分の1」とは、その事業において使用される労働者総数の2分の1以上の者ではなく、その事業が任意加入の認可を受けて適用事業となっても被保険者とならない労働者を除いた労働者の2分の1以上の者をいうものである。この場合、被保険者となるべき者であるかどうかの判断は、任意加入申請書が提出された際に行う。労災保険とは異なり、雇用保険では任意加入すれば労働者に保険料の負担が発生するための取り扱いである。
  4. ^ 監査役は使用人を兼ねることはできないとされるが(会社法第335条)、名目的に就任しているにすぎず、常態的に従業員として事業主との間に明確な雇用関係があると認められる場合には被保険者となることができる。
  5. ^ この場合、公共職業安定所へ雇用の実態を確認できる書類等の提出が必要となる。
  6. ^ この場合、出向元は被保険者資格喪失届(資格喪失の原因は「離職以外の理由」となる)、出向先は被保険者資格取得届の提出が必要である。
  7. ^ 被保険者証の汚損・滅失による再発行は、所轄ハローワークでなくても、全国どのハローワークでも可能である。
  8. ^ 離職票の汚損・滅失による再発行は、被保険者証の場合と異なり、当該離職票を交付したハローワークでないと行えない(施行規則第17条4項)。
  9. ^ 平成19年度から平成28年度までは「それぞれの100分の55とする」暫定措置がなされてきたが(附則第13条)、国庫負担については引き続き検討を行い、2020年度(「平成32年度」)以降できるだけ速やかに安定した財源を確保したうえで、暫定措置を廃止するものとされる。
  10. ^ この取り扱いにより、一般的には、会社側は会社都合で解雇すると雇い入れ関係助成金が受けられなくなるので、会社都合退職であっても会社側は労働者の自己都合退職にしたがる。サービス残業が多い場合はタイムカードのコピーを取っておいたり、退職を強要された場合には人事担当者の発言を録音するなど、ハローワークに申し出るに際しては記録を残しておくことが肝要である。
  11. ^ かっては、「社会的事情により就職が著しく阻害されている者」の中に、いわゆる「同和地区出身者(35歳以上で高等学校卒業以下の学歴であり、大企業の正社員として勤務したことがない者に限る)」が含まれていた。2001年4月に行われた国の同和対策の転換(「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(地対財特法)の失効)により、国は社会全体に対する啓発である「一般対策」としての同和対策を行うものとされ、同和地区出身者に対して個別に優遇措置を適用すること(「特定対策」)は全廃されるに至っている。この方針を受けて、現在では単に「同和地区出身者」という理由だけでは「就職困難者」とは認められない。
  12. ^ 4週間目の日が国民の祝日年末年始など官公庁の休庁日に当たる場合、求人、求職の状況、ハローワークの事務量等を勘案して適宜前後にずらされる。
  13. ^ そのため、ほとんどのハローワークで、当初より本人名義の金融機関口座の通帳と印鑑の持参を求めている。
  14. ^ ただし、ハローワークの閉庁日(土・日・祝日、年末年始)の前日に就職の届出を行った者が、閉庁日または閉庁日の翌日に就職する場合に限って例外的に郵送による失業認定が可能である。
  15. ^ a b 所定給付日数内での就職率を見た場合、この年齢層について、他の層と比べて低くなっていることから、平成29年4月の改正で所定給付日数が拡充された。
  16. ^ 1か月は28日として計算する。したがって、4か月以上というのは85日以上のことである。
  17. ^ 訓練延長給付を受けている受給資格者については、再就職の見込みを立てた上で公共職業安定所長の受講指示に基づき、具体的な就職支援として必要な職業訓練等を実施している者であることから、個別延長給付の対象者に該当しない。
  18. ^ 待期期間が経過する前に保育等サービスの利用を開始した場合は、待期期間が経過した後の保育等サービスの利用分のみ支給対象となる。
  19. ^ 同一の事業主に継続雇用される場合のほか、離職して基本手当を受給せずに再就職する場合を含む。
  20. ^ 他の給付を受けて基本手当が支給されたとみなされる場合を含む。
  21. ^ 「子」は法律上の子であればよく、実子であるか養子であるかを問わない。また特別養子縁組を成立させるために監護している者を含む。平成29年1月からは、里親である被保険者に養育されている子も含む。
  22. ^ 厚生労働省は、二事業に関する処分は行政不服審査法上の不服申立ての対象とはならず、処分に不服がある場合は行政事件訴訟法に基づき直接、処分の取消訴訟を提起することになる、との立場をとっている。
  23. ^ 雇用福祉事業(具体的には勤労者福祉施設雇用促進住宅等。改正前の第64条)は「保険料の無駄遣い」等の強い批判があり廃止された。

出典

  1. ^ 有斐閣「現代社会福祉事典」雇用保険法の項目
  2. ^ 労働保険の保険料の徴収等に関する法律 2条1項
  3. ^ 労働力調査 基本集計 全都道府県 結果原表 全国 年次 2019年 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口』(レポート)総務省統計局、2019年1月31日、基本集計 第II-10表https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200531&tstat=000000110001&cycle=7&year=20190&month=0&tclass1=000001040276&tclass2=000001040283&tclass3=000001040284&result_back=1 
  4. ^ 昭和27年2月5日旧労働省通達「宗教法人又は宗教団体の事業又は事務所に対する労働基準法の適用について」
  5. ^ 令和4年度雇用保険料率のご案内厚生労働省
  6. ^ 2022年10月からの「雇用保険料引き上げ」とは? どんな影響がある?ファイナンシャルフィールド
  7. ^ 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準(厚生労働省)
  8. ^ 新型コロナウイルス感染症等の影響に対応した給付日数の延長に関する特例について - 厚生労働省
  9. ^ 「「自己都合」の失業給付前倒し」読売新聞2023年6月7日付朝刊社会保障面
  10. ^ 新しい資本主義実現会議(第19回)内閣官房
  11. ^ a b c 失業手当:日本、不受給77% 先進国中最悪の水準-ILO報告 - 毎日新聞 2009年3月25日配信 東京夕刊掲載(NPO法人仙台夜まわりグループのブログより)
  12. ^ http://www.economist.com/blogs/freeexchange/2010/12/labour_markets
  13. ^ http://www.reuters.com/article/2013/12/03/us-usa-economy-joblessbenefits-idUSBRE9B20XA20131203
  14. ^ http://ftp.iza.org/dp3570.pdf
  15. ^ http://www.pole-emploi.fr/candidat/le-montant-de-votre-allocation-@/suarticle.jspz?id=4125
  16. ^ http://entreprise.lefigaro.fr/chomeurs-unedic.html
  17. ^ importe maximo desempleo 2012
  18. ^ Krugman, Paul (2013年12月8日). “The Punishment Cure”. New York Times. http://www.nytimes.com/2013/12/09/opinion/krugman-the-punishment-cure.html?partner=rssnyt&emc=rss&_r=0 2013年12月10日閲覧。 






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