池田昌子 エピソード

池田昌子

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/26 16:16 UTC 版)

エピソード

銀河鉄道999

銀河鉄道999』では、テレビアニメなどほとんどの媒体で長年にわたりメーテルを演じている[34]

原作者の松本零士によると、昭和30年代にフランス映画『わが青春のマリアンヌ』の吹き替え版をテレビで観た際にヒロイン・マリアンヌの声が非常に気に入り、そのイメージを念頭においてメーテルの声を想定したのだという。そのことを池田に話すと、マリアンヌの声は池田当人だったと聞き、まったく知らなかった松本は非常に驚いたという[35]

メーテルについて、池田は「自分の分身、私の一部。我が子、我が親という肉親に近い存在ですね」「今もなお、彼女とともに生きている感覚です」と語っている[34]。また『銀河鉄道999』の作品自体は「宝物」と語り、アニメの仕事は比較的少ないことから特に印象深く「その数少ない中で、こういう素敵な作品に巡り合えたというのは、本当に役者冥利に尽きます。そしてメーテルは私にとっても非常に魅力的な役なんです」と述べている[36]

役作りに関しては、「神のような特別な存在でしょう。生きた感情が乗ったセリフになっているか、それが見る人たちに伝わっているのか。反省の連続でした」と試行錯誤したことを明かし「彼女が好きだったし、難しかったし、怖かった。今でも未完成のままだと思います」と述べている[34]

共演した野沢雅子とは親交が深く、『999』放送終了後も互いを「メーテル」、「鉄郎ちゃん」と呼び合っている[34][37]。また、車掌役の肝付兼太とも親交があり、3人で旅行に行ったこともあったという[38]

2023年に急逝した松本零士のお別れの会に出席、野沢雅子と二人で弔辞を述べた。

オードリー・ヘプバーン

オードリー・ヘプバーンの吹き替えは、専属(フィックス)で担当しており[11][39]、「ヘプバーンの声は池田昌子」と呼ばれるほどの代表作である[5][24]

初めてヘプバーンを吹き替えた作品は、1968年テレビ朝日の「日曜洋画劇場」枠で放送された『許されざる者[33]。最初は散発的な担当であったが、1970年代以降はほとんどの局の映画番組でヘプバーンを担当するようになり、吹き替えは池田というイメージが定着していった。

ヘプバーンについて、池田は「私にとっての非現実。妖精であり夢であるんです」と述べている[33]。また、池田は演じやすい女優としてもヘプバーンを挙げており「本当に素直に、彼女の芝居に乗っていけるんです。彼女以外でそういった経験はなかったので……。彼女の感覚が、東洋的といいますか、日本人に合っていたんじゃないかと思います」と語っている[5]

好きなヘプバーン出演作には「全部好き!どの作品も素晴らしいです」と述べ、特に思い入れがある作品には『ローマの休日』を挙げている[40]

『ローマの休日』はテレビ放送やソフト化のたびに録り直し、これまでに5回ほど吹き替えているという[11][32]。当作のヘプバーンについて池田は「演技ももちろん上手なんですが、それ以上にあの年齢だからこその透明感、清潔感が美しさとなって現れていると思うんです」「あの初々しい美しさは、作って出せるものではない」と述べ、今後新たに吹き替えが作られるなら後進に譲りたい趣旨の発言をしている[32]。実際に、当初小林守夫から依頼を受けた際にも「本当に私がこんな方の声をやっていいのかしら?」と迷った体験談まで話していたほか[41]、ソフト版吹き替え(1995年頃収録)でオファーがあった際は一度断ったが、この時は相手役(グレゴリー・ペック)の吹き替えに、それまで共演し「素晴らしい相手役に恵まれた」と感じていた城達也が続投すると聞いたことで引き受けることを決意したという[29][32]。なお、城も思い出深い吹き替え出演作に『ローマの休日』を挙げたことがあり、その理由が「池田昌子さんの演技が素晴らしかったから」であった。

ティファニーで朝食を』では劇中でヘプバーンが「ムーン・リバー」を歌唱する場面があり、吹き替えでも歌は原語が使われることから、その前後の場面はヘプバーンの歌声と自身の声に違和感が出ないよう気を使ったという。また、歌唱シーンはその後に続く台詞のため、画面のヘプバーンと共に池田も声を出さず歌い呼吸が合うようにしたという[33]

2009年、『昼下りの情事』のDVD発売時に新たな吹き替え収録が行われることになり、当時20代のヘプバーンに再び池田が当てられた。この時、既に70を超えていた池田は「さすがに無理なのではないか」とオファーを断ろうとしたが、「いえ、池田さんがいいんです」という言葉で「それならもうやるしかない」と出演を決めたという[11]

2022年には、ドキュメンタリー映画『オードリー・ヘプバーン』で久々にヘプバーンの吹き替えを担当。これは「オードリーに関しては、映画ファンにお馴染みの池田昌子さんに是非ともお願いしたい」と制作関係者一同の総意による起用で、吹き替え制作自体のスタート地点だったという[42]。池田は本作について「久し振りの再会でしたし嬉しかったけれど、とても緊張しました」と語り、「彼女はどの役でも活き活きとしているので、そんな彼女の持って生まれた天性の力・魅力を感じ取って欲しいです」とコメントしている[40]


注釈

  1. ^ ロケが行われた石川県羽咋市で、2000年以降数回再上演会が行われたことがある。そのイベントには池田自身がはるばる駆け付けている。
  2. ^ 英語版ではストリープが、日本語版では池田が担当した[66]

出典

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  2. ^ 『日本タレント名鑑 2007』(VIPタイムズ社、2007年) 448頁
  3. ^ 野沢雅子「第6章 素晴らしき声優仲間」『ボクは、声優。』オプトコミュニケーションズ、1995年、169-170頁。ISBN 4072178861 
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