賞味期限 賞味期限制定の背景

賞味期限

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/13 05:24 UTC 版)

賞味期限制定の背景

かつて日本の加工食品は、食品衛生法やJAS法で、すべての食品に対し食品の包装年月日を製造年月日として表示することが義務付けられていたが、長期間保存できる食品については省略可能であった。ただし賞味期限については、農林水産省所管のJAS法により、一部の食品に記載が義務付けられていたほか、法規制ではないものの、製造業者による製造後○日という表示がなされていた。

また牛乳の殺菌後、無菌で充填し、長期間常温(室温)保存可能なロングライフ牛乳(いわゆるLL牛乳)ができた際、厚生省所管の食品衛生法の乳等省令において、品質保持期限表示を乳業企業に義務付けられていた。

しかしながら、製造日表示には以下のような点から、消費者側からの反対も示されていた。

  1. 本来いつを製造年月日にすべきか、不明確である食品(納豆キムチヨーグルトチーズ・熟成そうめん漬物缶詰)の存在
    発酵食品の場合は、容器への充填から店頭に並べられている間でも発酵が進むため、製品によっては充填日・食べ頃・発酵が進み過ぎて味が損なわれる頃合など、幾つもの日付が商品につけられていた。特に納豆の場合は、ちょうど店頭で納豆菌が煮豆を納豆に変える頃合になるよう、輸送時間から逆算して出荷していた。
  2. 食のグローバリゼーション(国際的な食品流通)の進展に伴い、賞味期限の記載が一般的な諸外国から、「製造年月日の表示は、非関税障壁である」と指摘があったこと
    外圧への反発意識があった一方、食品添加物を使っているために鮮度保持が容易で賞味期限が長く設定し易い商品と、そのような食品添加物を含まないために、賞味期限が短く設定されている商品の区別がつけがたいという意識もあった。
  3. 特に牛乳生産など製造企業側の深夜操業の存在
    デイゼロ(DAY0、D-0)問題と呼ばれる。日付が変わった午前0時に生産工程を動かして、当日製造出荷した食品のみを消費者が購入できるよう、スーパーマーケットが強く要望した。深夜労働のため、従事する従業員への負担が大きい。

このような問題に対応する形で、1995年(平成7年)に賞味期限の表示に移行された。

なお、こういった消費者側の製造年月日記載のニーズは依然として存在するため、生協など一部プライベートブランド商品では、現在でも製造年月日を併記しているものもある。

そもそも賞味期限とは、05年に統一された食品衛生法に基づくものが、2015年に食品表示基準に基づくものになったものであるが、賞味期限の決定は各食品企業に任せられているのが現状で、一般的には次の3つの検査を行った上で決められている。

  • 菌の繁殖などを調べる微生物検査。
  • 濁りや粘り、色や酸化などを調べる理化学検査。
  • 実際に食べてみた食感や味、臭いなどを評価する官能検査

食品ロス問題と対策

賞味・消費期限が必要以上に短いと、大量の食品廃棄の一因になるとの指摘もある。実際に農林水産省の調査によれば、2007年度の食品廃棄などの年間発生量は、1,134万トンである。

日本の食品業界には、流通段階において賞味期限までの期間を区切った「3分の1ルール」と言われる商慣習がある[9]。流通経済研究所の調べでは、卸からメーカーに返品された商品金額は2010年度で1,139億円に上った[10]

これまでは賞味期限に関して明確な基準はなく、各食品メーカーに任せ切りだったが、消費者庁は食品毎の賞味期限設定方法について、統一ガイドラインを設ける方針を決めた。2011年9月、消費者庁食品表示課が、各食品メーカーや有識者を交えた検討会を立ち上げると発表[11]。同月末から翌年にわたり、食品表示一元化検討会が何度も開かれた[12]

2014年に入り、カップ麺では5か月→6か月、袋麺では6か月→8か月、その他飲料などでも、安全面を再検証した上で、賞味期限を延長する各メーカーの動きも見られる[13]








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