白雪姫 (1937年の映画)
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製作エピソード
白雪姫、王子、女王が登場するシーンのアニメーションを作成する際にはロトスコープというフライシャー・スタジオから採り入れた手法が用いられた。コマ送りで撮影した生身の人間の動きをベースにトレースして動画化するという手法だが、これにアニメーションならではの動きの誇張を加えることにより、写実的かつ自然な動きの表現に成功している。また、マルチプレーン・カメラを使用することで3次元的な奥行きを表現し、更にテクニカラーによって色彩を施した。なお、ディズニーでは1932年から既に短編アニメのカラー化が行われている。
マルチプレーン・カメラで生み出された白雪姫の立体感は、日本の草創期のアニメ界にも大きな影響を与え、瀬尾光世の下で持永只仁が多層式撮影台を開発。1941年に瀬尾の「アリチャン」が生み出された[7]。
日本公開
日本での公開は第二次世界大戦の影響もあり、西ドイツ(当時)と並んで1950年と各国に比べて遅い方だが、第二次世界大戦以前にこれ程までに質の高いアニメーションを制作していた事実と、制作を実現したアメリカの圧倒的国力に、公開当時に本作品を見た若者の多くが驚愕したという。特にディズニーアニメーションから多大な影響を受けたことで知られている手塚治虫は「(公開時に映画館で)本作を50回は見た」と回想している(なお手塚治虫は個人的に劇場用フィルムの廃棄品を特殊なルートでアニメーション製作の研究のために買い入れて保有していた。これはVHSやLDやDVDなどが登場するはるか前のことである)。
1951年までに400万を超える児童が都市部の映画館で観たとされ、常設館での上映が一巡した後は、大映が地方の公共団体やPTAなどに1日1万5,000円でフィルムの貸し出しを行った[8]。このため映画館のない地方でも、「学校行事などで同級生と共に白雪姫を観た」、 「初めて観た映画が白雪姫だった」という記憶を持つ者も多い[9]。
リバイバル公開
1993年にはコダックのシネオンというデジタル処理で映像修復が施されたデジタル・ニュー・バージョンが公開され(日本での公開は1994年)、興行収入4,000万ドル以上を記録するなど大ヒットした。なお、この時点でドルビーサラウンドによる音声のステレオ化が行われている[10]。
米国本公開時はRKOに映画配給を委託しており(ブエナ・ビスタ設立まで)、オープニングで「配給:R.K.O」というクレジットと、エンディングに「RKO RADIO PICTURES」の社名ロゴが背景の地紋に埋め込まれていたが、後のリバイバル上映時にRKOを省いたものに差し替えられた。このRKOが入った本来のオリジナル映像は、2001年版DVDに当該部分のカットが特典映像扱いで本編と別に収録された後、2009年版DVD/BDの本編映像に組み込まれ、本公開時のオリジナル版へ完全に復元された。
米国に於いて本作は1965年にリニュー(著作権更新手続き)が行われたため、パブリックドメインとなるのは2033年1月である[11]。また、日本では日本国内での上映公開から50年間を経た時点で著作権の保護期間が終了した(現在は法律が改正されて国内公開後70年間保護される規定になったがこれは法律の改正前に保護期間が終了した)と考えられることから、現在パブリックドメインDVDで旧画質のものが発売されている。しかし、デジタル・ニュー・バージョンは、公開された1993年から新規の著作権が発生した。
2007年、映画公開70周年を迎え、それを記念してフロリダのディズニー・ワールドでは限定版フィギュアリンが販売された。 (世界各国の公開年については、シンプル英文版「Snow White and the Seven Dwarfs (1937 movie)」も参照)
注釈
出典
- ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』(キネマ旬報社、2012年)81頁
- ^ 火の鳥文庫『ディズニー』
- ^ 1959年公開時の「ピノキオ」映画パンフレット
- ^ 1980年リバイバル公開時の映画チラシ
- ^ 1958年公開時の「白雪姫」映画パンフレット
- ^ ウォルト・ディズニー映画「白雪姫」日本語版オリジナル・サウンドトラック『白雪姫~歌と音楽』/ビクター音楽産業 JBX-2003 (1980年)
- ^ 横田正夫、小出正志、池田宏『アニメーションの辞典』p.61、朝倉書店、2012年。
- ^ 「白雪姫は1万5千円」『朝日新聞』昭和26年10月6日
- ^ 世相風俗観察会『増補新版 現代世相風俗史年表 昭和20年(1945)-平成20年(2008)』河出書房新社、2003年11月7日、38頁。ISBN 9784309225043。
- ^ 公開時のチラシより
- ^ (英語) Catalog of Copyright Entries. Library of Congress. (1965)
- ^ “Animation - AFI: 10 Top 10” (英語). AFI.com. 2014年10月27日閲覧。
- ^ a b c d e 「映画・トピック・ジャーナル 『ディズニー映画日本市場に復帰』」『キネマ旬報』1980年1月上号、200頁。
- ^ a b c “東宝、東映、ディズニー映画を肩代わり配給―55年春以降、年間5本公開予定。”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社): p. 10. (1979年11月20日)
- ^ a b c d e “東宝・東映W・D映画配給 三年ぶり白雪姫他五作品”. 週刊映画ニュース (全国映画館新聞社): p. 1. (1979年11月24日)
- ^ 「ブエナ・ビスタ 『アラジン』220万本 『白雪姫』は180万本」『日経産業新聞』1995年1月23日付、7面。
- ^ 日経BP社技術研究部『進化するアニメ・ビジネス―世界に羽ばたく日本のアニメとキャラクター』日経BP社、2000年、42頁。ISBN 4-8222-2554-2(日本での出荷本数のみ記載)
- ^ “白雪姫|ブルーレイ・DVD・デジタル配信|ディズニー公式”. ディズニー公式. 2019年2月6日閲覧。
- ^ Rubin, Rebecca. “Disney Removes 'Star Wars' Spinoff 'Rogue Squadron' From Release Calendar, Sets Dates for 'Snow White,' 'Inside Out 2' and 'Lion King' Sequel” (英語). Variety. 2022年9月15日閲覧。
- ^ “ディズニー実写版『白雪姫』2024年3月に全米公開決定”. シネマトゥデイ. (2022年9月16日) 2022年9月23日閲覧。
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