胎盤 概要

胎盤

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/16 05:28 UTC 版)

概要

胎盤は、母体由来の基底脱落膜と胎児由来の絨毛膜絨毛部とから構成されている。

形態は動物種により異なり、などにみられる散在性胎盤、反芻類にみられる多胎盤、食肉類にみられる帯状胎盤、ヒトマウスなどにみられる盤状胎盤に分類される。胎盤と胎児は臍帯で連絡されている。

胎盤の主な機能は母体側と胎児側の代謝物質交換、ガス交換や胎児側への免疫学的支援である。また、ホルモンを産生し、妊娠を維持する。胎盤は分娩時、胎児のあとに後産として娩出される。後産として共に出てくる羊膜・臍帯などを含めて胞衣(えな)と称される。さらに残存している変性した胎盤や胎膜、子宮粘膜の分泌液、血液などの、ほぼ完全に排出されるまで続くものを悪露という。

胎盤を持つ動物

胎盤を形成することは哺乳類の特徴とされることもあるが、実際は、哺乳類の一部の系統である有胎盤類(真獣下綱)のみが胎盤を持つ。現生では単孔類有袋類が胎盤を作らない。ただし有袋類は、一般的に胎盤と呼ばれる胎児を十分に成長させる高機能な漿尿膜胎盤は作らないが、低機能な卵黄嚢胎盤を作る。

胎盤は哺乳類に限るものではなく、サメの一部(ホホジロザメメジロザメオオメジロザメシュモクザメなど)が胎盤を作る。ただし、サメの多くは胎盤を作らない卵胎生で、さらに完全な卵生の種も少なくない。

胎盤の構造(上図の一部を拡大したもの) 上部母体側から酸素、養分に富む動脈血が赤と青の細かい点で描かれた空隙、すなわち絨毛間腔内に放出され、静脈から母体に戻る。一方、図右下にある臍帯(へその緒)から絨毛間腔側に向かって臍動脈が流れ、図中に樹木のように見える絨毛を経由するうちに、ガス交換、栄養吸収、老廃物の放出が行われ、臍静脈を経由して胎児側に戻る。図中の用語を左上から、右下に向かって以下に示す。絨毛 (Villus)、海綿層 (Stratum spongiosum)、母体血管 (Maternal vessels)、胎盤中隔 (Placental septum)、周縁洞 (Marginal sinus)、絨毛膜 (Chorion)、羊膜 (Amnion)、栄養膜 (Trophoblast)、2本の臍動脈 (Umbilical arteries)、1本の臍静脈 (Umbilical vein)、臍帯 (Umbilical cord)、いわゆる「へその緒」。なお、臍動脈と臍静脈の色は実際とは逆に描かれている。
ヒトの胎盤 出産後数分経過した時点のもの。写真上部の白い紐状の組織が臍帯。指で示している部分が胎児の頭部の位置に相当する。容器と接している面が母体側である。写真下側に胎盤を取り囲んで白く不透明に見える組織は羊膜の一部。なお、胎盤のラテン語表記 placenta は古代ローマで食べられていた平らなケーキ(en)という意味であり、写真の形状とも合致する。

ヒト成熟胎盤の構造

胎児側では胎盤は羊膜で境され、次にある絨毛膜板から樹状に絨毛が生えている。樹幹にあたる幹絨毛から枝のように分枝絨毛が形成されている。樹の最上位部で基底脱落膜に付着、固定している絨毛が付着絨毛で、それ以外の付着していない絨毛を浮遊絨毛という。絨毛内は胎児血管が走っている。

母体側では基底脱落膜から母体血管が開口し、母体血が噴出している。絨毛はこの血液の中をただよっている。基底脱落膜の一部は、絨毛膜板に向かって隆起し、区画分けしている。この隆起を胎盤中隔と呼ぶ。胎盤中隔は、絨毛膜板には付着しておらず、全ての区画は開通している。

注意すべきことは、母体の血液と胎児の血液とは直接混合していないことである。酸素・栄養分・老廃物などの物質交換は血漿を介して行われている。このため、母体と胎児の血液型が異なっていても、異型輸血のような凝血は起こらない構造になっている。この構造をプラセンタルバリア (placental barrier) という。このことから、胎児から見ると胎盤は羊膜の外側にあるが、胎児側の臓器とも言える。


  1. ^ 南方 1926, pp.233-240






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