第442連隊戦闘団 442連隊の戦後

第442連隊戦闘団

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/10 14:29 UTC 版)

442連隊の戦後

第442連隊戦闘団を閲兵するトルーマン大統領(1946年7月15日)
元兵士らの前で議会名誉黄金勲章を授与する法案に署名するオバマ大統領(2010年)
元兵士らと握手するハリー・B・ハリス・ジュニア司令官(2014年)

442連隊が強制収容所の被収容者を含む日系アメリカ人のみによって構成され、ヨーロッパ戦線で大戦時のアメリカ陸軍部隊として最高の殊勲を上げたことに対して、1946年にトルーマン大統領は、「諸君は敵だけではなく、偏見とも戦い、そして勝ったのだ。(You fought not only the enemy, you fought prejudice-and you won.)」と讃えている[16]

しかし勇戦もむなしく、戦後も日系人への人種差別に基づく偏見はなかなか変わらなかった。部隊の解散後、アメリカの故郷へ復員した兵士たちも、主に南部の白人住民から「ジャップを許すな」「ジャップおことわり」といった敵視・蔑視に晒され[17]、仕事につくこともできず財産や家も失われたままの状態に置かれた。

やがて1960年代になると、アメリカ国内における人権意識、公民権運動の高まりの中で、日系人はにわかに「模範的マイノリティー」として賞賛されるようになる。

442連隊は1946年にいったん解体されたが、1947年には予備役部隊として第442連隊が再編制され、ベトナム戦争が起こると、1968年には不足した州兵を補うために州兵団に編入された。その後、1969年に解体されたが、連隊隷下部隊のうち第100歩兵大隊が予備役部隊として現存している。部隊は本部をハワイのフォートシャフターに置き、基地をハワイ、アメリカ領サモアサイパングアムなどに置いている。部隊は統合や再編制を繰り返しているが、現在も主力は日系人を含むアジア系アメリカ人が占めている。

2004年8月に、第100歩兵大隊は第29独立歩兵旅団(ハワイ州兵)の大隊機動部隊の一つとして、イラクにおける任務のために活動を再開した。部隊はハワイのスコーフィールド・バラックス(Schofield Barracks)にて動員され、テキサス州のフォート・ブリスで2004年に訓練を受けた。その後、ルイジアナ州フォート・ポークで練成度を確認され、2005年3月よりイラクで任務に就いている。これは2006年に帰還している。

2010年10月にオバマ大統領は、442連隊戦闘団と陸軍情報部に、アメリカ合衆国において最高位の勲章である議会名誉黄金勲章を授与する法案に署名した[18]。現在のアメリカ陸軍では、442連隊戦闘団の歴史を学ぶ授業は必修課程となっている。

2021年6月3日にはアメリカ合衆国郵便公社(USPS)より442連隊を称える郵便切手が発行された[19]


注釈

  1. ^ 1940年の段階で、日系人はハワイの人口全体の36.8%を占めていた
  2. ^ 英語の賭博用語では通常“All In”が使われる。
  3. ^ こうした戦闘の際、442部隊は「バンザイ」という鬨の声を上げて白兵突撃を行った。自殺攻撃ではなく通常戦術の一環として行われたものであるが、部隊の掛け声は「バンザイ」のみならず、ピジン英語で「死ね」という意味の「マケ」、日本語の「バカヤロー」など様々で、その絶叫は近隣の村にまで響く程であったという。

出典

  1. ^ a b c 中嶋p.195
  2. ^ 第442連隊戦闘団 Archives - Rafu Shimpo
  3. ^ 第442連隊戦闘団 | NVL - Nisei Veterans Legacy
  4. ^ 声明:真珠湾攻撃から80周年を迎えるにあたり、全米日系人博物館は、この日に亡くなった米軍に敬意を表し、またこの日以降に強制収容された12万人の日系人に思いを寄せます。
  5. ^ ハワイ日本文化センターで知る日系人の歴史(2世、第442連隊)―「ハワイと日本、人々の歴史」第12回 - HUFFPOST
  6. ^ a b c d 中嶋p.194
  7. ^ 矢野 1979, p. 18-19.
  8. ^ a b c 中嶋p.193
  9. ^ 菊月
  10. ^ 「442日系部隊・アメリカ史上最強の陸軍」
  11. ^ 渡辺 p16.
  12. ^ Mio, Jeffrey Scott (January 1, 1999). Key Words in Multicultural Interventions: A Dictionary. Greenwood Publishing Group. p. 137. ISBN 0313295476. https://books.google.co.jp/books?id=UQnUTLMeds0C&pg=PA137&lpg=PA137&dq=%22go+for+broke%22+pidgin&source=bl&ots=_WPOPv-KSt&sig=iTllGd3XloYMg2RiOqeX9RkE3-4&hl=en&sa=X&ei=S5RtUpX_LIKQiALC54Ew&redir_esc=y#v=onepage&q=%22go%20for%20broke%22%20pidgin&f=false 2013年10月27日閲覧。 
  13. ^ 矢野 1979, p. 220,229.
  14. ^ 矢野 1979, p. 237.
  15. ^ “第2次大戦の日系2世部隊に最高位の米議会勲章”. CNN. (2010年10月7日). http://www.cnn.co.jp/usa/30000453.html [リンク切れ]
  16. ^ Famous Quotations
  17. ^ 古森義久 (2007年7月17日). “"外交弱小国"日本の安全保障を考える〜ワシントンからの報告〜(3/5)”. SAFETY JAPAN (日経BP社). http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/53/index2.html 2015年2月19日閲覧。 
  18. ^ 鳥海美朗 (2010年11月27日). “色褪せない日系2世の勲章”. 産経新聞. http://sankei.jp.msn.com/life/news/110114/art11011419340039-n1.htm 2011年4月20日閲覧。 [リンク切れ]
  19. ^ “Automatic distribution of new U.S. stamps nearly stops”. Linn's Stamp News. (2021年6月18日). https://www.linns.com/news/us-stamps-postal-history/automatic-distribution-of-new-u.s.-stamps-nearly-stops 2021年6月27日閲覧。 





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